こんにちは、アラフェネです。
今回は<ペンギン>記事になります。
鳥類では珍しく、進化の過程で飛行能力を失っている珍しい水鳥で、水中での活動に特化しています。
その為、体全体が流線型で羽毛をできるだけ少なくし、水の抵抗を減らせるように独特な体のつくりをしています。
現在では、危惧種の保護も相まって、世界の多くの動物園や水族館などで飼育展示繁殖されており、世界の飼育数の1/4を日本が占めています。
直立した姿勢で、2本足でトコトコ歩く姿などから、他の鳥類では見られない愛おしさがあり、現在でも、大人気動物の一種となっています。
そんなペンギンですが、どんな動物なのか、分類、生息地、形態、生態などを見ていきたいと思います。
分類
まずは分類です。
一般的に<ペンギン>と呼ばれるのは<鳥綱ペンギン目ペンギン科>分類されている鳥類、海鳥・水禽類の一群です。
現在地球上には、6属18種が確認されており、日本の動物園・水族館では12種のペンギンが飼育展示されており、
<フンボルトペンギン>が一番多く、飼育展示されています。
〇ペンギン目
<ペンギン目>は、<ペンギン科>1科のみで構成されており、オウサマペンギン属には、<コウテイペンギン、キングペンギン>の2種、
アデリーペンギン属には<ジェンツーペンギン、アデリーペンギン、ヒゲペンギン>の3種、<マカロニペンギン属>には<ロイヤルペンギン、キタイワトビペンギン、ミナミイワトビペンギン、スネアーズペンギン、シュレーターペンギン、フィヨルドランドペンギン>の7種、
フンボルトペンギン属には<ケープペンギン、フンボルトペンギン、マゼランペンギン、ガラパゴスペンギン>4種、キガシラペンギン属は<キガシラペンギン>の1種、
コガタペンギン属は<コガタペンギン(フェアリーペンギン)>の1種と合わせて6属18種に分類されており、マカロニペンギン属が一番種が多いです。
<イワトビペンギン>は地域によって<キタイワトビペンギン>や<ミナミイワトビペンギン>などの種がいますが、亜種なのか別種なのかはっきりしていません。
また、ペンギン目ですが、海鳥(チドリ目)などの一群に近縁であり、他にコウノトリ目や、カツオドリ目、ペリカン目に近縁で、最も近い目として、ミズナギドリ目が姉妹群とされています。
〇オオウミガラスとジャイアントペンギン
ペンギンには祖先として<オオウミガラス>が最も有力とされています。
オオウミガラスは1800年代までは北大西洋と北極圏に生息していた、<チドリ目ウミスズメ科>に
分類される、飛ぶことができない鳥類ですが、現在は乱獲により絶滅しました。
形態や生態などがほとんど、現生のペンギンと共通している部分が多いことから、
最も近い絶滅種とされてます。
また1930年ごろには南極のセイモア島では、全長150㎝~170㎝ほどのヒトの身長に近い<ジャイアントペンギン>という同属の種が発見されましたが、こちらもすでに絶滅しました。
生息地
続いて生息地です。
ペンギンは寒冷な地域でしか生息していないと思われがちですが、
種によって、生息地が異なっており、南極大陸やその周辺諸島の寒冷な地域、南アフリカ、南アメリカ、オーストラリアなどの赤道に近い温暖な地域で生息する種も多数います。
南極大陸<エンペラーペンギン、アデリーペンギン>
南極大陸の沿岸や内陸では主に<コウテイペンギン、アデリーペンギン>のみが生息しており、採餌や子育てなどを行います。
くわしい繁殖などは後述しますが、天敵などのリスクの面から、主に海岸から100km以上離れた、気温が最も低い、陸地で行うことが知られています。
プリンス・エドワード諸島、バード島、マクドナルド諸島、サウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島<キングペンギン、ジェンツーペンギン、イワトビペンギン>
・サンディアゴ沿岸<フンボルトペンギン>
・フォークランド諸島
・サウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島
<イワトビペンギン、ジェンツーペンギン、キングペンギン、マカロニペンギン、マゼランペンギン、ロイヤルペンギン>
比較的温暖な亜南極の周辺の島々ではサウスジョージア島、フォークランド諸島、マクドナルド諸島、プリンス・エドワード諸島、バード島、マクドナルド諸島、サウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島を生息地とする<イワトビペンギン、ジェンツーペンギン、キングペンギン>の他<ロイヤルペンギン、マカロニペンギン、マゼランペンギン>など、多くの種類のペンギンが確認されていることから<ペンギンの楽園>とも呼ばれています。
