他流試合のときのアプガは、なぜか普段の自分達のライブよりも面白い展開になることが多い。 

今回行われたDJダイノジとアップアップガールズ(仮)による異種格闘技戦【ジャイアンナイトTOUR 2017  ホシノヒカリFINAL 円形デスマッチ DJダイノジ vs アップアップガールズ(仮)】もこちらの期待を遙かに上回る面白さだった。

去年のTIFで実現したダイノジ大谷のDJに℃-ute岡井、アンジュ竹内、そしてアプガが絡むという何だかよくわからないコラボに沸きまくった身としては、今回の対バンは絶対に外せない現場だった。

開演時間ギリギリに到着し入場すると、場内はいい感じに空いていて、大谷のDJがウォーミングアップ的に行われていた。

フロアのど真ん中にDJブースとステージが設けられていて、それを四方から観客が取り囲むような形状になっている。だから正確には円形ではなく四角形の三辺がステージになっているのだが、驚くべきは客席とステージとの近さだ。最前列とステージを遮る空間がないので、演者との距離がほとんど1メートルくらいしか離れていない。

その気になれば最前列にかぶりつきで見れたが、あまり近すぎても却って見づらいので下手というか左サイドの二列目辺りで待機する。

開演時刻になり、大谷の紹介でアプガのメンバーが颯爽とステージに登場。

それは今まさに試合に挑もうとするプロレスラーがリングインする光景にも見える。

「overture(仮)」が場内に鳴り響き、まずはアプガの単独ライブからスタートする。

イチバンガールズ、UPPERROCK、アッパーカット!、アッパーレー…

一週間前にZepp divercityで観た@jamのライブとほとんど同じような内容。

ではいつもと変わり映えのしないワンパターンなセトリに退屈したのかというとまったくそんなことはなくて、それどころか観ていて過去最大級に高まった。

何故か? その高まりの最大の要因は、前述したように演者と観客との距離にあったと思う。

先日、古代の湯で行われた「湯会」のときも運良く最前列で観れたのだが、今回のライブのほうが距離的には圧倒的に近く、こんなに間近でアプガのライブが観れたのは初めてかもしれない。

入れ替わり立ち替わりメンバーが自分の至近距離にきて、激しいレスがくるたびに異様な興奮がオレを包み込み、このままライブが続いていけばここで一生が終わってもいいような気さえしてきた。

「…以上、アップアップガールズ(仮)でした!」

約40分のライブを終え、いつものように客席に手を振り舞台裏に捌けていこうとするメンバー。

そのときちょうど自分の目の前には、佐保ちゃんがいた。

目が合ったような気がしたので、とっさに左手でメロイックサイン(人差し指と小指をツノのように立てる手振り)をつくり、佐保ちゃんに向けて突き上げた。

すると彼女は笑みを浮かべながら、同じように右手で人差し指と小指を立てて、それを自分に向けて返してきたのだ。

!!!!!!!!!!!!!!!!(その瞬間の自分の高まり具合を佐保ちゃん風に表現するとこうなる)

(//∇//) ううっ、佐保ちゃんしか…

最近はアプガのライブを観ていても、みーことあやのんの卒業のことばかりを考えてしまい、今ひとつ気分的に盛り上がれなかったが、この日に限っては、そういったネガティブな感情がほとんど湧かなかった。

若干の休憩をはさみ、DJダイノジのジャイアンナイトがスタート。

大谷のDJとアジテーションに合わせて繰り広げられるダンサーのパフォーマンス、そして大谷の相棒ダイノジ大地のエアギター。

さらに「ウチらも交ぜろ」と言わんばかりにアプガのメンバーも登場し、あとは出演者全員でエンディングまでひたすら沸きまくるというのがこのイベントの実態なのだが、とにかく最初から最後までアガりっぱなしでムチャクチャ楽しいライブだった。

選曲が近年のJ-POP中心なので、オレなんかが普段だったら絶対に聴かないような曲も含まれていたが、そんなことはあの空間にいたらまったく問題なくて、ライブ終演後のメンバーのSNSでも「知らない曲がたくさんあった」と記載されていたが、おそらく彼女達も当日はほとんどぶっつけ本番でライブに挑んだのではないかと思われる。  

