多摩市・カナメさんからのリクエスト、河合奈保子『デビュー~Fly Me To Love』をお送りしました。

ワタシは80年代中盤からのアイドル界・歌謡界に、まったく無知であることをあらためて思い知りました。
この歌がオリコン1位を獲得したことをワタシは知らなかったのです。それどころか、この歌そのものをワタシは知りませんでした。『ハーフムーン・セレナーデ』を知らなかったのも、むべなるかなです。

『ハーフムーン・セレナーデ』のオリコン最高位は6位。その年(1986年)の「紅白歌合戦」にもこの歌で出場しており、世間的には売れていたし、認められてもいました。ワタシが知らなかったのは、単にワタシが勉強不足――というより世間知らずだったということです。

当然、その前年の「紅白歌合戦」で、吉川晃司が大暴れして火までつけた挙句、次の出番の河合奈保子が『デビュー…』の一番しか歌えなかったという伝説の放送事故についても、最近になって知りました。この頃の吉川晃司は暴れん坊でしたからねぇ。次が奈保子ちゃんで命拾いしたなあ? もし和田アキ子さんだったらシバかれてるぞ? 裏番組の格闘技より盛り上がってるぞ?(この当時の裏番組は格闘技ではなかったでしょうけど。)
「紅白」の晴れの舞台で、なんてことをしてくれるんだ? ○ね、○すぞ――そんな粗暴な、ガラの悪い言葉は口にしたくありません。大河内教官、吉川学生をセスナ機で上空から落っことしてやってください。

いや、吉川晃司は責めるには当たらない。ワタシの平井和正仕込みのオカルト脳には、彼はNHKホールに操られただけなのではないかと思える。
ワタシはむしろ、NHKホールに対して、ひとこと云いたい。
NHKホールよ、キミは奈保子に、なにか怨みでもあるのか?
四年前、彼女はNHKホールで、あわや一生車椅子という大けがを負ったというのに!? それなのに、よりによって「紅白」でも、この仕打ちか!? あんまりじゃないか!? なんの祟りだ!? 奈保子ちゃん、逃げてッッッ!

お願いだから、NHKホールでお芝居だけはしないでほしい。天井から照明が落下してきますよ!?
何度お越しになっても、『スマイル・フォー・ミー』の権利は渡さなくてよ? あの子よ! いまはずぶの素人でも、わたしが育ててみせるわ! 『スマイル・フォー・ミー』を歌うのはあの子! あの子しかいないわ! 怖ろしい子、オホホホホホホホホ……!
――そんな黒ずくめの、月影奈保子先生が誕生しなかったことに、胸を撫で下ろしています。

えーと、なんの話でしたっけ? そう、80年代中盤からのアイドル界・歌謡界に、まったく無知であったという話でした。
いまのワタシからすれば信じられない話です。思えば、世代的に直撃であるにも関わらず、ワタシはあの、「おニャン子クラブ」にまったく何の興味も思い入れもありませんでした。
おニャン子クラブの台頭は、それまでの80年代アイドルたちに取って代わりましたが、彼女たちはアイドル界そのものを破壊したようにワタシには思えます。おニャン子が去ったあと、安室奈美恵が彗星のように登場するまで、長い「アイドル冬の時代」が続くわけですが、ワタシの人生においてもこの頃は「アイドル冬眠期」であったようです。ワタシはなにをしていたのでしょう? たぶん平井和正に、異世界につれていかれてたんだと思います。(比喩的ではあっても、マジで。)

スカーレット

さて、その『ハーフムーン・セレナーデ』を収録したアルバム『スカーレット』です。『ハーフムーン・セレナーデ』のほか、収録の全曲が河合奈保子さん自身の作曲! もはや、本物のシンガーソングライターです。

さすがのワタシも、このジャケットには覚えがあります。
「ああ、奈保子ちゃんも、こういう世界に行っちゃったのね……」
当時、そんな風に思ったような気がしますね。
攻めたジャケットだと思います。妄想ですが、なんだかコロムビアレコード会議室の、ピリピリムードが伝わってきそうじゃないですか?
「いやー奈保子ちゃん、やっぱり普通の写真で行こうよ……?」

