湘南の海岸線を走る国道134号線は平塚を抜け、大磯に入ると国道1号バイパスに接続している。
走っている分は何処からバイパスなのか分かり辛いが大磯港を左に見れば、もうバイパスを走っているのだ。
このバイパスは西湘バイパスと呼ばれている。
大磯西ICを過ぎれば左手には相模湾がどこまでも広がる。
風波が立つ海はまだ冬色のブルーが残っていた。
アクセルを踏み込むと景色をどんどん追い越していく。
冬の大磯ロングビーチは直ぐに見えなくなった。
平日の昼下がり、交通量は少ない。
西湘PAを過ぎると鈍色の雲に包まれた箱根山が見えてきた。
「雨か・・・」
目的地は大涌谷。
箱根口ICから湯本を抜け旧道を駆け上がる。
雨は好都合、平日とは言え混雑する箱根。
少しでも渋滞に掛からず到着したい。
相模湾は変わらず風波が立ち、短い間隔で浜にしぶきを運んでいる。
春一番はしぶきを拡散させ所々で霧の空間を作る。
同じ相模湾でも鎌倉や江ノ島ではこういう景色をあまり見ない。
水深の深いこの近辺特有なのだろうか。
こういう日の海は車窓からに限る。
車は早川ICを右に折れ、海に別れを告げた。
ほどなく箱根口ICに到着したのだが、すぐに渋滞の後尾に並ぶことになった。
箱根湯本駅は見えているのに進まない。
列車とともに駅自体も塔ノ沢へ移動しているのではないか?
そんな錯覚さえ感じる。
ただただ、時間だけが過ぎていく。
順調に行けば全行程は3時間でおつりがくる。
このままでは確実にオーバーしてしまう。
「大涌谷は逃げない、また今度だな」
車は三枚橋できびすを返す。
硬いサスペンションは十分なトラクションを確保する。
箱根口ICに入った車は右コーナーを駆け抜けた。
「さあ帰ろう、鳥たちが待っている」
40分後・・・・・
チャチャ
「帰ってきたのかい!?」
ハル
「帰ってきたデスね」
飼い主
「チャチャ、豆苗美味しい?」
飼い主
「ハル・・・象の神様と一緒に寝ているの?」
「こ、こ、怖いよ」
おわり