いささか極論めいたことを言えば、アイドルのライブなんてものは、自分の好みのメンバーがいて、ライブ中にその子を見て高まり、その対価(チケット代金やそれらに費やした時間など)に見合うだけの多幸感が得られれば、それで良いのではないだろうか。

転校少女*のワンマンライブを観るのは、今回が初めてだったが、ステージ上の塩川莉世を見ていたら、思わずそんなことを考えてしまった。 

彼女達のライブパフォーマンスは、転校少女歌撃団の頃からアイドルフェスやリリイベなどで、何度か目にしたことはあったが、自分が本格的にこのグループの魅力に開眼したのは、新体制になった去年の秋以降のこと。さらに言えばメンバーの塩川莉世のルックスに惹かれたからに他ならない。

11月の新宿BLAZE(アイドル甲子園)で、彼女を見たとき自分がハマったことを確信したが、そのときは特典会に行くだけの度量は持ち合わせておらず、年内に接触に行くチャンスがあればいいかな...くらいに考えていた。

結局、年末も多忙で転校少女*現場には行けず、さらに言えば1/14の東京公演にも仕事で行けそうにない。

というわけで、前日の夜に突然思い立ち、埼玉公演に行くことを決意する。

本来ならば、この日は新メンバーの加入したまねきケチャを観に行くつもりだったが、あいにく前売りチケットを買っていなかったのと、それよりも今は転校少女*を見たい気持ちのほうが上回っていた。

さいたま新都心駅で下車し、スーパーアリーナを横目で見ながら国道を歩き、会場のHEAVEN’S ROCKに到着する。

この会場には初めて来たが、殺風景な佇まいが、いかにも地方のライブ会場という風情を感じさせる。

当日券の客はいちばん最後の入場だったので、フロアの後方から観ていたのだが、ハコそのものが大して大きいわけではないので、離れていてもステージ上の様子は十分に伝わってくる。

ライブの内容に関しては、前述したように、自分の場合、そこに塩川莉世がいるだけで満足なのだから何もいうことはない。しかし大のオトナの感想が「莉世ちゃんカワイイ」だけでは、あまりにも情けないので、もう少し突っ込んで書いてみようと思う。

特別な趣向を凝らしているわけでもなく、衣装替えもアンコールもない実質1時間半のステージは、一見すると地味な内容だが、シンプルなゆえにメンバーの存在感が際立ち、ライブハウスならではの特性がうまくいかされたライブだった。

転校少女*というグループの魅力を一言で説明するのはなかなか難しく、掴みどころのない不思議なアイドルグループというのが自分が彼女達に抱いていたイメージだったが、この日のライブを観てもその印象は変わらず、言い換えればその掴みどころのなさが、このグループの魅力なのだろう。

公式HPには「エモーショナルかつ文学的な楽曲をパワフルなステージングで表現する5人組アイドルグループ」とあるが、確かに彼女達の楽曲には凡百のアイドルにはないような詩的な高級感を感じさせるものが多く、この日のライブでも「聞かせる曲」では、フロアのヲタク達が耳をすまして真剣に聴き入っていたのが印象的だった。

さて塩川莉世への接触だが、結論からいうと、結局、この日もビビって断念してしまった。

ウーン。とりあえず今年はこのチキンハートを克服し、彼女とチェキを撮ることをヲタ活の目標のひとつにしよう。




LOFT9 Shibuyaという会場には、今回初めて行ったのだが、入場者の列を見たとき、そのあまりの年齢層の高さに、最初、本気で会場の場所を間違えたのかと思った。十代、二十代は言うには及ばず、三十代ですら皆無のように思える。

当時の知り合いが自分のことを見つけて声をかけてきてくれたが、一瞬、誰だか分からなかった。まるで何十年かぶりに地元の同窓会に出席したような気分だ。

2008年に、OPDが期間限定で復活ライブを行ったときユッコが言った「OPDは解散していない」という言葉に嘘はなかった。あれから10年、彼女達は再びファンの前に戻ってきてくれた。

