ショートコラム<生態系、農林水産業の脅威!外来種とは?> | ナショナルけもペディア<ナショけも>

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こんにちは、アラフェネです。

 

今回は<外来種>のコラムになります。

 

アライグマなどやその他の一部の動物では害獣として扱われている印象が強いですが、どんな害獣、害虫でも地球上の生態系の一部として、欠かせない存在であり大切にする必要があります。

 

国内では、農林業に甚大な被害をもたらす、アライグマを<特定外来種>として指定されていますが、その<外来種>とはどのような種を指すのか、影響や対策、代表種など書いていきたいと思います。

 

一部、法律関連の内容が入りますが、何卒、お付き合いくださいませ。

 

 

 

 

 

  外来種とは?

 

アライグマ、ガビチョウ、カミツキガメ、アメリカザリガニ、ヒアリ、シロツメグサなど

 

 

外来種とは、<他の生息地から存在していなかった生息地へ持ち込まれた種>の事をいい、主に動物種(哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類)、植物種全般を指します。

 

 外来種の定義として<人間活動の影響で入り込んだ生物>とされていますが、この<人間活動>であることなどが重要で、例えば、渡り鳥など動物自らの力により自然に入ってきた種などは定義上は外来種として扱われていません。

 

外来種が侵入してしまう原因としては、ペットとして飼い、増えすぎたなどで手に負えなくなり放してしまう<意図的>なケースや、貨物船などの輸送機関などに紛れ国内に入ってしまう<非意図的>なケースであるということです。

 

 

その外来種の中で、特に生態系、生命、身体、財産、農業などに甚大な影響を与える種を<特定外来種>として、指定する場合があり、ここには本体のみならず、卵、種子、器官などもこれに該当します。

 

 

現在、登録されている外来種の数は約2000種以上、特定外来種は約159種以上とされていますが、あくまで調査で確認されている数字の為、実際は現在も増え続けている可能性があります。

 

 

後程、下の項目で後述しますが、身近な動物でいえば、アライグマ、ガビチョウ、カミツキガメなどです。

 

  予想される被害

外来種がその生息地に入ることによって、様々な被害が予想されますが、その中でも、生態系の攪乱や崩壊、遺伝子攪乱、人への健康被害、農林水産業被害が懸念されています。

 

〇生態系

動物や植物は、その生息地の環境に合わせ独自の生態系を構築し、各工程での役割を担い絶妙なバランスで保たれています。

 

上の図は、生態系のサイクルの一例で、大まかに、分解者、生産者、消費者の役割に分かれ、動物や植物がそれぞれ、各役割を担っています。

 糞や死骸などを微生物、細菌、昆虫が分解(分解者)し、そこで作った無機物を養分に植物を育て、その植物が光合成で<酸素o2>とよばれる有機物をつくり(生産者)、その植物を草食動物(1次消費者)が食べ、その草食動物を肉食動物が食べ、(2次消費者)やがて動物の死体は分解されるという流れです。

 

このように、各生息地によって、生産、消費、分解というサイクルが無数に行われ、自然界を構成するのに絶妙なバランスが保たれています。

 この生産、消費、分解の役割を担う動植物ですが、数が偏りすぎてもまた問題があり、

外来種の侵入により、過度に植物が成長して栄養が奪われたり、異常に捕食されたりすると、その生息地の生態系が崩壊し、絶滅危惧種の増加、遺伝子攪乱(遺伝子汚染)へとつながります。

 

 

〇人への影響

病原菌が外来種を媒介にして国内へ伝播し、在来種はもちろん、人への健康被害を招く恐れがあります。

 

 病原菌には多種多様なものが確認されていますが、代表的なものでいえば、<狂犬病ウィルス>と呼ばれるもので、野生のキツネやタヌキなどの哺乳類が保有しているウィルスです。

このウィルスに感染すると、発熱、過呼吸、肺炎、麻痺などの重篤な症状を示し、致死率はほぼ100%を誇る非常に危険性が高いです。

人にもこの狂犬病が発症する例があるとされていることから、<共通感染症>とも呼ばれています。

 

 特に、特定外来種に指定されている野生の<アライグマ>などはこのウィルスを高い割合で保有していることで知られています。

 

 

〇農林水産業

 

作物や魚類の食い荒らしなどの農林業被害があげられます。

 

特に著しいものでいえば、農作物である、野菜、果実、などの作物を食べられたりする場合などがありますが、外来生物種の代表として、<アライグマ>による被害が深刻です。

 

 アライグマの哺乳類だけに限らず、アメリカザリガニなどの甲殻類、鳥類、昆虫類、植物などがあります。

 動物福祉や公衆衛生の意識向上も年々高まり、様々な対策を積極的に行われているのも相まって、平成~令和にかけての被害総額は、年々減少しつつありますが、決して傍観できない被害額となっています。

 

 

 

  対策

〇予防3原則

 

・入れない

・捨てない

・拡げない

 

外来種の対策する上でモットーとされている<外来種被害予防3原則>と呼ばれるものがあります。

 

外来種を他の地域に<入れない>、外来種を適切に管理する<捨てない>、すでに野生下にいる外来種を<拡げない>の3原則です。

この3原則を元に法律、条約などの政策で、外来種への対策を行っています。

 

