LOFT9 Shibuyaという会場には、今回初めて行ったのだが、入場者の列を見たとき、そのあまりの年齢層の高さに、最初、本気で会場の場所を間違えたのかと思った。十代、二十代は言うには及ばず、三十代ですら皆無のように思える。
当時の知り合いが自分のことを見つけて声をかけてきてくれたが、一瞬、誰だか分からなかった。まるで何十年かぶりに地元の同窓会に出席したような気分だ。
2008年に、OPDが期間限定で復活ライブを行ったときユッコが言った「OPDは解散していない」という言葉に嘘はなかった。あれから10年、彼女達は再びファンの前に戻ってきてくれた。
題してOPDトークライブ「25年目の夜だから~喋るで!歌わへんで!」
歌わへんのか。まあいいや。
来場者数はざっと100人くらいだろうか。上手側のVIP席のようなところには、TPDのメンバー(木原/八木田/櫃割)の姿も見える。
ステージの上にはテーブルと椅子が用意され、その背後に設置されたモニターには、10年前に行われたリユニオンコンサートの映像が流れている。何かその映像を眺めているだけで、恍惚とした気分に包まれていく。
開演時間になり、場内の照明が落とされ、メンバーが登場する。
現在のメンバーの年齢と観客の年齢、そして着席で観覧するという今回のイベントの形式を考えると、拍手だけで静かに迎え入れるのが当然のように思われるが、メンバー登場と同時に「アヤノーーーッ」「うえだーーーっ!」といった25年前とほとんど同じような歓声が客席からあがる。
当時のアイドル現場というのは、昨今のアイドル会場のような画一的なコール(mix等)はなく、ヲタクが勝手に推しの名前を叫ぶという応援の仕方がデフォだった。
今回、その前時代的な声援をきいたとき、ここにいる連中、どんだけ年寄りなんだよと思ったw
ステージ上に登場した大阪パフォーマンスドールのフロントメンバー。
F/UNIT(古谷/上田/中野/稲葉/武内)の5人。
彼女達を見ても不思議なことに「懐かしい」という感情はあまりわかない。同時に加齢によるヴィジュアル的な衰えをほとんど感じさせないのは、さすが元アイドルだと思った。
1部のトークの内容はOPD結成から活動休止に至るまでの軌跡を、年表を見ながら振り返るというもの。
ほとんどの出来事をリアルタイムで覚えていたが、初めて知った事実というか裏話もいくつかあった。
中でも衝撃的だったのは、オーディションを経て、OPDのメンバーが正式に決まった後に、一部のメンバーがその場で強制的に髪の毛を切らされたということ。
もちろん専門的な技術を持ったヘアデザイナーがカットしたのだと思うが、当時の推しメンから「OPDに入るまではロングだったのに切らされた」みたいな話を聞いたことがあり、なるほど、そういうことだったのかと。
あとは94年にOh!ゆれ大阪やNGKスタジオで行われていたウィークリーライブについてのメンバーの言及も興味深かった。
あまりにも意味不明な内容で、多くの観客が思考停止に陥ったあのときのライブは、今ではOPD史に残る最大の汚点とされているが、実はメンバー自身も観客と同じ気持ちでステージに立っていたということ。
メンバーが画用紙で作った自作のお面を頭につけて、学芸会ばりの寸劇を行い、それを観客が呆然と見つめているという悪夢のような世界。いま思うとあれはいったい何だったのだろうか。
他には、当時の歌番組で安室奈美恵withスーパーモンキーズと共演したときの話などが面白かったが、安室ちゃん、まさかOPDのことを今でも覚えて…ないよな。
途中、元メンバーの大山姉妹や、観客席にいたTPDメンバーが壇上に上がり、ゲストトークで盛り上がる。
そういえば5年前に行われたユッコのソロライブのときにも、木原さとみがゲストで登場したが、現役時代にほとんど接点がなかったにもかかわらず、40歳を過ぎてから互い家を行き来する飲み仲間になったというのだから、TPDとOPDというのも、また不思議な関係である。
