(1)『ハロー・グッバイ』と芳恵さんのこと
 

 

多摩市・カナメさんからのリクエスト、アルバム『TWILIGHT DREAM』から、河合奈保子『Hello Goodbye』をお送りしました。

この歌があの人のあの歌に先行して発表(1981年5月10日アルバム発売)できたのは、幸運だったと思います。
『Hello Goodbye』というこの歌のタイトルは、これがベストと断言していいほど妥当です。でももし、柏原芳恵(当時・柏原よしえ)の『ハロー・グッバイ』が先に大ヒットしていたとしたら、この曲名をつけるのは少々ためらわれたかもしれません。

今回これを書くにあたって初めて知ったのですが、『ハロー・グッバイ』ってカバー曲だったんですね。
原初に遡れば、もとはアグネス・チャンのシングルのB面。曲名は『ハロー・グッドバイ』(1975年)※(1)
その後、曲名を『ハロー・グッバイ』に変更、讃岐裕子(すみません、存じ上げません……)がカバー(1977年)※(2)し、柏原芳恵(当時・柏原よしえ)がブレイクする大ヒットソング(1981年)※(3)に至ります。その後も複数のシンガーにカバーされる、不朽のアイドルソングです。

アグネスの原曲はB面だったから仕方ないとして、讃岐裕子さんの歌もいいと思うんだけどなぁ……。つくづく「ヒット」って不思議。世の中の風向き次第って気がします。特に「無名」から「有名」に変わる、「ブレイク」を果たすヒットというのは。
強いて云えば、芳恵(当時・よしえ)さんには「色気」がある。奈保子さんとは、二つ歳下。当時十六歳のよしえチャンが放つ、歌声を聴くだけで感じるこのお色気! 男子悩殺の《芳恵セクシー》、この年頃から威力抜群。
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(2)芳恵・奈保子の不思議な符合と「80年」のこと

芳恵さんにはこの機会に、お詫びしておきたいと思います。
ワタシは長いこと、彼女のことを「82年組」のひとりだと勘違いしていました。ごめんなさい。『ハロー・グッバイ』の発売・ヒットが81年の10月なので、記憶の時系列の混乱が起こってしまったのでしょう。その後の彼女の活躍ぶりは、まぎれもないトップアイドルの一員でしたが、けっこう遅咲きでした。
デビューは80年。河合奈保子とは同期です。それどころかデビュー日は6月1日! まったくの同年同日デビューなのです。
出身地は大阪、これも同じ! そして、ともに、魅惑のボインちゃんでもあります!
大阪民として、こんな誇らしいことはありません。

当時の記憶ではなく最近になって視た動画ですが、「プロポーズ大作戦」(大阪局制作の伝説的恋愛バラエティ番組)に揃って出演したことがあります。「フィーリングカップル5対5」という名物コーナーに女性チームとして登場したのは、松田聖子を筆頭に、浜田朱里、柏原よしえ、河合奈保子、そして研ナオコ(笑)の面々。80年デビューのアイドルたちでした(>約1名除く)。

80年デビューと云えば、三原順子(現・三原じゅん子)さんも忘れてはなりません。聖子・順子・奈保子で「聖順奈(せいじゅんな)トリオ」なんて呼ばれたこともあるようです。
中森明菜、小泉今日子を輩出した「82年」も名高いですが、「80年」の顔ぶれも錚々たるもの。凄い年ですよ。

松田聖子、三原じゅん子、河合奈保子の、三人三様、それぞれの「現在」に想いを馳せると……。
本当に、人生いろいろですよね。

(3)続きの口上とあの「作り話」のこと

共通項も多い、奈保子さんと芳恵さんのお二人ですが、アイドルとしての性質は好対照であったようにワタシには思えます。

かたや清楚、かたやセクシー。ワタシが奈保子さん贔屓だからといって、芳恵さんを貶めるつもりはありません。全身から芳しく放たれる色香。名付けて、《芳恵セクシー》。芳恵さんにあって、奈保子さんにはないものです。ワタシが奈保子さんのことを「いやらしい目で見てない」などと云うつもりはありません。全くありません。ですが奈保子さん自ら、「ほら見て、グッと来ちゃうでしょ?」――などとセクシーアピールを発しているわけではありません。よく云われる話ですが、彼女の水着姿はいやらしくなく、健康的そのものです。
降り注ぐ太陽の光と、吹き渡る潮風に戯れる、無垢な天使がいるだけです。それをこちらが勝手に不健康な、いやらしい目で見ているだけです。
一方、芳恵さんは、発してると思うんですよ。フェロモンに似た、《芳恵セクシー》を。まあ芳恵さん自身、意識して発しているわけではないと思いますが……。