ハーフムーン・セレナーデ

――こんな風に(シングル/ハーフムーン・セレナーデ)

 

ワタシがレコード会社の社員でも、こう云うと思う。作品として支持はします。それでも、セールス的にはこれはマイナスに働くと思う。
それでも奈保子さんは、頑としてこれを押し通したのではないか? それは彼女の「アイドル・河合奈保子」からの卒業、決別、その強い意志の表れではなかったでしょうか? ……って、前提が妄想なんですけどね。

※吉川晃司が大河内教官役をつとめた朝ドラ『舞い上がれ!』について

 

こぼれ話 ~ お詫び&訂正と『河合奈保子 プレミアムコレクション』 
『河合奈保子 プレミアムコレクション~NHK紅白歌合戦&レッツゴーヤング etc.~』を購入、問題の「第36回NHK紅白歌合戦」のパートを視ました。明らかな間違いは訂正しました。すみません。「『デビュー…』の一番を歌えなかった」のではなく、「『デビュー…』の一番しか歌えなかった」のが事実です。
これが、
もともと一番しか歌う予定がなく、番組全体の進行がそのぶん押してしまったのか?
それとも、二番までフルコーラス歌う予定が、一番しか歌えなかったのか?
そのへんの正確なところはわかりません。おそらく後者ではないかと思います。
もちろん、吉川晃司の問題のシーンまで収録されているはずがなく、何事も無かったかのように、河合奈保子のステージ部分だけが収録されています(笑)。でも、明らかにおかしいんですよ(笑)。まず、司会者の曲紹介が無い。曲名の番組上のテロップ、「河合奈保子(出場5回)」のそれも無し。
ただし、彼女の最後の紅白出場となる6回目・第36回紅白でも、番組上のテロップはありませんでした。第35回から、それらのテロップは無くなっていたのかもしれません。これは番組全体を視て確かめないと、なんとも云えませんね。

 

あとがきと次回予告
余談ですが、「世間の流行り」とか「世の常識」みたいものは、普通に知って、押さえておかないといけませんね。ワタシの悪いところが出てしまったなと思います。好きなもの、夢中になったものに没頭するあまり、それ以外のことにまったく見向きもしない。ザ・オタク気質、非・社会的超マイペース。世の中で流行ってるからって、なんでおれまでそれに乗っかって、付き合わなきゃいけないんだ? そのようにうそぶくことすらなく、ごく自然にそう思い、そう行動している。
やりたいことに全集中、ほかのことはお構いなし。いまが西暦二千何年だろうが、辞めて何十年経っていようが、たとえ周りから「変」なやつだと思われようが、おれは河合奈保子を語りたいんだ。誰もおれを止められない。セルフィッシュ&アンストッパブル。流川楓か。
でも、そうする上で、こんな風に自分の常識の無さに「泣きを見て」りゃ世話はない。やっぱり、そうしないといけない理由はあって、「常識」って大事よね、伊達じゃないよね。こんなリスクを抱えることになるのですよ。
「紅白」を毎年じっくり視る必要はないが、誰が出て、どんなことがあったかぐらいは押さえておこうよ。

その程度の目配りがあれば、『ハーフムーン・セレナーデ』を知らないということはなかった。
十代の若さから彼女に一度は醒めてしまったとしても、二十代の青年のワタシの目で、あらためて「惚れ直して」いたかもしれない。そうなれば、彼女の「結婚」だって、ファンとしてきちんと受け止めることもできただろう。
アイドルファンにとって、アイドルの結婚は、一大イベントであり、通過儀礼ですよ。奈保子さんのご結婚をファンとして受け止めることができなかったのは、痛恨の極みです。次回は、アイドルの結婚問題について、考えてみたいと思います。お愉しみに。うちの奈保子をよろしくお願いします。

 

 

 

2023.09.24 加筆・一部修正
『ハーフムーン・セレナーデ』のジャケットと、同曲を収録したアルバム『スカーレット』のそれを混同していまして、その点を修正しました。

2023.10.02 「こぼれ話」を加筆・一部修正