アプガのメンバーも普段のライブと違って、フォーメーションや歌割りにとらわれる必要がないので、かなり自由に振る舞っているように見えた。

個人的に観ていて高まったのは、RADIOFISHの「パーフェクトヒューマン」をノリノリで踊る彼女達の姿だった。

アップアップガールズ(仮)はアイドルグループであると同時に、芸人的なギャグを追求するお笑い大好き集団でもある。従ってこういった選曲で彼女達のギャグ魂に火がつかないわけがなく、RADIOFISHのフリコピをしているときの彼女達は本当に楽しそうだった。

途中にインターバルがあったとはいえ、3時間くらいぶっ続けでステージで踊っているわけで、あやのんとか殆どバケツ一杯分くらいの汗をかいていたのではないだろうか。

あまりの暑さと汗の量に、まぁなが風呂上りみたいにタオルを頭に巻いていたのも面白い光景だったし、水分補給用にステージに置かれたペットボトルをメンバー同士でまわし飲みしているのも初めて見たような気がする。

そんな素のアプガというか裸のアプガを垣間見る瞬間がいくつもあり、それだけでもこのイベントは非常に興味深いものだったと思う。

ラストの「FOREVER YOUNG」では途中から(2)のまーちゃんこと吉川茉優も出て来て盛り上がり大団円を迎える。まさに完全燃焼だ。

肉体的にも限界レベルに疲れたが、帰宅後も興奮が醒めず朝方まで寝付けなかった。こんなことは珍しい。

一方で、あれだけタフなライブを行った翌日に広島までコンサートをしに行ってるのだから、まったくアプガって連中は…。




二年前のちょうど今頃、この日と同じように東京ドームでポール・マッカートニーのライブを観た。

あの日、四半世紀ぶりに観たポールのコンサートは本当に素晴らしいものだった。

あれ以降、完全にポールロス状態になり、今日に至るまで随分とビートルズやポールの音楽を聴いて過ごしてきた。

今更ながらビートルズやポールの楽曲を聴いていると、何か自分がロックを聴き始めた頃の気持ちや初期衝動がよみがえってくる。

そして今こんなことを考えている。

人間が生きていく上で水や空気を必要とするのと同じように、自分はビートルズやポールの音楽を必要としているのだと。

今回のライブには、中学の同級生だった古くからの友人と一緒に行った。

中学生のとき、そいつに薦められて【ウイングス・グレイテストヒッツ】を購入した記憶がある。ビートルズ解散以降のソロワークスに関連した作品を買ったのはおそらくそのときが初めてだったように思う。

東京ドームの自分の座席に着くと、イスの上には未使用のサイリウムと何やら怪しげな紙が置いてあった。

【ご協力のお願いの内容】
コンサートの後半で「HEY JUDE」を披露します。この曲の時に、座席にあるサイリウムで座席一面を今回のテーマカラーである水色に染めてください。

さらにその紙には「ポール・マッカートニーさんご本人には内緒の演出です」とも書いてあったが、地下アイドルの生誕祭かっつうのwww

コンサートの一曲目は「ア・ハード・デイズ・ナイト」。日本で歌われたのは今回のツアーが初めての曲だ。

この曲の妙味はジョンのリードボーカルが途中でポールに入れ替わるところだが、こうした曲をあえてオープニングにもってくるところがポールの大胆なところだ。

しかしイントロの「ジャーン!」のあとポールが歌い出した途端に、それがジョンのパートであったことを忘れ、オリジナルのように聴こえてしまうのだから不思議。

これがビートルズの楽曲における「ポールの絶対性」というやつで、極端なことをいえばポールが歌うだけでそれがオリジナルのような説得力を生む。

セットリストに関してはあちこちで言われているように、前回同様ビートルズ曲を中心とした代表曲のオンパレード。全体の比率でいえば60年代70年代の楽曲が全体の9割くらいを占めていただろうか。

こうした懐メロコンサートに対して批判的な意見も多いが、これはこれで正しい選曲だと思う。

多くの観客が望んでいることは、今のポールが今のポールを歌うことではなく、今のポールが過去のポールを歌うことだ。もちろん本人だって、多くの観客が自分に何を求め何を聴きたがっているのかわかっているだろう。