だからなのか、変な噂を立てられたこともあります。いい機会ですので、触れておきましょうか。あの有名な「作り話」について。

 

あの「作り話」のあらまし
よしえさんがマネージャーと連れだって、空港のゲートをくぐろうとしました。すると、手荷物検査の「ブザー」が鳴りました。
(この時点でツッコミを入れたくなりますが、我慢して先を続けます。) 係員がその手荷物を開けると、そこから出てきたのは、アダルトなラブアイテムでした。
「三日間ぐらい我慢できなかったのか?」
マネージャーは呆れて、こう云いました。よしえチャンは、こう云い返しました。
「奈保子ちゃんだって、もってるもん!」


指摘するまでもないと思いますが、手荷物検査は金属探知ではなくX線による視認です。「ブザー」は鳴りません。そこに凶器や危険物でも認められればともかく、ラブアイテムの影が見られたとしても、係員は止めません。これは電動あんま器ですね? 本当に肩こりをほぐすのに使うんですか? 別の目的に使うんじゃないでしょうね? ――そんなこと訊きません。
さらにプラスチックとゴムで覆われ、その素材が大部分のラブアイテムが金属反応を起こすとは考えられません。百歩どころか一万歩譲って、それをポケットにしのばせゲートをくぐったとしても、「ブザー」が鳴ることはありません。

少しでも空港というものを知っているオトナなら笑い飛ばす、いかにも中高生が考えそうなウワサ話です。
奈保子さんもとんだとばっちりですが、ワタシは不思議と怒る気になれません。むしろ、温かく癒されるような、そんな心持ちになります。

こんな話が出てくるほど、大の「仲良し」として知られていたということが一つ。さらに、アイドルにセクシャルなウワサ話はつきものです。かわいい顔して、やることやってんだぜ?――というような。清らかなもの、神聖なものを穢そうとする、高みにあるものを引きずり落そうとする、下種な大衆心理です。
そうした悪意――妬み、僻み、嫉みに基づく捏造のゴシップでさえ、「男遊び」ではなく「ひとり遊び」に行き着いてしまう、そうせざるを得ない、お見事な男っ気の無さ。これがもう一つ。
奈保子さんもそうですが、セクシー芳恵さんにしてもです。

よしんばこの話に真実の一端があるとしても、ワタシは別に気にしません。アイドルに「恋愛禁止」のルールがあるとしても、「ひとり遊び禁止」のルールはないからです。アイドルだって人間、それぐらい、こっそりいたされていたとしても、まったく構いません。

――きみはなんて、いやらしい、ふしだらな女の子なんだ!? 見損なったよ!?

そんなことを云う資格は、ワタシにはありません。一体どの面下げて、どの口がそんなことを云えるでしょうか。
ワタシが性欲猿であった、エロモンキーでしかなかった中高生の頃、奈保子さんの眩しい水着姿に、どんなに慰められたか知れません。
その節は、誠にお世話になりました。
パァァァンッ!(脳内奈保子のハリセン、炸裂)

セカンドアルバム『TWILIGHT DREAM』について語るつもりが、すっかり芳恵ちゃん話になってしまいました。ここまでは、SIDE-1。アルバムについては次回SIDE-2に譲ります。近いうちにお目にかかりましょう。

お別れの曲は多摩市・カナメさんからのリクエスト、同じくアルバム『TWILIGHT DREAM』から、河合奈保子『Mr.パイロット』をお送りします。
『Hello Goodbye』の次の収録曲がこの歌って、どういう神様のいたずら? 発売時期からすると、ほんとうに誰の意図も介在しようのない、ただの偶然としか云いようがありません。

 

あなたにおまかせ あなたにおまかせ
フライトプランは あなたにおまかせ


書かれた字面は、パイロットのフライト――。けれど、その裏側に重ねられた比喩は、あまりにも明らかな乙女心――。好きな曲のひとつです。
 

愛のライセンス 今夜あげるわ


胸を射る矢のように、ズキュンと刺さるこの一節!
うれしいよ、奈保子。今夜は、きみを操縦しちゃうからね!!!
(……………)
いや、その、なにもそんなに気持ち悪そうに、ドン引きしなくても……?
だいたい脳内奈保子さんはワタシの想像上の存在のはずなのに、なんでそんなに反応がリアルなんですか?
 


2024.06.16 一部変更・加筆