水泳(長水路・短水路)と陸上(屋外・室内)の違い | 計測工房社長・藤井拓也のブログ

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マラソン大会などのスポーツイベントのタイム計測のプロフェッショナル、株式会社 計測工房の社長である藤井拓也のブログ。

さて、再び水泳の話です。

スピード社製水着「レーザー・レーサー」によって日本新記録が連発され、日本水連も

同連盟と契約を結ぶメーカーの水着しか認めない方針を、選手が自由に選択できる方針に

転換しました。

この件以来、スピード社製水着の国内ライセンス契約を結んでいるゴールドウィン社の

株価が大幅続伸し、さらに一般の「スピード」ブランドの水着の売れ行きも伸びているそうです。


そんな今回のスピード社製水着を着用した選手による日本新記録ですが、私が着目したのは

”長水路”と”短水路”の違いです。長水路とは50mプール、短水路とは25mプールのことで、

今回のジャパン・オープンでマークされた記録はすべて長水路日本新記録です。

オリンピックを始め正式なレースは長水路ですが、冬の間のシーズンオフの試合などは

短水路で開催されるようです。


以下は、今回、日本新記録が更新された主な男子種目(長水路日本新記録)と、それぞれの

短水路日本記録です。


種目名           今回の日本新記録(選手名)  短水路日本記録

男子200m自由形     1分47秒36 (奥村幸大)     1分44秒72

男子400m自由形     3分47秒26 (松田丈志)     3分41秒86

男子200m背泳ぎ     1分54秒77 (入江陵介)     1分53秒01

男子100mバタフライ     51秒77 (河本耕平)        50秒55

男子200mバタフライ   1分54秒42 (松田丈志)     1分51秒30

男子100m平泳ぎ        59秒44 (北島康介)       57秒62

男子200m平泳ぎ     2分07秒51 (北島康介)     2分04秒96

男子200m個人メドレー  1分59秒28 (藤井拓郎)     1分55秒77


一目瞭然なのですが、今回、スピード社製水着によって日本新記録が連発されましたが、

それでも長水路の記録よりも、短水路の記録のほうが速いです。北島康介選手も今回の

200m平泳ぎは世界新記録で初の2分7秒台だったわけですが、短水路では2分4秒台という

記録なのです。


短水路の大会は、シーズンオフの冬場に開催されており、選手にとっても夏場のトップシーズン

に比べるとコンディションは落ちている時期のはずですが、それでも記録だけ見ると長水路よりも

速いのは、距離が半分の25mプールなので単純にターンの回数が倍になっており、その影響

です。つまり、競泳のタイム短縮のカギとして”水着”の要素もさることながら、”ターン”がいかに

大きいかを示しており興味深かったです。



これが陸上競技の場合、”屋外”と”室内”の違いになるかも知れません。

陸上競技の大会はすべて”屋外”でおこなわれますが、やはり冬場のシーズンオフの時期だけ

”室内”で開催される試合もあります。記録はすべて”屋外記録”と”室内記録”は別々に考えられ

ますので、水泳に似た考え方です。

しかし、陸上の場合、ほぼ全ての種目において室内記録は、屋外に及びません。水泳と逆の

シチュエーションになっています。これはシーズンオフだからというピーキング的要素もさること

ながら、室内の競技場と屋外の競技場の大きさ・規格の違いが大きいと思います。

屋外では1周400mのトラックも、室内では1周200mとなり、さらに室内競技場は傾斜(バンク)が

ついています。これは水泳とは違い、記録が屋外ほどには出にくい環境のようです。


(以下、代表的な種目例)

種目名       日本記録(屋外)  室内日本記録

男子200m     20秒03        20秒63

男子400m     44秒78        45秒76

男子800m   1分46秒18      1分49秒09

男子走高跳     2m33          2m28

男子棒高跳     5m83         5m70

男子砲丸投     18m56        18m07


もっとも、例外もあるもので、男子棒高跳の世界記録は、”鳥人”セルゲイ・ブブカ選手(ウクライナ)

の6m14ですが、室内世界記録は同じくブブカ選手の6m15で、室内記録が屋外を上回っています。

ブブカ選手に限らず、時々このような事例もありますので、屋外と室内の違いは、どちらかといえば

選手のコンディションやピーキングの問題で、水泳における”ターン”ほどの決定的要素はないの

かも知れませんね。屋外では風や雨や気温といった気象の影響も大きいのですが、室内では

それらの影響も皆無になって有利なような気がしますが、その要素を割り引いても記録は屋外の

ほうがいいのですね。



このように水泳と陸上のような異なる競技を1つの視点から見てみると結構面白いです。