題してOPDトークライブ「25年目の夜だから~喋るで!歌わへんで!」

歌わへんのか。まあいいや。

来場者数はざっと100人くらいだろうか。上手側のVIP席のようなところには、TPDのメンバー(木原/八木田/櫃割)の姿も見える。

ステージの上にはテーブルと椅子が用意され、その背後に設置されたモニターには、10年前に行われたリユニオンコンサートの映像が流れている。何かその映像を眺めているだけで、恍惚とした気分に包まれていく。

開演時間になり、場内の照明が落とされ、メンバーが登場する。

現在のメンバーの年齢と観客の年齢、そして着席で観覧するという今回のイベントの形式を考えると、拍手だけで静かに迎え入れるのが当然のように思われるが、メンバー登場と同時に「アヤノーーーッ」「うえだーーーっ!」といった25年前とほとんど同じような歓声が客席からあがる。

当時のアイドル現場というのは、昨今のアイドル会場のような画一的なコール(mix等)はなく、ヲタクが勝手に推しの名前を叫ぶという応援の仕方がデフォだった。

今回、その前時代的な声援をきいたとき、ここにいる連中、どんだけ年寄りなんだよと思ったw

ステージ上に登場した大阪パフォーマンスドールのフロントメンバー。
F/UNIT(古谷/上田/中野/稲葉/武内)の5人。

彼女達を見ても不思議なことに「懐かしい」という感情はあまりわかない。同時に加齢によるヴィジュアル的な衰えをほとんど感じさせないのは、さすが元アイドルだと思った。

1部のトークの内容はOPD結成から活動休止に至るまでの軌跡を、年表を見ながら振り返るというもの。

ほとんどの出来事をリアルタイムで覚えていたが、初めて知った事実というか裏話もいくつかあった。

中でも衝撃的だったのは、オーディションを経て、OPDのメンバーが正式に決まった後に、一部のメンバーがその場で強制的に髪の毛を切らされたということ。

もちろん専門的な技術を持ったヘアデザイナーがカットしたのだと思うが、当時の推しメンから「OPDに入るまではロングだったのに切らされた」みたいな話を聞いたことがあり、なるほど、そういうことだったのかと。

あとは94年にOh!ゆれ大阪やNGKスタジオで行われていたウィークリーライブについてのメンバーの言及も興味深かった。

あまりにも意味不明な内容で、多くの観客が思考停止に陥ったあのときのライブは、今ではOPD史に残る最大の汚点とされているが、実はメンバー自身も観客と同じ気持ちでステージに立っていたということ。 

メンバーが画用紙で作った自作のお面を頭につけて、学芸会ばりの寸劇を行い、それを観客が呆然と見つめているという悪夢のような世界。いま思うとあれはいったい何だったのだろうか。

他には、当時の歌番組で安室奈美恵withスーパーモンキーズと共演したときの話などが面白かったが、安室ちゃん、まさかOPDのことを今でも覚えて…ないよな。
 
途中、元メンバーの大山姉妹や、観客席にいたTPDメンバーが壇上に上がり、ゲストトークで盛り上がる。

そういえば5年前に行われたユッコのソロライブのときにも、木原さとみがゲストで登場したが、現役時代にほとんど接点がなかったにもかかわらず、40歳を過ぎてから互い家を行き来する飲み仲間になったというのだから、TPDとOPDというのも、また不思議な関係である。

個人的には上田と八木田が同じ壇上にいるという状況に、めまいがするような感動を覚えた。

2部は、この日の来場者がメンバーに書いた質問用紙を読みながらトークが進行する。

パラパラと用紙をめくりながら、どれを読むか吟味するメンバー達。

「何かこれスゴイで」と言ってユッコが読んだ最初の質問用紙。

【当時、NGK周辺での入り待ち出待ち、さらには駅待ち、あげくの果てには自宅に行ったり、電話をかけたりと、いま考えるとムチャクチャなことをやってましたが、正直、ムカついてませんでしたが?(若気の至りとはいえ本当にすいませんでした。今は反省しています)】。