単なるサービス精神というよりも、おそらくポールは自分がビートルズのメンバーであったことを宿命として受け止め、人生の最終章に入った今、残りの音楽人生を世界中のビートルズファンに捧げようと決意したのではないだろうか。

ポール・マッカートニーの日本公演など夢のまた夢だった時代にビートルズやウイングスを知った自分のような世代の人間には、こうしたコンサートが日本で行われていることじたいが殆ど奇跡のように思えてしまう。

そしてわかっていたとはいえ、本編ラストの「ヘイ・ジュード」でドームの観客席が水色に染まる景色は圧巻だった。

前回のライブのときは、自分の後ろに座っていたオッサンが大声で「ラーラーラ、ララララ、ヘイジュー!」と繰り返し歌っていて思い切り脱力したが(いうまでもなくナーナーナ、ナナナナが正しい発音)、今回の「ヘイ・ジュード」はサイリウム効果も相まって本当に感動的だった。

そしてアンコールのラストに披露されたのは前回同様に「ゴールデン・スランバー」から始まるアビーロードメドレーだった。

この心の底から湧き出てくるようなエモーションはいったい何なのだろうか。

これでコンサートが終わってしまうという寂しさ、それもあるだろう。しかしそれ以上に「ポールを観ることが出来るのはこれが最後になるのかもしれない」という感情が同時に芽生え、それがセンチメンタルな感情を呼び起こす。

「see you next time」

2020年、新国立競技場でポールのライブをというファンの願いは果たして実現するだろうか。
長いことアイドルヲタクをやっていれば、日本武道館にアイドルを観に行った数もそれなりの回数を重ねている。

そんな中、過去のどのアイドルと比較してもアプガの日本武道館公演は無謀だったように思う。

それは以下の理由に起因する。

5年以上に及ぶ活動歴の中でヒット曲は皆無。

CMやドラマのタイアップに曲が使用されたことも当然ない。

さらに言えば、地上波の歌番組に出演したこともなければ、雑誌の表紙になったこともほとんどないので知名度はゼロに等しい。

過去、最大限に話題になったことといえば、みーこが沖縄の砂浜でサンゴ礁を拾って持ち帰ったことが問題になり、それがYahoo!のトップニュースに載ったことくらいだろうかw

動員の頼みの綱ともいえるハロヲタの援軍も、前日のjuice=juiceに取られ、まさに絶対絶命の窮地で迎えたアプガの武道館公演。

会場に到着し、武道館の正面入り口に設置された「日本武道館超決戦vol.1」と書かれた巨大な看板の前で立ち止まり思わず感慨にふける。

ビートルズが初めて日本武道館をコンサート会場に使用してからちょうど半世紀。

ボウイの氷室京介が「ライブハウス武道館へようこそ!」と叫んでから30年。

日本武道館のステージに、もう間もなくするとアプガのメンバーが立つ。

入場後、アリーナ席から場内を見渡すと、満員にはほど遠い集客とはいえ、自分が予想していたよりも、ずっと客が入っていたので少しホッとした。

そして一体どこからこんなに集まってきたのだろうかと思えるような、おびただしい数の(仮)Tシャツを着た人達。

今夜、この場所に集まった(仮)Tシャツを着たヲタク達を見ていると、彼ら(彼女ら)はとても強い意志を持って武道館に来ているように思えた。

どんなアイドルのコンサートよりも、アプガのライブは観客のヲタTの着用率が高いが、そこには何か特別な意味というか無言のメッセージを発しているように自分は感じてしまう。

いつものライブと同じように「Born Slippy」のSEが場内を包み、アプガの武道館が始まった。

ライブの冒頭、三味線の生演奏に合わせて空手着を着た佐保ちゃんが登場し、いきなり氷柱割りが行われる。

この日、初めてアプガを観た人達にとっては、まったくもって意味不明な光景に映っただろうが「イヤー」の掛け声とともに見事、氷は真っ二つに割れ、ライブがスタートする。

着物風の帯がついた新しい衣装に身を包んだアプガのメンバー達。

「 Pump Up!!」

ステージ上にスクリーンがないため、自分の席からではメンバーの表情をうかがい知ることが出来ない。しかし紛れもなく彼女達がいま武道館のステージに立っているのだということを実感し胸が熱くなる。