 

〇外来生物法

 

・輸入規制

・健康被害防止

・農林水産業の被害防止

・生態系の攪乱防止

 

日本では、外来種などを規制する目的として制定された<外来生物法>と呼ばれるものがあります。

 

法律の定義では<特定外来生物による生態系、人の生命・身体、農林水産業への被害を防止し、生物の多様性の確保、人の生命・身体の保護、農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、国民生活の安定向上に資すること>と長い文で書いてありますが、要は外来種による対策を行うことで、人の生命・身体・財産を守るための法律という事です。

 

この法律の効力は、外来種の輸入、飼育保管、野外への放獣などを禁止するもので、

違反による罰則として、個人、法人に非常に高額な罰金が科せられることがあります。

しかし、動植物を扱う大学や専門学校などの教育機関、それを生業とする動物園や水族館、保護施設などは例外的にこの法律は適用外となっていますが、相応の手続きと逸走しない為の厳重な飼育管理が必要です。

 

 

  代表種

外来種は非常に多くの種が含まれていますが、その中でもメディアの間で有名な代表種を取り上げていこうと思います。

 

本ブログでは、<哺乳類>、<鳥類>、<爬虫類>などをテーマにしている為、各3類3種を簡単に紹介したいと思います。

 

 

〇アライグマ

分類は、<哺乳綱食肉目アライグマ科アライグマ属>に分類される動物で、元々の生息地は、北アメリカ原産で、森林や都市部など幅広い環境に生息しています。

 

体長41~60㎝、体重20kg程度の中型犬にやや近い大きさです。

タヌキとよく似ていますが、模様のラインがはっきりしていることや、尻尾が長く縞模様、足全体をつけて歩くなどのショ行性であることが大きな違いです。

 器用な手先で、川の中の食べものを探っている様子が、洗っているクマように見えることから和名の由来ともなっています。

 

 

・被害

アライグマは、元々繁殖力が高いゆえ、雑食傾向が非常に強く、野菜類、果実、魚類、肉類など幅広く食べることができ、特に作物の食い荒らしによる農林水産業被害が深刻です。

 また、アライグマ回虫、狂犬病などの共通感染症による健康被害や、在来種の大量捕食、鳥類の繁殖妨害などの生態系攪乱など、被害が多岐にわたることから、外来種の中で特に注意を要する<特定外来種>として、指定されています。

 

 

〇ガビチョウ

 

上:カオグロガビチョウ

下:カオジロガビチョウ

 

分類は、<鳥綱スズメ目チメドリ科ガビチョウ属>に分類され、元々の中国~東南アジアにかけ生息する小型の鳥類です。

  

 体調22∼25㎝とウグイスに近い大きさで、全体的に茶褐色~黄褐色の羽色で尾羽が長く、目の周りに模様が画かれていることから、中国名で<画眉(がび)>と名付けられており、日本語でそのまま<画眉(がび)鳥>と和名が付けられています。

 

鳴管が良く発達しており、他の野鳥の声を真似してさえずったり、鳴き愛玩鳥として親しまれていることで有名でした。

 

・被害

ガビチョウは古くから現在のインコとオウムに次ぐ人気を誇っている愛玩鳥でしたが、時代とともに人気が低迷し、ペットにしたものが大量に逃げ出し、問題になっています。

日本で見られるのは<カオグロガビチョウ>と<カオジロガビチョウ>の2種で、

鳴き声による騒音被害や、在来鳥類の駆逐による生態系の破壊、農作物被害などの被害が著しく、<特定外来種>に指定されています。

 

 

〇カミツキガメとワニガメ

分類は<爬虫綱カメ目カミツキガメ科>に分類される肉食性のカメで、本来の生息地は北アメリカ~南アメリカの泥や砂で覆われた、淡水か汽水域(海水と淡水が混じった水域)に生息しています。

 

全長約50㎝程度の大きさで、甲羅の表面は3本の線を描くようにとがっており、手足が太く、口の先端がとがっているのが特徴で種によりやや形態が異なります。

 夜行性の完全肉食性で、食せる肉類であればなんでも食べることができます。

 非常に獰猛で、見た目の割に動きが素早く、噛みつく力は非常に強大です。

 

・被害

ペットとして輸入されたものが野生化し、日本ではその亜種が千葉県の印旛沼(いんばぬま)で繁殖が確認され、問題になっています。

肉食性が幅が広いことから、在来種の異常捕食が懸念され、生態系や水産業に悪影響を及ぼす可能性が高いとして、<特定外来種>に指定されています。

 

 

 

 

以上が<外来種>の内容でした。

外来種には他に、昆虫類ではヒアリやセアカゴケグモ、魚類ではブルーギルなどより多くの種が存在します。

 

害獣としてのイメージが強く、忌み嫌われがちですが、地球の生態系を構成するには欠かせない種でもあり、個体数を調整し、管理していく必要があります。 

この種を野外に放つとどんな影響があるのか一度考えてみてはいかがでしょうか?

 

本日のコラムは以上となります。

最後までご購読ありがとうございました。

 

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○<X>アラフェネさん