今年から湾岸スタジオの屋上には、入場制限がかけられたらしく、屋上に上がっても例年ほどの人はいなかった。

今、ここにいる観客というのは、自分を含めて、しず風 & 絆を観るためだけに列をつくり、エレベーターに乗って屋上まで上がってきた人達である。

つまり、これが今年のAZURE STAGEの特徴であり、この条件では、通りがかりのTIF来場者が「たまたま、しず風のライブを目撃する」というタイミングは、ほぼ絶対的に起こり得ないことになる。

メンバー側からしてみたら、見慣れた顔が客席に沢山いるというのは、ある意味すごく心強いのかもしれないが、自分が考えるにせっかくのフェスなのだから、不特定多数の大勢の人の目に触れる場所でライブが行えたら、もっとよかったのにと思う。

そうやって考えると、前夜のSMILE GARDENが雨天中止になったことは、返す返す本当に残念な出来事だった。

前日の憂さを晴らすかのように、太陽の真下で熱のこもったパフォーマンスを繰り広げるしず風 & 絆のメンバー達だが、TIF2013のラストステージにおいて、ついにIロックを解禁し、お馴染みのカバー曲を披露したのには高まった。

とくにアンジーの「天井裏から愛をこめて」のしず風バージョンを聴いたのは、自分の寂しい参戦歴の中でも、初めてだったような気がする。

同時に、メンバーが脚立によじ登って客を挑発したり、ステージ上から観客席に放水したりしているのを目の当たりにすると、しず風のライブに参加しているんだという実感がわいてくる。

そういう意味でも、午前中のHOT STAGEのライブよりも、こちらのほうが、はるかに本来のしず風のライブに近いような気がした。

今回、湾岸スタジオの屋上ではジャンプ行為は禁止されており、メンバーがライブ中のMCで、予めそのことを観客に訴えると、一人として跳ぶ人間がいなかったのには感心した。(他のグループの出演時には、そんな注意事項など無視して跳んでいる客が多数いたらしい)

メンバーも観客もメチャクチャをやっているように思えて、実はそのへんのルールやマナーを守るのが、しず風ヲタの特徴であり、後述するが今回のTIFでは、観客のモラルやマナーについて、問いたくなるような場面がいくつかあった。そうした中で、しず風ヲタの民度の高さは素晴らしいと思う。

しず風終了後は、遅い昼食を取りにDiver Cityまで行くが、どこも大混雑をしており、正直、メシを食う時間すら惜しいのだが、ここで食べておかないと終演時まで食べている時間はないと思うので、とりあえず急いで食することにした。来年からは、いざとなったらメシを持参するのもアリかもしれない。

昼食後、物販エリアをぶらぶらしていると、前日、素晴らしいパフォーマンスを披露したハイパーヨーヨのメンバーが自分等のブースにいたので、とりあえず少しだけ接触して、前夜の感想を述べたりした。

出来れば、この日もハイパーのライブは観たかったのだが、他とどうしても時間が被ってしまい、泣く泣く断念する。

そのあとは、アプガ待機のために、少し早めにヴィーナスフォート内のVENUS CHURCHへと移動したのだが、自分が現場に到着すると、ちょうどKAGAJO☆4Sのライブが始まったところだった。

このグループは初見だが、スターダスト所属とは思えないような地下アイドル臭さが漂うのは、何故だろう。

考えてみると、今年のTIFはエビ中が出演していないので、その代替えとしてスタダからKAGAJO☆4Sが送り込まれてきた可能性もある。ただ正直いって、ほとんど記憶に残っていない。

次に登場したのが、怪傑トロピカル丸。怪トロを観るのは今年初めてだが、ひょっとしたらこのグループ、知らぬまにメンバーを増員したのだろうか。以前と比べて人数が多いような気がする。

怪トロもこれといったインパクトはないが、それでも安定したパフォーマンスを提供する点は、評価したい。

続いて放課後プリンセスが登場。

このグループも一年半くらい前にどこかで観た覚えがあるが、当時の記憶は、ほとんど残っていない。

怪トロが終わったとき、前方にいた観客が、一気に捌けたので、いきなり下手側の最前列をゲットする。とはいっても、別に自分がいちばん前で放プリを観る理由などどこにもないわけで、後ろの人達に「放プリンのファンの人、前へどうぞ」と声をかけたのだが、とくに反応ナシ。