いつの時代でもろくでもない奴はいるものだ。

・・・つうかコレ書いたのオレじゃんwwwww

それに対してのユッコの答え。

「ムカついてました」。

さらにユッコちゃん「これ書いたの誰?正直に名乗り出て」。

過去の自分の罪に対する贖罪だと思い、正直に挙手して晒されましたwwwww

メンバーから総がかりで「よお調べたな」、「何で新幹線の時間とかわかるん?」
とか、ほとんど公開処刑にされたが、当時は個人情報とかダダ漏れだったし、頑張ればどうにかなることも少なくなかった。

一応、その場で慈悲深いユッコの赦しを得て、無罪放免になったが、これだけは言っておく。これは決して自分一人だけの案件ではなく、当時、オレを含めたOPDファンがさんざんやらかしたことに対し、自分なりに懺悔の意味をこめて書いたものだ。

あの時代にOPDのファンがやらかしたことに比べたら、昨今の厄介なんてカワイイものではないだろうか。もっとも今の時代だったら、普通に出禁か場合によっては警察沙汰になってるだろうけどwww

自分のやってきたことを決して正当化するつもりはないが、あの頃は今のようなSNSも接触商法もない時代。メンバーに近づくには、そういう行動をとるしかなかった。

21世紀の接触商法はアイドルとヲタクの距離を縮めたが、同時にそれはアイドルを物としてしかみないヲタク、ヲタクを金としてしかみないアイドルという、いびつな関係を作り上げてしまったようにも思える。

そうやって考えると、あの時代のアイドルとヲタクには、良い意味でも悪い意味でも、今よりもっと血の通った人間同士の付き合いがあったような気がする。

さて、前回のリユニオンのとき、F/UNITの5人は全員独身だったが(ただしバツイチ1名)、今は5人中4人が既婚者。さらにいえばそのうち3人に子供がいる。これがきっと10年という歳月なのだろう。

前に上田が結婚するという話をきいたとき、仲間内で「誰か式場行って、ダスティン・ホフマンみたいに花嫁のこと強奪してこい」なんて冗談めかして言ってたけど、内心は「上田よかったじゃん。結婚おめでとう。幸せになれよ」というのが皆の本心だった。

5年前のユッコのソロライブのとき、赤ちゃんを抱っこした文乃が客席にいるのを見て、思わず胸が熱くなった。

今回のトークライブでは行き遅れている稲葉のあっちゃんが、既婚メンバー達からいろいろ突っ込まれていたが、次回の開催は稲葉貴子の結婚記念を兼ねてということなので、ここは是が非でも彼女には嫁に行ってもらわねばなるまい。

それにしても、つくづく不思議なグループだなと思う。

いわゆるヒット曲があるわけでも、アイドル史に残るような実績を築いたわけでもないのに、こうして10年ぶりにイベントを開催しても、どこからともなく昔のファンが集まってきて盛り上がる。

そして、なぜ彼女達は25年経った今も、アイドルとして我々を魅了することが出来るのか。

この答はきわめて簡単である。

つまり我々が、今でもOPDのことが好きだからだ。

我々が彼女達を好きでいる限り、彼女達は永遠にアイドルとして輝き続けることが出来る。

きっとこれから先もこの気持ちはずっと変わることはないだろう。

きっとまた会えるに違いない。

それが5年後なのか、10年後なのかわからないけど、そのときは皆いくつになっているだろう。








みーことあやのんの卒コンがすでに終わってしまったが、その前に先週行われたアンジュルムとアップアップガールズ(仮)のツーマンライブのリポートから。

去年の7月に赤レンガ倉庫で行われたアイドル横丁で、とても印象深いシーンがあった。

それはエンディングで出演者全員がステージからはけていくときに、あやちょと佐保ちゃんがすごく仲良さそうに一緒に観客席に手を振りながら舞台裏に去っていったシーンである。

当時のことなど知りもしないくせに「あやちょと佐保ちゃんはエッグ時代から仲良しだったよなあ」などと在りし日のハロプロエッグを夢想し、それはとてもほっこりとするシーンだった。