また、チリのサンディアゴ沿岸部では<フンボルトペンギン>が生息しています。
アフリカ大陸南西沿岸<ケープペンギン>
オーストラリア南部、ニュージーランド沿岸、チャタム諸島
<コガタペンギン(フェアリーペンギン)>
それ以外の比較的、温暖な地域では、アフリカ大陸南西部沿岸の<ケープペンギン>、南アメリカ西部沿岸の<フンボルトペンギン>、オーストラリア南西部沿岸では<コガタペンギン(フェアリーペンギン)>などが生息しています。
ケープペンギンやフンボルトペンギンは沿岸を中心に活動圏とするため、ヒトの活動圏と重なることがあり、道路や海岸などで野生の姿を見ることができます。
また、固有種として、赤道直下のガラパゴス諸島では<ガラパゴスペンギン>、スネアーズ諸島では<スネアーズペンギン>などが主に生息しています。
形態
続いて形態です。
ペンギンは<人鳥(じんちょう)>と呼ばれるように、骨格が垂直でヒトのように2本足で立っている独特な形態をしています。
進化の過程で翼が退化し、飛行能力を完全に失ってしまいましたが、<フリッパー>と呼ばれるものに変わるにつれ体格も流線型になり、水の抵抗を減らし、水中生活で有利にしています。
しかし、細かい骨格などは他の鳥類とは異なるものの、飛行の原動力となる胸筋(ハト胸)や<竜骨突起>が退化せず、そのままになっているのも大きな特徴であり、水中で泳ぐ姿を眺めていると、他の鳥が羽ばたいているのと同じように見えるとおもいます。
〇全長
上の表は主に、動物園・水族館で見られるペンギンの全長を比較してみました。
現生最大種は<コウテイペンギン>で全長112~115㎝、次点で<オウサマペンギン>が85∼98㎝と大型の部類です。
中型種では、<ジェンツーペンギン>が51∼90㎝、<アデリーペンギン>が70~73㎝、<フンボルトペンギン>65~70㎝、<ケープペンギン>が70㎝です。
小型種では、<イワトビペンギン>が55~62㎝、<コガタペンギン>では40㎝と
現生最小種となっています。
〇骨格
ペンギンの骨格
通常の鳥類の骨格は、竜骨突起や足全体の骨を前のめりにすることで、飛翔時と着地時に安定した動作を行うことが可能となっており、骨は全体的に細く、内部は空洞になっていて、これは、長距離飛行を行う都合上、体をできるだけ軽くするため進化の1つといわれています。
しかし、ペンギンの骨格は、他の鳥類と違い、竜骨突起の骨格が垂直になっていて首が比較的短く、骨の密度は高く、重量があるのが特徴です。
また、立っているような姿勢に見えますが、脚の<大腿骨>は常に90°ほど曲がっており、常に空気イスのような状態を保っており、尾羽はほとんどなく痕跡のみで、<尾椎(しっぽの骨)>がわずかに残っている形です。
〇竜骨突起
<竜骨突起(りゅうこつとっき)>と呼ばれる骨格は、鳥類のみに存在する丈夫な板状の骨で、<大胸筋>という筋肉とつながっており、それが翼と連動することで、羽ばたかせる際に大きく伸縮し、飛行するための推進力を生みだしているといわれています。
ペンギンなどの鳥類は翼が、進化の過程で退化してしまいましたが、<竜骨突起>退化せずそのまま残っているため、鳥本来の骨格を残しており、空で羽ばたく代わりに、水中での高速移動を可能にしました。
〇模様・羽色
当然ですが鳥類な為、全身羽毛で覆われ、羽色は背中が灰色∼黒色で、お腹が白色です。
この黒い羽色は海で活動する際の<逆光保護色>となり、上から見ると黒い羽色と海の暗色と同化し、下から見ると日差しに照らされた明るい色と同化し、捕食者から見づらくなる効果があると言われています。
種によって見た目が大きく違い特徴がはっきりしている為、見分けは
比較的簡単です。
下の表は、水族館でよくみられるペンギンの主な特徴と見分け方をまとめました。
コウテイペンギン(エンペラーペンギン)
<大型、羽色が黒い、雛の産毛が灰色>
オウサマペンギン(キングペンギン)
<喉元がオレンジ、羽毛が灰色、雛の産毛は茶色>
ジェンツーペンギン
<頭の羽毛が白い帯模様、くちばしが赤色、脚が黄色>
アデリーペンギン
<全体的に黒い、目のまわりが白くふちどられている>
ヒゲペンギン
<羽色やくちばしが羽色、脚がピンク、あごから頭にかけて黒い帯模様>