結局、いちばん前で観ることにした。

まあ、一言でいうとAKBを模倣したような典型的な、グループアイドルということになるのだろうが、もうこのパターンは、自分の好みのメンバーがいたら、それにハマれば、それでいいのではないだろうか。

放プリ終了後は、そのまま下手最前でアプガのライブを観る。

ここはステージも狭く、また今回のアプガは出演時間も短いので、ほとんど新曲のリリイベみたいな、あっさりした内容のライブだったが、それでもやはりいちばん前で、アプガが観れたので、かなり満足した。

このあとのアプガは、HOT STAGEでのラストステージを残すのみとなり、VENUS CHURCH終了後、色とりどりの(仮)Tシャツ軍団が、百人以上で、ヴィーナスフォートの店内を練り歩き、Zeppまで移動する様子はかなり異様だった。

世の中には、いろんなアイドルのヲタTがあるけど、(仮)Tほどシンプルで、かつインパクトのあるデザインというのは、稀な存在だと思う。ヴィーナスフォートに買い物に来ていた一般人とか、(仮)T軍団の大移動を見てどう思っただろうか。

Zepp Tokyoに到着して、間もなくするとBiSのライブが始まった。

今回のTIF2013で、自分が観てきたすべての演者の中で、盛り上がりかたが、いちばんスゴかったのはBiSのような気がする。

あたり構わず、モッシュをしたり、リフトをしたりといった行為は、どうかなと思うが、この沸きかたは一過性のものではなく、間違いなく「いま、キテいるアイドル」という勢いを感じる。

プールイのとぼけたキャラクターも面白いし、今年から来年にかけて、さらに勢いを増してきそうな予感がする。

そしてBiSが終了し、いよいよアップアップガールズ(仮)のTIF2013におけるラストステージが始まろうとしていた。

最終日のメインステージで大トリ前の大役を、アプガが務めているという事実だけで、ほとんど目頭が潤んでくる。

そして、このライブで、ようやくアプガのいつものライブのオープニングに使用される「OVERTURE(仮)」が場内に鳴った。

おそらく時間の関係でだと思うが、今回のTIFでは一度もこの「OVERTURE(仮)」が使用されておらず、若干の物足りなさを感じていたのだが、やはりアプガはこの曲に合わせて登場しなくてはしっくりこない。

このオープニングに合わせて、ステージ背後の扉が左右に開き、メンバーが登場するのだが、このシーンが本当にカッコよく、観ていて本気でシビれた。

この夏、彼女達は究極の他流試合といってもいいROCK IN JAPAN FESTlVALとサマーソニックでの出演が控えているが、この登場シーンをみていると、これから始まる修羅の道へ、死に急ぐ行者のようにもみえ、ジーンとくる。

前日のSMILE GARDENで行われたライブもすごく良かったが、このHOT STAGEでのライブも、それに匹敵する充実した内容だった。

最近のシングル曲を中心に据えたセットリストに、TIF2013のラストステージにして、ようやくアイドル史に残る"跳び曲"である「お願い魅惑のターゲット」を披露。この曲で会場中が跳んでこそ、アプガのライブだ。

そういえばアプガのライブ中に、最前列付近でアイドリンガーとアプガヲタと研究員(BiSのヲタ)による小競り合いがあったと聞いたが、アプガヲタと研究員が対バンなどで鉢合わせになっても、いざこざなど起こったためしがないのに、そこにアイドリンガーが加わることによって揉め事に発展したということは、アイドリンガーがトラブルの原因をつくったのだろうか。

事実関係がよくわからないので、あまりいい加減なことは言えないが、いろんな意味で、まだまだ未熟なアイドルフェスというものが、今後、ロックフェスのように成熟していくためには、それぞれのヲタの民度というものが、よりいっそう問われてくると思う。

