ハノイからアマゾンで本を注文したらどうなるか① | 公園ぐるぐる+トレッドミル

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書籍を日本のアマゾンに注文して、ハノイの自宅に送る手配をした場合の話。

 

まずは日本のアマゾンのサイトに行って購入する。

今回は、娘の語学学習用のテキスト、CDがついているものとついていないものがある、を計6冊(CDは計6枚)、算数の参考書2冊で、計8冊。

4冊ずつ、2個口にそれぞれハノイの自宅を指定。カードで決済して配送が始まった。これが10月30日のこと。

 

国際配送業者はDHLが勝手に採用されて、航空便にて、香港経由でハノイのノイバイ国際空港の税関に翌日10月31日に到着した。

 

DHLのサイトで輸送、通関状況は確認できる。

日本側の通関作業は問題なく通過。

ハノイ側で止まってしまった。

 

ハノイ税関の通関事務はDHLが行う。

ものが到着するとDHLから電話などで連絡がある。

アマゾンで注文するときに、ハノイの電話番号、メールアドレスをどこかに記載しておくと、配送業者が連絡を取りやすいので、そうしておくべきだ。

 

今回DHLは電話で連絡してきた。

通関に必要な情報がほしいから、メールアドレスをまず教えてほしいと。

間違いのないように、SMSでメールアドレスを伝える。

するとメールに、以下の情報(税関告知書に記載する情報)を送れ、と来た。

ここからわかるのは、アマゾンは、税関告知書など通関に必要な書類の作成をDHLに委託しているということだ。

EMSで日本からハノイへ自己宛小包を送る場合は、宛名票の作成と同時に、ベトナム通関用の税関告知書、INVOICEを自分で作成することが求められている。それらをビニルパウチに封入するところまで、送り主の責任でやる必要があるのだ。

しかし、アマゾンの場合は日本発送時にそれをやっていないようだ。

本1冊あたり400円、一梱包当たり500円の海外発送手数料が徴求される。一方で日本の消費税は課税されない。

発送手数料はおそらくDHLとの取り決めによるものなのだろう。

こうしたアマゾンの送っりっぱなしの態度もいただけない。海外発送をうたうのであれば、各国の通関事情には精通している必要があって、顧客からの疑問には対応できるようにしているべきだと思うが、アマゾンは、配送を頼んだのは客の方だ、こっちは発送するところまで責任があるのであって、あと通関上のトラブルが発生しても感知しない、という態度である。

であるなら少なくともそうしたリスクが発生することは明記すべきであろう。つまり、最悪の場合、物は届かないわ、カネは返金されないわ、税関との複雑なやり取りに巻き込まれるわ、自分で通関関連法規については各省庁に確認する必要があるわ、で、大変なことになる可能性もあるぞ、ということである。

顧客が困っているときにこそ、ビジネスチャンスはあるのであり、金銭補償する保険を提供するとか、通関業務に精通することで、顧客からの質問にも対応できルというサービスを提供することで海外発送手数料の値上げだって合理的な根拠をもって可能だろう。

第一、物が顧客にちゃんと届くところまで見届けるという態度が必要なのではないか。

一流企業となって、そのくらいできることなのに、めんどくさいから、やらない、って言っているのはいかにも子供じみている。

いまは、輸出代行業者も多く存在する。そうした会社は実際の通関トラブルからノウハウを得て、確実に届けることを売りにしている。

アマゾンとしては、安くてリスクの高い輸送方法、高くてリスクゼロの輸送方法の両方だって提供できるはずだ。

送ったらあとはDHLと顧客の責任、と言って知らんぷりしているのは、顧客第一を考え抜かないで、あぐらをかいている。これが大企業病というものなんだろう。創業時にこうした問題があれば必死に取り組んだはずだ。

 

さて、情報を送ってしばらくすると、DHLはこう言ってきた。

税関に「今回は正規の手続きを取らないと、通関させない」といわれた、「輸入許可(輸入ライセンス)の取得が必要だ」、といわれている、「通してくれとたのんだものの、規則があるからダメだ」といわれた、等々。

 

通関作業はもちろん全数チェックを行うわけではない。

抜き取り検査で、所定の手続きを踏んでないことが発見されると、通関されることはない。

抜き取り検査の対象にならないと、そのまま一般物品扱い(税関申告書の内容)で通関し、適当な関税率が適用され、配送時に現金払いとなる。

つまり、税関告知書、INVOICEは通関上最低限の必要書類であって、それだけでは、書籍を輸入するには正規の手順ではないのである。

 