イワトビペンギン
<目やくちばしが赤い、頭に黄色い冠羽(キタイワトビペンギンのほうが長め)>
フンボルトペンギン
<口や顔まわりがピンク>
ケープペンギン
<目の上がピンク、体の模様がはっきりとみえる>
〇嘴(くちばし)
嘴の色や形は、種によって様々で、オウサマペンギンのように、細くオレンジ色のラインがはいっているもの、マカロニペンギンのように赤いもの、フンボルトペンギンのように全体が黒く、太いものなどがあります。
ペンギンには当然ですが、鳥類なので歯が無く、かみ砕くことができず、飲み込むような食事方法をとります。
その為、魚を飲み込む瞬間を観察すると、必ず頭から飲み込む様子が見られますが、これは魚の尾びれなどが喉につっかえないようにするためだと言われています。
また、口の内部表面はトゲ状で返しになっており、口の中に入れた魚を確実に捕らえ、はみ出さないようにする役割があります。
〇フリッパー(翼)
ペンギンの翼は、一般的な鳥類とは異なり、羽毛などをほとんど失った代わりに、平らな板状の骨格に変化しました。
ペンギンの翼はいわゆる<フリッパー>と呼ばれており、鳥本来が持つ、風切り羽を失い、薄く平らな骨の上に羽毛が生えている程度になりました。
その為、形は流線形を描いており、水を切り、潜水時に受ける水の抵抗を減らす構造をしています。
このフリッパーは、他の鳥類のように上下に動かせるようになっており、大胸筋と<竜骨突起>が連動しています。
その為、この上下運動による動作で、前方への強い推進力を生みだし、高速で水中を移動することが可能となっています。
水槽の中でペンギンを観察してみると、フリッパーを動かすごとにスピードが一時的に上がっているのがわかると思います。
最高速度を誇るのは<ジェンツーペンギン>最大約36km/hに達することもあります。
野生のコウテイペンギンやアデリーペンギンで集団で大移動を行う際に、腹ばいになって滑る様子が見られる<ドボガン滑り>も
フリッパーを上手く活用しています。
〇足・撲足
ペンギンの足は、水鳥らしく、<撲足(ぼくそく)>と呼ばれる、指の間に水かきがついています。
鳥の足については様々な名称が細かく呼称されることがありますが、大まかに、インコやオウムなどの<対趾足(たいしそく)>
、スズメやブンチョウ、カラスなどの<三前趾足(さんぜんしそく)>、カツオドリなどの水鳥が持つ<撲足(ぼくそく)>に分かれます。
ペンギンは当然ですが、<撲足(ぼくそく)>に該当し、水中での推進力と安定性、方向転換など、潜水に有利な足の形状をしています。
生態
続いて生態です。
〇好む気候
<コウテイペンギン>は寒さが非常に厳しい南極圏の内陸や<ジェンツーペンギン、キングペンギン、イワトビペンギン>などはその周辺の亜南極の島々を活動圏とし、<フンボルトペンギン>、<コガタペンギン>などは比較的、赤道付近などの温暖な気候を好みます。
また、スネアーズペンギンなどは、スネアーズ諸島の内陸の森などを好む種もいます。
〇食性
食性は完全動物性(肉食性)で、主に、アジ、マイワシ、タラ、シシャモ、ホッケなどを好む魚食性です。
最大種であるコウテイペンギンは寒い環境を乗り切るために、2~3kgものをたいらげ、これを、数に換算すると100匹以上、繁殖期はそれ以上となることが推測できます。
〇繁殖
繁殖はどの種も陸上の海岸から離れた内陸で行いますが、種によって、繁殖形態などが異なります。
特にコウテイペンギンは、ペンギン科の中でもあえて真冬に行う独特の繁殖を行うことが知られています。
上の表は水族館で見られるペンギン別の繁殖形態をまとめました。
ペンギンは、初夏~秋に繁殖シーズンを迎える種が多いですが、<コウテイペンギン>のみ、冬季期間に繁殖を行います。
基本的には、一か所に何万羽と巨大な<コロニー>と呼ばれるものを形成し、集団で繁殖を行います。
オスとメスで共同で子育てを行い、オスとメスが交代をしながら、抱卵と給餌を行うことがほとんどです。
アデリーペンギン属(アデリーペンギン、ジェンツーペンギン)で多く見られるのですが、小石などを多く集め、そこを抱卵場所として活用する種もいます。
悲しい話ではありますが、マカロニペンギン属(ロイヤルペンギン、イワトビペンギン、マカロニペンギン)などは、2個産んだ卵のうち、最初に生まれた卵は抱卵しないという詳細がわからない点があり、1個目と2個目に与えられたホルモン量の違いが関係しているのではないかと言われています。