フェスにおけるマナーやモラルについて、アイドルファンはもう一度、真剣に考えてみる必要があるのではないだろうか。

そしてTIF2013 HOT STAGE最終日の大トリは、もちろんアイドリング!!!である。

意外なことに、TIFでアイドリング本体のステージを観るというのは、これが初めてのことである。

TIFのステージ上にいるとアイドリングが、何故か大物に見えてくるのが不思議だが、こういうのを内弁慶とでもいうのだろうか。

また、このライブが行われる数時間前に新メンバーが加入し、それが5人いるということは人伝に聞いていたが、まさか、ここでお披露目をするとは思わなかった。

何だか名前がどれも似ていて紛らわしいのと、パッと見た印象だと、5人ともあまりカワイイとは思えない。

新メンバーの一人が、楓ちゃんの妹だというのを聞いたとき、自分の感覚だと、違うグループに入ったほうがアイドル史的には面白いのになんて思ったりもした。

あとはさくら学院の華ちゃんとのコラボも観れたし、それなりにお得感のあるステージだったのではないだろうか。

このあとはグランドフィナーレで、現場に残っているアイドルがいっせいにステージ上に集まり、ひとまず今年のTIFも終了した。

そして、今年から設けられたスペシャルアンコールではアイドリングの未成年チーム、アフィリアサーガ、Aell、アプガ、BiSらが、各一曲づつを披露した。

当然、この中の格でいうと、アイドリングがオーラスで締めるんだろうなと、誰もが考えると思うが、中学生がメンバーに在籍している関係なのか、わりとあっさり最初のほうに出てきて、「サマーライオン」とか誰も望んでいないような曲を歌って、引っ込んでしまった。

それと同時に場内にいたアイドリンガーは、他のアイドリングメンバー目当てに、SMILE GARDENのフォークジャンボリーアンコールへと向かって行った。

ところが、このまま、ここに残った人間達こそが、TIF2013の本当の勝ち組だったと自分は思う。

驚いたことに、このスペシャルアンコールの最後に登場したグループはBiSだった。そして曲は代表曲の「Nerve」。

自分自身にとって、今年のTIFでもっとも印象深かった曲が、またもやここで歌われたわけだが、歌が二番に差し掛かったところで、アフィリアサーガ、アプガ、Aell、そしてアイドリングのメンバーまでもが、みんな一斉にステージに出てきて 、BiSのメンバーを囲い、右へ、左へと大盛り上がり。

当然、客席も死ぬほど盛り上がり、この沸きかたを見たら、誰だってTIFが来年以降も、継続して欲しいと願うに違いない。

TIF2013が終了した。アイドル三昧の二日間。

毎年、思うのだが、この祭りが終わったあとの寂しさは何だろうか。

そして、また来年もきっと参戦するぞと心に誓い、オレはお台場をあとにした。
DOLL FACTORYでのしず風 & 絆というと、生バンドを従えて、Iロックを展開した昨年のステージもまだ記憶に新しいが、今年は早めに会場内に待機して、真ん中の前から3~4列目あたりのポジションをキープした。

オープニングの「つくしん暴」から、いつものテンションで飛ばすしず風 & 絆のメンバー達。

一曲目が終わって、さあこれからというところで、いきなり「次が最後の曲になります」って。

二曲で終わりとかwww

ほとんどリハーサルの延長のノリのようなライブだったが、20時からのSMILE GARDENでのライブを楽しみにしていて下さいと、あくまでも本番は、次のステージだということを暗に匂わせ、メンバーは舞台袖に去っていった。

あの雰囲気から察するに、これは夜の野外ステージで何かありそうだなという期待が何となく高まってくる。

しず風終了後は、もうひとつの本命であるアップアップガールズ(仮)を観るために、湾岸スタジオを出て、野外のSWILE GARDENへと向かう。

バクステ外神田一丁目のライブが終わると同時に、人混みを掻き分けながら、前へ前へと突き進み、下手の4~5列目あたり確保した。

まわりを見ると、やはり(仮)Tシャツを着た人が多い。自分も(仮)Tを持ってきてはいたが、着替えている暇もなく、面倒なのでしず風Tのまま参戦することにした。どちらにしても、あと小一時間でしず風も出てくるのだし、まあいいかなと。