さらにいえば、その日のメインステージのトリを務めたアンジュルムのライブを、出番を終えたアプガのメンバーが関係者エリアで振りコピをしながら嬉しそうに観ていたのをよく覚えている。

そのときはまさか両者のツーマンライブが実現するなんてことは夢にも思っていなかったが、今回のライブは「アンジュとアプガが一緒にやったら面白いだろうな。まあ無理だけど」とヲタクの飲み会での雑談レベルのことが現実に起こったという意味でも画期的なイベントだった。

開演前から場内は異様な熱気に包まれ、とにかくやたら暑い。仮Tを着ている客が目立つが、自分のまわりはアンジュルムの客のほうが多かったように思う。

対バンといっても客席内のヲタ同士に物々しい雰囲気は皆無で、これはアンジュは勿論だがアプガも源流を辿っていけばハロプロに帰結していくわけで、同じDNAを持っている同胞のような意識が互いに働いていたのだろうか。

ステージが暗転しライブがスタートする。

「次々続々」のイントロが聞こえ、下手側からアンジュルムが、上手側からアプガが登場する。

やがて「次々続々」にオーバーラップするように「upper rock」が聞こえてくる。いわゆるマッシュアップというやつだ。

BPMの数値が二曲とも殆ど同じなのでこういった手法が成立するのだが、「次々続々」を歌うアンジュルムの横で「upper rock」を踊るアプガの対比が不思議な興奮を喚起する。

やがて攻守が入れ替わるように、今度はボーカルパートが「upper rock」に移行し、その横で「次々続々」をアンジュルムが踊る。

カッコイイという言葉以外に出て来ない。

ひょっとしたらこれはとんでもなく良いライブになるのではないだろうか。

その後、アンジュとアプガがそれぞれ30分程度のライブを行う。

アンジュルムのライブを観るのが、いつ以来なのかまったく思い出せないが、近年の代表曲を中心とした安定のセットリストでこれまた良い内容だった。 

これだったらアプガ目当てで観に来た人もわりと楽しめたのではないだろうか。

後攻のアプガも取り立てて普段と変化のある内容ではなかったが、場内の半数がアンジュの客だということを考えれば、とりま妥当な選曲だったと思う。

そして問題は後半のコラボメドレーである。
 
グループの人気だけで言えばアンジュルムに遠く及ばないアプガだが、両者がステージ上で相対すると、意外なことに位負けしているという感じはまったくしない。 

これはアンジュの殆どのメンバーよりもアプガのほうが、アイドルとしてのキャリアが長く、また年齢が上であるということからくるものだろうか。

アンジュ+アプガの総勢17人による「パーリーピーポーエイリアン」からコラボメドレーはスタートしたのだが、その時点で自分の興奮はマックスに達し、その後も硬軟をうまく織り交ぜながらステージは進行する。

これまでにもアプガは相当数のコラボを行い、自分もかなりの回数を観てきたつもりだが、その中でも最高傑作だと思ったのが、二年前にTIFで行われたLinQとの共演だった。

今回のアンジュルムとの対バンはLinQのときに起きた化学反応と性質は違っていたが、中身の濃さではそれに匹敵するか、あるいはそれ以上の内容だったと断言したい。

アンジュルムにしてもアプガにしても、この手のコラボに有りがちな相手に対する無用な気遣いがなく、観客以上に自分達も楽しんでいるのだということが観ていてすごく伝わってきた。やはりこれはアンジュの古参メンバーとアプガとが10年来の知り合いだということが大きい。

「夢見る15歳」でのあやちょと佐保ちゃん、「バレバレI LOVE YOU」でのタケもといかみこの投げキッスなど見せ場はたくさんあったが、もっとも多幸感に満ちていたのは本編ラストの「スキちゃん」だろう。 

コンサートの最初に感じた、とんでもなく良いライブになったことを実感しながら、自分は力の限り大声でスキちゃんコールを叫んだ。