本来は輸入者自身が事前にこれを熟知したうえで輸入するっていうのが建前なんだろう。

だが、何もしないで送られてくる場合が大半であるし、そもそも関税法体系は複雑で個人レベルで調査、理解している人は、貿易関連会社の勤務者でもない限りほとんどいないだろう。だから今回の様に泥縄的対応になる。

 

正規の手続きが必要だ、と言われると、基本的にはそれに従うしかないが、実はここから対応は分かれる。

 

ある人は、税関職員にわいろを渡して乗り切ろうとする。

これはベトナムではあり得る話だ。しかし、公務員の規律向上策が年々強化されているし、これがいつまでも可能なようだとベトナムはダメな国のまま終わってしまうだろう。

空港で持ち物をとがめられた場合と違って、わいろを渡そうにも、空港まで行かなくてはならない。

そんな暇はない。

 

ある人は、税関職員に、一筆入れて、これは個人のものだから何とか通してくれないか、と頼んでみるという方法があり、これで乗り切った人も実際にいるようだ。

しかしのちに記すように、非商業用の書籍を輸入する場合には、個人だろうと、企業だろうと関係なく、ライセンスの取得が必要とされているのが現行法なのである。それはそうしたものには低関税率が適用されているからだと思われる。

文例を見せてもらったが、この程度のやり取りはすでにメールで行っている。

それでもだめなのだから正規の手順を踏むしかない。

 

書籍を個人が、自己の目的で日本から輸入する場合の正規の手順については、よく探せばきちんと定められていて公開されているので、これに従うべきであろう。DHLはこれについて教えてくれない。DHLが言うのは、ライセンスをとれと税関が言っている、情報通信省のライセンスをとれと税関が言っている、ということだけで極めて不親切だ。

 

教育関連の書籍の場合は、関税ゼロとなっており、免税措置を受けるためにも、正規のひと手間が必要となるのだ、という理解だ。

ベトナムの関税率については、ほかの国と同様にHSコード別に細かく設定されている。

HSコードとは?)

 

今回の場合の正規の手順はここに書いてある。

https://www.vietnamtradeportal.gov.vn/index.php?r=searchProcedure/view1&id=205

このURLが見れない場合は、以下の手順で進んでも同じところにたどり着ける。

 

JETROのサイト

https://www.jetro.go.jp/world/asia/vn/trade_03.htmlから

→下の方の「貿易情報ポータルサイト」をクリックし、

→英語サイト(あるいはGoogle翻訳でサイト自体を英語に翻訳して)の右の方のProcedureをクリック

→検索ウインドウで、Non-commercialを検索

Import licenses for non-commercial publications がヒットするので、それだ。

 

そこに必要な手順と、申請書フォームが用意されている。

但しそこのフォームは、画像ファイルで、実用には適さないので、

情報通信省の一部門、情報通信部のサイトにいって、ワードフォーマットのファイルをダウンロードして使う。

https://ppdvn.gov.vn/web/guest/chi-tiet-dich-vu-cong?id=2

 

ここからわかるように、ライセンス(許可証)発行主体は、ベトナムの通信、出版を監督する、情報通信省になる。

ライセンスというと大げさだが、結局申請内容からして、申告した書籍に対する輸入許可である。

 

フォーマットをつかって情報をいったん英語で埋めて行き、念のため、ベトナム語にGoogle翻訳や、現地人にお願いして翻訳していく。

フォームは2種類ある。おもて紙と、購入した本の明細だ。

 

その中にはISBNコード(国際標準図書番号)を記入する欄がある。ISBNコードを参照すれば、書籍が特定できる。

このフォームをつかって、情報通信省に申請するということは、建前上、この役所が、教育関連書籍なのか、辞書なのか、地図なのか、を申告に基づき確認するということなんだろう。確認が完了した、という証明が今回取得する「ライセンス」なのだ。それで申告した書籍について輸入が許可される。

情報通信省の承認は、明細書の下の方に記入される。

これを税関に提出することで、税関は関税率を決定するのである。

 

このフォームは、法人向けのものではあるが、あまり細かいことは気にしないで、空欄を埋めれるだけ埋めていく。

氏名欄には、住所、名前、パスポート番号、一時滞在許可証の番号、電話番号、メールアドレスなどを併記しておくとよいだろう。

 

完成したら、おもて紙は1枚、明細は3部印刷。サイン欄にサインする。

それとパスポートのコピー。

DHLから送られてきたArrival Notice。

それと、通信ができ、作成したファイルの保存されたパソコンを持って、情報通信省へ行く。

 

情報通信省は、185 Giang Voにある。

ホアンキエムに情報通信部があるがそこではない。個人は情報通信省本部に行く。

私のようにまちがえてそっちに行ってしまっても、そこの職員が親切に教えてくれる。

 