一年前に、ここSMILE GARDENで初披露された「サイリウム」からライブは始まった。

すでに、外は日が落ちて、あたりは暗くなっていたので、客席に灯るサイリウムがとてもキレイに映る。そして、そのおびただしい光の数は、昨年とでは比べ物にならないくらいの量だった。

TIF後にメンバーが語っていたが、今年のSMILE GARDENでのアプガのライブには、昨年の4倍の観客が詰めかけていたらしい。

また、昨年まではTIF会場で他のグループのファンとスレ違っても、(仮)?何それ?みたいな反応だったのが、今年は、あっアプガだ!とようやく言われるようになったと、後日、ブログに書いてあった。

CDのセールスやライブの動員数以上に、この一年間でアプガの知名度は確実に上がってきているのだろう。

MCを挟んで、曲は「チョッパー☆チョッパー」、「アッパーカット」と続き、ラストは「サマービーム」と、ひたすら盛り上がるセットリストが組まれたのだが、まだこの時点では、お台場の夜空に暗雲が立ち込めていることなど、知るよしもなかった。

そしてアプガの次に登場したのは小桃音まい。

アプガ終わりと同時に、さらにステージ近くへと進んでもよかったのだが、まいにゃのヲタ以外が、あんまり前で観ているのもフェスのモラルに反すると思ったので、最下手の柵に寄り掛かって観ることにした。

まいにゃのライブが始まり、しばらくすると、何処からか冷たい風が吹いてきた。

天気予報では、この日の関東甲信越地方は午後から大雨の予報が出ていて、幸いにもお台場周辺は、この時間まで好天に恵まれていたのだが、やはり予報通り大粒の雨がポツポツと降ってくる。次第にその勢いは増していき、遠くでは稲妻が光った。

このまま行けば、このあと出番のしず風 & 絆のライブは間違いなく豪雨の中で行われることになるだろう。

こちらは別に、雨や風に打たれることなど何とも思っていないし、むしろ自然が演出した予想外のアクシデントの中でしず風 & 絆は、どういうパフォーマンスを行うのだろうかと、まいにゃのステージを観ながら、そんなことを考えワクワクしていた。

まいにゃの歌が3曲目に差し掛かったところで、ステージ上にマイクを持ったスタッフが飛び出してきて、ライブの一時中断を説明する。

おいおい、まだ本降りにもなってないのに中断とか早いだろうよ。

客席からは当然、不満の声が上がり、何となく場内にはヤバい雰囲気が立ち込めたが、すかさず小桃音まいがステージ上から客席に向かって謝ると、騒ぎは沈静化する。

湾岸スタジオの建物内に入り、雨宿りをしながらライブの再開を期待していたが、雨はいっそう激しくなり、ライブが一時中断から中止になるのも時間の問題のような気がしてきた。

しばらくするとTwitter上に、この日の野外ライブはすべて中止になったと発表される。

これで完全に詰んだ。初日、いちばん楽しみにしていたしず風 & 絆の野外でのライブは幻と化した。

中止が決定したときはアタマにきたが、今になって冷静に考えてみると、やはりそれは安全面を考慮すると、運営サイドとしては、やむを得ない判断だったのではないかと思う。

来年以降も継続的にTIFを開催し、アイドルの祭典として本当の意味で定着させていくためには、出演者、および来場者の安全面での対策は絶対条件である。

しず風が観れなかったことは残念だったが、万が一のことを考えたら、結果的には、これで良かったのかもしれない。

雨が段々と小降りになってきたので、Zepp Tokyoで行われているIDOL CLUB NIGHTへと移動することにした。

ここで行われている催しの特長は、出演者が(おそらく)全員、成人していることだ。こういう雰囲気も悪くはない。

最初に観たのは、掟ポルシェがDJでフロアーを盛り上げて、バニラビーンズの2人が目のまわりを白く塗り、掟ポルシェ風のメイクで掟と共演していたユニットで、その名も掟ビーンズ。バカバカしいけど面白かった。