個人的には上田と八木田が同じ壇上にいるという状況に、めまいがするような感動を覚えた。
2部は、この日の来場者がメンバーに書いた質問用紙を読みながらトークが進行する。
パラパラと用紙をめくりながら、どれを読むか吟味するメンバー達。
「何かこれスゴイで」と言ってユッコが読んだ最初の質問用紙。
【当時、NGK周辺での入り待ち出待ち、さらには駅待ち、あげくの果てには自宅に行ったり、電話をかけたりと、いま考えるとムチャクチャなことをやってましたが、正直、ムカついてませんでしたが?(若気の至りとはいえ本当にすいませんでした。今は反省しています)】。
いつの時代でもろくでもない奴はいるものだ。
・・・つうかコレ書いたのオレじゃんwwwww
それに対してのユッコの答え。
「ムカついてました」。
さらにユッコちゃん「これ書いたの誰?正直に名乗り出て」。
過去の自分の罪に対する贖罪だと思い、正直に挙手して晒されましたwwwww
メンバーから総がかりで「よお調べたな」、「何で新幹線の時間とかわかるん?」
とか、ほとんど公開処刑にされたが、当時は個人情報とかダダ漏れだったし、頑張ればどうにかなることも少なくなかった。
一応、その場で慈悲深いユッコの赦しを得て、無罪放免になったが、これだけは言っておく。これは決して自分一人だけの案件ではなく、当時、オレを含めたOPDファンがさんざんやらかしたことに対し、自分なりに懺悔の意味をこめて書いたものだ。
あの時代にOPDのファンがやらかしたことに比べたら、昨今の厄介なんてカワイイものではないだろうか。もっとも今の時代だったら、普通に出禁か場合によっては警察沙汰になってるだろうけどwww
自分のやってきたことを決して正当化するつもりはないが、あの頃は今のようなSNSも接触商法もない時代。メンバーに近づくには、そういう行動をとるしかなかった。
21世紀の接触商法はアイドルとヲタクの距離を縮めたが、同時にそれはアイドルを物としてしかみないヲタク、ヲタクを金としてしかみないアイドルという、いびつな関係を作り上げてしまったようにも思える。
そうやって考えると、あの時代のアイドルとヲタクには、良い意味でも悪い意味でも、今よりもっと血の通った人間同士の付き合いがあったような気がする。
さて、前回のリユニオンのとき、F/UNITの5人は全員独身だったが(ただしバツイチ1名)、今は5人中4人が既婚者。さらにいえばそのうち3人に子供がいる。これがきっと10年という歳月なのだろう。
前に上田が結婚するという話をきいたとき、仲間内で「誰か式場行って、ダスティン・ホフマンみたいに花嫁のこと強奪してこい」なんて冗談めかして言ってたけど、内心は「上田よかったじゃん。結婚おめでとう。幸せになれよ」というのが皆の本心だった。
5年前のユッコのソロライブのとき、赤ちゃんを抱っこした文乃が客席にいるのを見て、思わず胸が熱くなった。
今回のトークライブでは行き遅れている稲葉のあっちゃんが、既婚メンバー達からいろいろ突っ込まれていたが、次回の開催は稲葉貴子の結婚記念を兼ねてということなので、ここは是が非でも彼女には嫁に行ってもらわねばなるまい。
それにしても、つくづく不思議なグループだなと思う。
いわゆるヒット曲があるわけでも、アイドル史に残るような実績を築いたわけでもないのに、こうして10年ぶりにイベントを開催しても、どこからともなく昔のファンが集まってきて盛り上がる。
そして、なぜ彼女達は25年経った今も、アイドルとして我々を魅了することが出来るのか。
この答はきわめて簡単である。
つまり我々が、今でもOPDのことが好きだからだ。
我々が彼女達を好きでいる限り、彼女達は永遠にアイドルとして輝き続けることが出来る。
きっとこれから先もこの気持ちはずっと変わることはないだろう。
きっとまた会えるに違いない。
それが5年後なのか、10年後なのかわからないけど、そのときは皆いくつになっているだろう。