しかし、同じペンギン科であっても<コウテイペンギン>のみは、5月~7月の南極の真冬に相当する時期にあえて繁殖を行うことが知られています。
詳細は分かりませんが、雛の成長とえさの量が関係していると考えられています。
動画:コウテイペンギンの繁殖
南極陸地の気温は最低気温は-60℃にも達し、細菌を含む、ほとんどの生物が生存することが不可能な超極寒地帯となります。
あえて気温が低い陸地を選ぶ理由としては、海から卵や雛を狙う天敵がいないこと、氷が解けて雛が死亡するリスクを無くすことが考えられています。
他のペンギンではオスメスが交代で抱卵しますが、コウテイペンギンではオスのみが抱卵し、メスは海へ渡り、ペンギンに餌を与えるための採餌のみ行う、という役割が明確になっています。
また、オスは抱卵中、メスが交代するまで、2か月間は何も食べることができない絶食状態になりますが、メスがかえってくる前に孵化した場合、オスは食道からの分泌物<ペンギンミルク>を与えて賄います。
これは、ハト科やフラミンゴ科の鳥類の素嚢(そのう)から剥がれ落ちる<ハトミルク>や<フラミンゴミルク>とやや形態が似ています。
このように、<コウテイペンギン>は子育てを、あえて厳しい環境下で行うことから、<世界で最も過酷な子育てをする鳥>と呼ばれています。
生息状況
現在、ペンギンは18種のうち、10種が絶滅危惧種として指定されています。
主な原因として、気候変動や人為的影響が関係しており、生息地や食料の確保に打撃を与えています。
以下は、ペンギンの絶滅危惧の区分を示しました。
現在のところ区分は<EN:絶滅危惧IB>とどまってはいるものの、いつ<CR:絶滅危惧IA類>に移行してもおかしくない状況です。
コウテイペンギンなどは直接的な人為的影響はありませんので、生息数を保ってはいますが、地球温暖化の影響が強く、油断を許さない状況です。
また、ガラパゴスペンギンやスネアーズペンギンなど半島を主に生息地を持つ種は、
海面上昇の影響を受けやすいです。
・コウテイペンギン
NT:準絶滅危惧
・ジェンツーペンギン
LC:軽度懸念
・フンボルトペンギン
VU:絶滅危惧Ⅱ類
・キタイワトビペンギン
EN:絶滅危惧IB類
・ミナミイワトビペンギン
VU:絶滅危惧Ⅱ類
・ロイヤルペンギン
NT:準絶滅危惧
・オウサマペンギン
LC:軽度懸念
・ケープペンギン
VU:絶滅危惧Ⅱ類
〇地球温暖化
<地球温暖化>とは、自動車の排気ガスや工場、火力発電などから排出される二酸化炭素、メタンなどによる温室効果ガスが増加し、宇宙への放熱が妨げられ、地球全体の平均気温が上昇している状態を言います。
その為、生息地を失ったり、気温の急激な変化で、生態系が乱れるなどの生物種に大きな悪影響が生じます。
ペンギンも例外ではなく、南半球の南極大陸やその近い場所を中心に生息地を持つ種が多い為、
気温上昇による南極の氷が解けることにより、地球全体の水位が上昇することにより、繁殖地が無くなるだけでなく、餌となる魚の生息地も変動する為、繁殖にも悪影響をあたえています。
特にコウテイペンギンなどは氷の上で繁殖活動を行っているので、最も影響を受けやすい種と推測でき、実際に氷が解け、ヒナなどが死亡したという報告があります。
〇人間活動・外来種など
気候変動以外では、漁業による魚の乱獲、生息地の破壊、タンカーからの石油流出、
外来種などによる、卵や雛の捕食、外来種を媒介とした病原の拡大などが懸念されています。
〇保護状況
現在ペンギンは世界中の動物園・水族館での保護繁殖による<域外保全>と、
保護区を指定し、監視保護する<域内保全>などが行われています。
また、地球温暖化による気候変動など影響も大きいという事から、できるだけ温室効果ガスの排出を抑制、ゼロにする運動が世界規模で行われています。
これは一つの種に限定されず、多くの動植物種を守ることにつながる非常に重要な課題だといえます。
ちなみに日本は水族館が世界の中でも非常に多く、ペンギンなどの水鳥の保護繁殖が
しやすいという部分もあり、約全繁殖個体の1/4が日本となっています。
今回の記事は以上となります。
ペンギンショーや餌やりなど、間近で触れ合える機会が沢山ありますので、是非観察してみてはいかがでしょうか?
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最後までご購読ありがとうございました。
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