そして、その次に登場したのがハイパーヨーヨだったが、これが凄かった。

いつものように「UWFメインテーマ」で登場したハイパーのメンバー。

そして一曲目に歌われた曲は、おそらく本邦初公開だと思うが「ハイパーズのテーマ」。

忌野清志郎の覆面バンドであったタイマーズのカバーだが(正確にはタイマーズもモンキーズのカバーになるけど)、ハイパーのメンバーも、タイマーズと同じようにヘルメットにグラサンという出で立ち。また曲の途中で、同じくタイマーズの「ロックン仁義」にインスパイアされたであろう台詞が出てきた。

これには、少し説明を要するが、「ロックン仁義」という曲には、歌の途中で清志郎が渡世人ばりに「古いやつだと、お思いでしょうが、ちょいと言わせておくんなさいよ…何をうたってんだか、よくわかんねえ、英語だかなんだか、聞き取れねえ様なサウンドばっかりでごせえやす…」と、当時の日本のロックシーンを風刺したような台詞がある。

対してハイパーは「誰が誰だかよくわかんねえ、歌ってんだか歌ってねえんだか、わかんねえような…」と現在のアイドルシーンをディスっているのだが、こういう曲を堂々と歌えるところにハイパーヨーヨの不思議な立ち位置があると思う。

昨年、披露した氣志團をオマージュした歌も面白かったが、今年のタイマーズもかなり笑えた。

さらに曲は、最新曲の「はなびーと」へと変わるのだが、これがまた実に不思議なグルーヴというか躍動感を持った曲で、元ネタはインドネシアで生まれた「FUNKOT(ファンコット)」というジャンルのダンスミュージックらしいが、何度も聴いているとクセになってきそうな音だ。

そのまま、ファンコットのリズムが洪水のように続き、最後は「ティッケー大作戦」で終わったのだが、ハッキリ言うと、自分が、この日、目撃したすべてのアイドルのパフォーマンスの中で、オレはこのときのハイパーヨーヨがいちばん良かった。繰り返すが、本当にすごいライブだったと思う。

そして、ハイパーヨーヨの次に登場したのがBiSである。

今年の1月にDiver Cityで観て以来ということになるが、あのときの悪い印象が拭いきれず、正直言ってほとんど期待していなかったのだが、オレは少し反省をする必要があるかもしれない。

率直な感想を言うと、半年ぶりにみたBiSのライブはすごくよかった。いや、それどころか一昨年のえび中や、去年のアプガのような「キテる感」がステージ上のパフォーマンスからみなぎっていて、それに比例して場内の盛り上がりも凄かった。

あまり詳しいことは知らないが、今年の始めに見たときから、メンバーが何人か入れ替わったように思う。

このステージでは、持ち時間があまり長くなかったが、翌日も、このHOT STAGEでアプガ待機中にBiSのライブは観る予定なので、次の日に向けても気分が高まってきた。

とりあえず、これで自分の初日のプログラムは終了である。

帰宅時間は普通に深夜になり、二日目に備えて早く眠りたかったが、それでも就寝したのは夜中の3時頃だろうか。

翌朝は早起きして8時頃、Zepp Tokyoに到着するも、すでに200人くらいの人間が会場の外では列をつくっていた。

何といっても、この日の午前中には、自分の中でも今回のフェスの大本命だと思っているしず風 & 絆のHOT STAGE登場が控えているので、念には念をいれて早めに現場にきたのだ。

いちばん怖れていたのは、午後から出演するHKT48の客が朝から大挙して押し寄せてくることだったが、自分の前に並んでいる客に、HKTの客がそんなに大勢いるようには思えず、むしろアイドリングのおまいつ客のほうが、沢山いるように感じた。

ようやく開場時刻になり、下手5~6目あたりの位置を確保する。

この日のトップバッターは福岡からやってきたLinQの選抜チーム。

LinQは、この日が初見だったが、イメージとしてはAKBのまがい物みたいなグループを想像していたのだが、それは半分は当たっているように思えた。

しかし、それ以上に曲のクオリティが高くて、ライブの中身も楽しめた。

そしてしず風 & 絆である。

実は前日の夜に、中止になったSMILE GARDENの振り替え分が、この日の13時から湾岸スタジオ屋上のAZURE STAGEで行われることが急遽決定し、本来ならば、彼女達にとってTIF2013のラストステージになるはずだった、このHOT STAGEのライブが、どこか中途半端な位置付けになってしまった印象がある。