↑ホアンキエムの方

 

Giang Vo通りは185と、185Aという番地が、106-K1などをはさんでがとびとびに配置されていてちょっと変わっている。

出向くのは185のほうだ。106-K1はQuan Nem、有名なブンチャー屋です。

185Aに行ってもそこの人がここじゃないって教えてくれる。

 

185 Giang Vo

 

一人オフィスでやっている↑

 

1階の受付でIDと交換に入館証を受け取り、指定された部屋(中二階の事務室でした)に行って、

順番を待って、書類を見せ、ライセンスが取得したい旨申し出る。

書類に問題がなければそのまま、引換券が発行されて、終了となるだろう。後日指定された日時にライセンスを受け取りに行く。

 

書類に問題がある場合は、必要な修正をして出直すのだろうが、

今回私の場合は、持ってきたパソコンから、ファイルを担当者に送付し、その場で担当者が必要な修正をちょこちょこっと行い、

あらためてプリントアウトしてくれ、それにサインをして、受付完了となった。

 

修正内容は、おもて紙、明細の上部に、企業名を記入する欄があるがそこに、個人名を記入するなどといったものだった。

明細書は3枚になったので、各ページにサインを求められる。

修正作業をしている中で、口頭で間違いないか確認されたのは、パスポート番号、住所、電話番号、本の数とCDの枚数である。

本の数、CDの枚数は2-3回確認された。おそらく通関上ここが間違うと厄介なことになるのであろう。

 

提出した書類は、その申請書、明細と、パスポートのコピー、Arrival Notice。

個人荷物をハノイの自宅ではなく、会社宛に送ってしまった場合は、労働許可証や労働契約書などが必要になったりして、会社側にひと手間かかる場合があるので、避けるべきだ。

パスポートのコピーでは足りず、UPSでこうした手続きを行う過程で、パスポートの公証を求められたケースもあるようだ。

 

受付されると引換券が発行される。

この仕組みは、公証を受ける場合、車の免許証を切りかえる場合、などいろんな場面でベトナムの標準となっているもの。バーコードだってついている。

受取可能時間は、ぴったり36時間後に設定された。

つまり引換券には、受付時間11月5日、15時11分、受け取り時間11月8日、15時11分と記入されるのだ。

ベトナムはだいたい日本に比べていろいろちゃんとしていないのだが、なんかやたらとこだわるところもある。

仕事やっている感を出すため、といった程度の意味しか感じられないが。

こうしたところが、なんか背景があるのだろう。などとかんがえると、気質の違いを感じ、おもしろい。

 

しかし実際この手続きは意味があるのだろうか。

国としては、情報管理をしたいから、個人輸入だからと言って何でもスルーさせるわけにはいかない。

一方で、教育関連の情報については低関税を適用させたい。

しかし、本音はちょっと困らせて税金、賄賂をぶんどりたい。

こんな思惑が透けて見えるような手続きである。

 

個人がこうしたライセンス(許可証)を情報通信省から取得する、というのは、それ自体、非常に形式的だ。

問題があるなら、税関は中身を確認する権利があるのだから、箱を空けて確認し、各国言語に精通した職員を配置し、

書籍の内容を確認したらば、その場で税率決定し、通関させたらよいのではないか、個人にこのような手順を踏ませるのは過剰だし、

形式的にそうしたいならばもっと電子的な手段で承認をとれるようにすべきだろう。

書籍の場合はISBNやバーコードもあるから、データベースを情報通信省と共有するなど整備すれば、

税関職員が直ちに内容を確認することもでき、輸入者個人に事務手間をかけずに処理することも可能だろう。

 

しかしあくまで税金は、日本の確定申告でも同じだが、申告に基づき行われるのが原則なんだろう。

いったんそれが真実であるかどうかは置いておき、形式的に税率をはじき出す。

申告手順は積極的には周知しない。

しかし良く探せば公開されている。っていうのが相場だ。

日本はそうでもないだろうが、ベトナムなんかは複雑にしておいて、あとで、ほら、規則に従ってない、追徴課税だ、ということをやりやすようにしておいて、税金をぶんどりたいか、それで困った一般市民からわいろをいただく、っていう社会システムになっている、ってことを理解する必要がある。

 

つまり真実性の確認、適法性の確認、はさらに抜きとり検査で、運悪く当たった場合に根掘り葉掘り調べられる。

そんなもんだ。

 

まとめると、

通常はベトナムの自宅まで配送される。DHLに情報送って、着払いで(ちょっと高めの)関税を払っておしまい。

まれに情報通信省発行の輸入許可証の提出を求められる。求められたら手順通りに取得して通関させる。関税率は正規のものが適用となる。

 

つづく