2614のつづき
洋平が学校に着くと、栄子が待っていた
「洋平」
「おう、どうした?」
「昨日、あたしを探してたんだって?ケケが言ってた」
「そうそう、野球部のこと聞こうかと思ってさ、そしたらケケのお兄さんがキャプテンだって言うからさ」
「そう、あたし月曜日はね決まって家の手伝いをするからさ、すぐに帰ることにしてんの」
「ああ聞いたよ、偉いね。お家の手伝いなんてさ」
「昔っからだから、別に慣れっこだよ。洋平のところは、何かしてんの?」
「うちは、普通のサラリーマンだよ」
「ああそうだよね、ニュージーランドに転勤するんだからね」
「栄子の家はどこにあるの?」
「あたしんちは市川にあるの」
「市川?」
「そう、結構閑静な住宅地が多くって、その住宅地の中にあるの」
「へえ、住宅地の中って珍しくね?」
「まあ、家はずっと昔からそこにあるから、周りがどんどん変わっていってるんだよね。それはそうとさ、今度は野球部なんだね。」
「そう、今日は2日目」
「見に行っちゃおーかなあ」
「別いいけど」
「みなみに聞いてからにしよーっと」
「お好きにー」
放課後、洋平はすぐにユニフォームに着替えて、グランド整備を始めた
トンボという木の道具を使って、土ならしをしているところに
他の1年生が入ってきた
「おお~、洋平が一番のりかよ、やっべー仮入部生に負けちゃあマジヤベ」と和也
「いい心がけだよ、そういうのって大事だよ」と達也
みなみは、道具箱や、バット、ボールなどの準備をしていた
他の1年生も練習前の準備をし始めた
すると、2年生のリーダーである横川健がやってきた
横川健は2年生の中では小柄な方であるが、打力、守備、走力と3拍子揃った2年生ながらレギュラー選手で入学する前はリトルリーグでプレーしていた。
野球にたいしては理論的に考え攻めるタイプだ。野球の話をしたら止まらない、相手が泣くまで議論する。
「石橋だっけ?」
「はい、石橋です。洋平でいいです、よろしくお願いします。」
「おお、1週間だっけ?」
「はい、テスト的にやらさせてもらってます。」
「わかった、キャプテンから面倒見てやってくれと言われたから、よろしくな。」
「はい、ありがとうございます。」
練習前のミーティングで、全員に自己紹介をしてから
ストレッチ、30分のランニング、をしてそれぞれの練習に入っていった
達也はピッチャーなので、すでに軽くピッチング練習
そして、和也は外野にまわってキャプテンからノックを受けていた
洋平は、横川から守備の基礎を教えてもらうため
ノックしている場所から離れた外野の端っこで
軽くノックしてもらいながら取り方を教えてもらった
「腰を落として、グラブの内を前に出して、両手で押さえるようにして取るんだ。ボールは基本的に必ず両手で押さえること、ボールが勢いで逃げたり、抜けたりするからな。ボールは後ろに逃さない、必ず前でとる、身体に当てても、必ず前でとる。OK?」
「はい、わかりました」
はじめは軽くな
徐々に距離を取りながら、ノックも強めにしていった
最初はなれなかった洋平も、グラブの扱いも慣れてきて取れなかったボールも取れるようになり、呑み込みの早い洋平に横川も驚いていた。
洋平も、ノックを受けながら、横でキャプテンからノックを受けていた和也のボールさばきの真似をして覚えていった
ボールを取った後の返球は、みなみが取った
みなみはマネージャーをしているが、中学校まではリトルリーグで和也、達也と一緒にプレーをしていた
洋平はみなみが他の選手と同様のレベルでボールをキャッチするのを見て
「凄いなー、あいつ」
とはいえ、慣れないせいか思いっきりは投げられない、違うところに投げてしまいそうだ
軽くツ―バウンドくらいで返球した
これに横川がさらに驚いたのは、昨日始めたばかりの洋平がみなみに対して
「洋平のやつ、ボールコントロールしながら返球しているぜ」
横川は、少し強めにノックして見た
洋平は、グラブさばきが上手くいかず身体を当てて、前に落としてから返球した
「おい、洋平大丈夫か?」
「あっ、全然大丈夫です。OK、バッチコーイ!」
横で練習している和也の真似をして、大きい声を出してみた
横川は、工藤キャプテンが言っていたことを思い出した
「健、明日洋平の面倒見てやってくれないか、1週間だけのテストらしいけど。けっこう侮れないぜ。お前もどんな感じか見ておいてくれ」と言われた
その通りだった。
「よ~し、これくらいにしよう。」
「全員集合!」工藤キャプテンが号令をかけた
「よし、これからティーバッティングに入るから。それぞれでやってくれ。それと和也、洋平にトスしてやってくれ。健、みてやって。」
「はい、わかりました」
to be continued
「前へ」