また、これだけ大人数の観客の前で歌うことも、彼女達にとっては、初めての経験だったのかもしれないが、結論を急げば、このハコのデカさが、普段のしず風のパフォーマンスに比べて、今回のライブを精彩を欠いたものにしてしまった原因だったともいえる。

それは、いつものように柵を乗り越えて客席に降りてくるくるわけでも、口に含んだペットボトルを観客に噴射するわけでも、客の頭上をクラウドサーフするわけでもなく、非常に「よそゆき」の、行儀の良いライブを行っているようにしか、オレには思えなかった。

それはインディーのプロレスラーが、メジャー団体のリングに上がって試合を行うと、場外乱闘や反則行為を行わなくなるのとも、どこか似ていたような気がする。

今回のTIFでは2曲ライブに雨で公演中止、さらにはよそゆき顔の行儀の良いライブと、どうもしず風 & 絆に対してモヤモヤしてしまうことばかりだが、この公演後も直ちに湾岸スタジオに向かい、屋上のAZURE STAGEで昨日の振り替え公演を観なくてはないない。

聞いたところによると、前日はエレベーターが一台故障し、屋上への輸送がスムーズにいかなかったらしいので、念のために早めに並んで屋上で待機することにした。

一年ぶりに湾岸スタジオの屋上へと上がったが、いくら暑いとはいっても、この程度の暑さなど、昨年の灼熱地獄を経験しているオレに言わせれば、避暑地のようなものである。

ちょうど、自分が到着した時間にも、どこかのアイドルグループがライブを行っていたが、その音をバックにして屋上から下に広がる海を眺めているだけでも、幸福な気分に浸れる。

しばらくするとしず風 & 絆のメンバーが屋上に到着し、あとは彼女達の出番を待つだけとなった。

(つづく)
一年に一度のアイドルの祭典、TOKYO IDOL FESTIVALに今年も参戦してきた。

TIFの妙味というのは、まず何といってもタイムテーブルとにらめっこしながら自分で予定を組み立てるところにあり、今年も本番の一週間くらい前から、現場でどういう回りかたをするのかを、一人で吟味していた。

で最終的にはアップアップガールズ(仮)としず風 & 絆の二つを軸にして、時間をみて東京女子流、BELLRING少女ハート、Negicco、ハイパーあたりが観れればいいかなという結論に至る。

TIFが何よりも画期的だった点は、大小のステージが何ヵ所にも設置され、同時多発的にライブを進行するという「フジロック形式」を、初めてアイドル現場に導入させたことではないだろうか。

それはTIF以前にも、ごく僅かに存在した対バン形式の「ジョイントコンサート」とは明らかに一線を画したものだった。

おのずと来場者は自分が観たいアイドルを決めてステージをハシゴすることになり、つまり一万人の来場者がいれば一万通りのメニューがそこには存在するわけで、これは観客の側が自らの意思によって観たいものを選択するという、今までのアイドルイベントにはなかった新たな形態をうんだといえる。

自らが選択するという行為は同時にヲタの感性を鍛えることにも繋がって行き、乱暴な言い方をすると、TIFというイベントを楽しめるか否かは、すべて自分の感性と判断力にかかってくるといえるのではないだろうか。


7月27日 TIF 初日。湾岸スタジオ前でチケットをリストバンドと引き換えた後、まずはリンダⅢ世を観るためメイン会場のZepp Tokyoへと向かう。

最新号の「ミュージックマガジン」のアイドル特集を立ち読みして知ったのだが、群馬県のブラジリアンタウンからやってきた、ブラジル人五人組という、何だかよくわからないプロフィールを持つアイドルグループである。

