ショートコラム<クマとの共生ついて考える>① | ナショナルけもペディア<ナショけも>

ナショナルけもペディア<ナショけも>

アラフェネ動物記へようこそ!
こちらでは、明日動物園・水族館で使える
動物基礎知識を主に載せています。
主に、哺乳類、鳥類、爬虫類が中心に
記事を書いていますが、
飼育方法などは記載いたしません。
よろしくお願いいたします。

 

こんにちは、アラフェネです。

 

今回は<クマ>のコラムになります。

 

最近、ニュースでクマに関する話題をよく見聞きするので、<クマ>とはどんな動物なのか?

今回は<クマの出没の原因>について書いていきたいと思います。

 

 

 

この記事をご購読いただく前に注意点ですが、当ブログでは動物の知識を共有する場であり、クマや他の動物など含めた動物観の議論を行う場ではありません。

 予め、ご了承お願いいたします。

 

 

 

 

 

  クマ(熊)とは?

まず、最初に<クマ(熊)>という動物について簡単に解説したいと思います。

 

 

エゾヒグマ

 

二ホンツキノワグマ

 

<クマ(熊)>は<哺乳綱食肉目クマ科>に分類される、大型の哺乳類です。

 クマ科に属し、<ヒグマ(<亜種:コディアックヒグマ>、<亜種:エゾヒグマ>、<亜種:カムチャッカオオヒグマ)>、<ツキノワグマ>、<ハイイログマ(グリズリー)>、<マレーグマ>、<ホッキョクグマ>、<ジャイアントパンダ>などが良く知られています。

 

クマは日本を含めた、世界中の各地に分布しており、寒帯、温暖、熱帯様々な場所に生息している為、生息環境に合わせ適応進化をしている一種です。

 日本に生息している種は、本州、四国のツキノワグマの亜種<二ホンツキノワグマ>、北海道のヒグマの亜種<エゾヒグマ>の2亜種になります。

 

クマ全体が大型かつ筋肉質で、<トラ>と同じく、北方で寒冷な地域ほど体格が大型になり、南方で温暖な地域ほど小型になる傾向があります(ベルクマンの法則)。

 <ヒグマ>は体長:170~280㎝、体重:80∼600kg、<ツキノワグマ>は、体長:120∼180㎝、体重:65∼150kgと、ツキノワグマのほうが小型です。

 

感覚機能は聴覚、嗅覚はともに優れています。

しかし、視覚はヒトと同程度かそれ以下(ホッキョクグマは視力が高い)ですが、夜目がきき、夜間での視力は優れています。

 手足の表面全体が広く平らで、地面に手足全体をつけて歩く、<ショ行性>と呼ばれる歩行方法を行います。

これは同じ食肉目の<レッサーパンダ>や<アライグマ>も同じ特徴があります。

 腕力や咬合力は強大で、大きな犬歯を持っていますが、食性が植物食の為、かみ砕きすりつぶすための臼歯(後臼歯)が良く発達しています。

 

サケを捕食するクマ

 

食性は植物性ですが、動物の死骸、昆虫、サケなども捕食するためやや雑食性の傾向があります。

季節によって食べる物が異なり、分散期~繁殖期の春では山菜類、夏では果実や昆虫、

飽食期では、秋~冬では越すための脂肪を蓄える為、どんぐりや木の実などを食べます。

クマは食肉目の動物であり、体格が大型なので、それを維持していくエネルギーの大半を植物性に頼っています。その為、冬を越すための木の実やどんぐりを大量に食べる必要があります。

 一般的なクマが食べる葉の量は15kgと呼ばれているので、相当な量の食物が必要です。

 

 

基本的にクマは通常11月下旬から3月頃までに冬眠に入ります。

クマが冬眠を行う理由として、餌が取りづらい冬季期間を睡眠に費やし、飢餓をやり過ごす点にあり、できるだけ餌を探すエネルギーを使わないようにしています。

 

クマですが大きい体格、獰猛な性質、強力な咬合力、爪、腕力を併せ持っているとして、人への身体、生命、財産に著しい損害を与える可能性が非常に高い動物として知られています。

その為、クマ科全種が<特定動物>に指定されており、一般的な飼育は当然ながら禁止されており、展示場では、逸走や人体に危険が及ばないよう厳しい建築基準や飼育基準が設けられています。

 

クマの基本的情報は以上です。

ではこれを踏まえ、なぜ人里に現れることが増えているのか見ていきたいと思います。

 

 

  クマとの遭遇が起こりやすくなっている要因とは?

クマが行動範囲を拡大し、山での遭遇率が高くなったり、人里に現れる原因としては様々なことが可能性としてありますが、

より高いものとして、どんぐりが凶作で脂肪を蓄えられない、人の手入れが行われなくなった耕作放棄地の増加などが挙げられます。

 

 

〇気温が高く、どんぐりが凶作で冬眠に遅れが出ている

 

クマは季節によって、春は山菜類、夏は昆虫や果実、秋はドングリなどの堅果類を食べる為、食べる物が異なることが良く知られていますが、特に繁殖期の春や冬眠前の飽食期の秋は、多くの餌を食べなければいけないがために、行動圏が通常より広くなります。

 

主食であるどんぐり

 

基本的にホッキョクグマを除いたクマ科の動物は高く植物性の食物に依存しており、ブナ、ミズナラ、コナラと呼ばれるブナ科に属する被子植物の木から落ちる堅果類<どんぐり>を主食としています。

 近年では受粉などが効率よく行われず、どんぐりが思うように実らず凶作になっている為、冬眠前の脂肪分を蓄えることができません。

 

また、冬眠に遅れがでている要因の一つに今年の冬は温暖であることが原因としてあります。

クマが冬眠をする条件として、秋~冬に食物からある程度の脂肪分を蓄え、冬眠をする一定の気温に下がる必要があります。

 

つまり、どんぐりなどの食物が思うように取れないと、冬眠中に賄える脂肪分が不足してしまいます。

その為、気温があまり下がらないのと重なり、冬眠に入る時期も遅く、餌を求め広範囲を移動する為、遭遇、出没する可能性があるという事です。

 

 

 

〇人口の過疎化・耕作放棄地の増加

もう一つの原因として、耕作放棄地の増加の原因があります。

 

最近は人口の減少や高齢化も相まって、里山を管理する人が減り、耕作放棄地が増加しており、人の活動圏と野生動物の活動圏の境界線である<緩衝地帯>というものが無くなっています。

その為、わずかな作物の残りかすなどを求め、クマ、イノシシやサルなどの野生動物が訪れる為、行動範囲を広げる要因となります。

 

また当然ですが、人が土地の手入れがされていない為、草木や生い茂り、野生動物の隠れ場所として利用します。

 もちろんクマもそれらを利用していますので、民家の近くの薮に突然クマがいる可能性も高くなり、遭遇率が高くなります。

 

その中で、特に人がいる環境に慣れ、警戒心が低いクマの事を<アーバンベア>と定義することがあります。

 

 

 

 

以上、今回は<クマの出没の要因>についてのコラムでした。

次回②では、クマと生態系への影響について書いていきます。

 

今回も最後までご購読ありがとうございました。

 

 

 

  リンク

 

〇前回の記事一覧

 

 


〇前回のショートコラム一覧

 

 



○<X>アラフェネさん