アンコール遺跡3・タ プローム | キリギリスのつぶやき

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キリギリス体質な社内通訳者の悪戦苦闘な日々のつぶやき・・・  
   

アンコール・トムで、すっかり度肝を抜かれた後、向かったのが、タ・プロームという遺跡。これも大きく言えばアンコール・トム(大きな都市)の一部で、城壁の中にあり、同じジャヤーヴァルマン7世という帝王が、母親を弔う為に建設した菩提寺なのだそうです。

このタ・プロームこそ、一般のイメージの「ジャングルの中に埋もれ、長年の自然の侵食を受け木々と一体化した遺跡群」というアンコール遺跡のイメージにぴったり。

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かなり倒壊が進んでいます。崩れている石は全て遺跡の壁や屋根だったもの。崩れてから、更に年月が経ち、苔むしている。内戦や盗掘・盗難によって崩された部分も多くあるけれど、大半は自然の力で崩れたものです。

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沖縄などでも多い、ガジュマロの木がこうして根を張り、成長するので、遺跡の石の間などにも根が縦横無尽に張ってしまい、木の生長と共に倒壊が進む・・・ということに。


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倒壊していない部分の彫刻・造詣は正に見事。これ程に美しい寺院がどんどん倒壊して行く・・・というのは、自然の力ながら、惜しい・・・(涙)

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この見事な彫刻も、将来は後ろの塀の様に、倒壊してしまうのかな?

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どんどん崩れてます・・・ もったいない・・・
石造りでも、これ程に見事な建造物でも、人間の英知など自然の力の前には、儚いものなんだなぁー。

壊れるに任せているばかりではなく、もちろん修復の努力も重ねられています。でも、ガジュマルが一度根を張ってしまった石壁は、隙間まで根が入り込んでいるので、根だけ取り除いても、その後はボロボロっと崩れてしまうのだそうです。現在張ってしまっている根は、それ故に遺跡を傾かせているけれど、同時に遺跡が崩れ落ちるのを止めてもいるのですね。

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表面をこんなに根で覆われている壁面・・・よく見ると↓

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隙間から、仏の顔が・・・ (ちょっと心霊写真風)
これも、あと数年?数ヶ月?したら、見えなくなってしまうんです。悠久の時を越えて来た石造りの遺跡、でも永遠では無い。自然の力に覆われ、いつかは失われる運命・・・

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屋根まで石造りの回廊の名残、どんどん屋根は落ち、壁も崩れ・・・

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ガジュマロはなんて生命力のある木でしょうか。石があっても、お構いなし。ただ、ガジュマロというのは、コルクの様に軽い木なので、大きな幹が高々と遺跡に乗っていても、重量は比較的軽いのだとか。これがもし重い種類の木だったら、この様に木が生えた時点で、遺跡ごと木も一緒に倒れてしまうらしい。

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ものスゴイ大きさの根。それでも頑張っている下の遺跡もスゴイ。

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どんどん覆われています・・・
でも、この感じが、他の遺跡には無い、自然と一体になったタ・プロームの見所でもあります。この状態では、根を取り除くことも既に出来ず、このまま行けば、数年後には、もう見られないかも知れない・・・と思えば、この体験は本当に貴重でした。

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本当に素晴らしいこんな彫刻も、次に訪問したとしても、もうそこには無いかもしれないし、根がすっかり覆い隠してしまっているかもしれない。

何世紀も残っていた、精緻なな彫刻と重厚な石造りの寺院の力強さと共に儚さも実感しつつ、時の移り変わりの不思議を想うタ・プロームであります。

全てのものは移ろい、この世は全て幻・・・というのが仏教、ひいては仏教の元になったヒンズー教の根底の教え。それを現代人にも肌で感じさせてくれる、神聖な場所でした。

遺跡の保護・修復の難しさに想いを馳せつつ・・・まだまだアンコール遺跡の旅は続くのであります。