オレのように胸を張ってアプガの専ヲタとはいえないような半端者でさえジーンときたのだから、エッグ時代から推していたような古参の人達は、この時点で号泣していたかもしれない。

エッグといえば最初のMCのとき、佐保ちゃんが「今日はハロプロエッグ時代に一緒に頑張ってきた仲間たちもたくさん応援に駆けつけてくれています」と、関係者席に手を振っていたのが印象的だった。あとあと判明するのだが、この日の関係者席には現ハロプロメンバーを含む、ハロプロエッグ出身者が大集合していた。(中でもいちばん驚いたのは、前日に武道館公演を行ったばかりのJ=Jの佳林ちゃんがきていたことだ。本来ならば前日の余韻に浸りながら家でゆっくりしていたいだろうに、わざわざ先輩達のハレの姿を観に来てくれるとはなんて良い子なんだろう)

今回の武道館公演はアプガにとっては、ひとつの到達点といえるものだったが、全体の印象はこれまでの彼女達のライブとは少し異なっていた。

まずこれまでのどのライブよりも演出が凝っていた。

派手なレーザー光線。着ぐるみを着たゆるキャラ。ピアノとバイオリンの奏者。小林幸子から借りてきたステージ印象。全身に電球がびっしりとついたボディスーツ。本物のお神輿。巨大なミラーボール。

これまでの彼女達のステージで使われた小道具といえば水鉄砲くらいしかなかったわけで、まさに武道館ならではの大盤振る舞いといったところだが、もっともクラウドファンディングで支援者から金を募った以上は最低でもこのぐらいはやらないと納得しないだろう。

また以前までのアプガのコンサートだと押したり引いたりといった構成がほとんどなく、最初から最後までひたすら体力だけで押しまくるというワンパターンなものが多かったが、今回のライブではピアノの伴奏による「beautiful dreamer」が歌われたり、メンバーのソロコーナーが設けられたりと、今までにないような工夫が施されていた。

しかし、こうした迎合的な演出はひとつもアプガらしくなく、もっといえばアプガのヲタは誰一人として、彼女達のコンサートにピアノの伴奏によるバラードなんか求めていないと思う。

もちろんいつものアプガらしいパフォーマンスもコンサートの要所要所に織り込まれていて、中でも圧巻だったのは中盤に披露されたEDMメドレーだった。

最近のアプガのコンサートはノンストップのメドレーが見せ場になっているが、今回は「パーリーピーポーエイリアン」がメドレーに組み込まれたことにより、EDM的強度が急激に増したような印象を受ける。

アプガヲタの間では、どういうわけかこの曲の評価が低いようだが、個人的にはアプガの全レパートリーの中でも最上位に位置する1曲だという思いが強い。

アンコールの1曲目に歌われたデビュー曲「Going my ⬆」がエモかった。

「一緒に夢語っていた子がミニスカートで輝いている。頭でわかってるんだけど悔しくて涙出た」

なんというゴッドアングルだろう。一緒に夢語っていた子が、今夜、武道館のスタンド席から彼女達に声援を送っているのだ。

そしておそらくなにか重大な発表があるだろうなと覚悟はしていたが、予想通りマイクを手にしたみーこ。

「私、仙石みなみも25歳になり、今ここで決めたことがあります」

「きたか…」誰もがそう思っただろう。

しかし彼女が発した言葉は、良い意味で予想に反したものだった。

【アップアップガールズ(2)募集】(かっこにきと読むらしい)

場内の盛り上がりは告知された内容に沸いたわけではなく、みーこがこれからもアップアップガールズ(仮)のメンバーでいてくれることに対する安堵感だろう。

何にしてもこれでアプガの武道館はハッピーエンドで終われる。

そしてアンコール最後の曲は「サマービーム」。

会場内のすべての照明が点灯し、場内は昼のように明るい。スタッフが手動で押すトロッコに乗ってアリーナを練り歩くメンバー。

日本武道館というハコが彼女達に似合っていたかと言われればそんなことはなかったし、興行的にみても決して成功したとはいえなかっただろう。

しかしトロッコの上から観客席に手を振るメンバーの笑顔を観たとき、本当にこの公演が実現してよかったと思った。

いつの日にか、あと六千人を集め、この会場をフルハウスにすることを夢ながら、これからも応援し続けようとオレは誓った。