Zepp Tokyoの客の入りは満員とは言いがたかったが、それでもフロア内は結構な人で埋まっていた。自分を含めて、ここにいる観客の大半は、この日初めてリンダⅢ世を観るはずだ。なぜなら彼女達は今回のTIF2013が初めての東京遠征になるからである。

メンバーが登場した瞬間、奇妙な違和感を感じたのは、彼女達の存在がTIF現場において、どこか場違いな空気を醸し出しているからだろうか。

メンバーのルックスも南米基準で考えたらきっと美人には違いないのだろうけど、それをアイドルヲタの嗜好性に照らし合わせてみると、ちょっとみんな顔立ちが濃すぎるような気がする。

サンバの格好をしてバックダンサーを務めていたお姉さん2人組も日本人には見えなかったが、やはりブラジリアンタウンの住民か何かなのだろうか。

同様に柔道着を着たオッサンがステージに上がっていたが、あの格好はブラジリアン柔術か何かと関係しているのだろうか。さらに宇宙服を身にまとった人間もステージにいたが、あれはいったい何の意味があるのだろうか?

とにかく不思議なことがステージ上では繰り広げられ、それを見ている観客も戸惑いを隠せないといった様子である。しかし、そんなことはまるで意に介さず勝手に盛り上がるリンダⅢ世とそのバックダンサー達。

…とまあ、これだけ舞台の上と下とで温度差のあるライブというのも珍しいと思ったが、個人的にはセルジオメンデスの「愛のサンバ」が聴けたので、とりあえずは満足した。

でも、もう一度みたいかと聞かれたら、しばらくはいいかなという気もする。

リンダⅢ世終了後は、無銭エリアの野外ステージ、SMILE GARDENへアイドリング、女子流、さくら学院らによるコラボを観に行く。

昨年のTIFで、自分の中で観ていていちばん高まったのが、このコラボであり、今年も同様の演目が行われる以上、これは絶対に外すわけにはいかない。

去年のこのステージが神がかり的に良かったので、今年も相当に期待をしていたのだけど、残念ながら今回の内容は今ひとつと言わざるを得なかった。というよりも去年の内容が、あまりにも良すぎたために、それと比較してしまうとどうしても見劣りしてしまう。

救いだったのは、去年のような殺人的な暑さではなかったことだろう。このくらいの日照りと暑さが夏フェスにはちょうどいい。

その後は、すかさず湾岸スタジオ内のDOLL FACTORYへ移動する。

会場内に入るとBELLRING少女ハートがちょうど始まったところだった。

近年はBABY METALを筆頭に、表現方法にロックのテイストを用いたり、あるいは自らそれを標榜するアイドルグループがやたらと増えた印象があるが、ざっくりと分類するとベルハーも、その中のひとつだといえるだろう。

ところが、このBELLRING少女ハート、ロックはロックでも、その方向性がユニークで安易にヘビーメタルだパンクだといったわかりやすいロックのスタイルを模倣するのではなく、サイケとかプログレといった、小難しいロックの様式を取り込んでいる。ベルハーをプロデュースしている運営の名前がクリムゾン印刷というくらいだから、きっとそういうコンセプトのグループなのだろう。

曲によっては、ドアーズやヴェルベット・アンダーグラウンドを彷彿とさせるような重いナンバーもあり、それは現在のアイドルグループの中でも、かなり異色なサウンドである。

今回のTIFでは残念ながら、この回のステージしか観れなかったが、他の演者との時間調整がきけば、違う回のステージも観てみたかった。

ベルハー終了後に、遅い昼飯をとり、その後は物販スペースを徘徊する。

まずは、先日のTシャツサミットでも、なかなか気合いの入ったパフォーマンスを展開してくれた、ハイパーヨーヨのメンバーがブースにいたので接触しに行く。

相変わらずインチキ臭いグッズばかり販売しているのには笑ったが、サンバイザーと新曲のCDを購入。サンバイザーは日除けにちょうどよかったので、そのまま着用する。

その後、知り合いから握手券を貰ったのでアプガと握手しに行く。

アプガメンバーには接触をしに行っても、基本的にいっさい認知とかは求めていないので普通に握手して終わり。

結局、アイドルとの距離なんてものは、これでいいのではないだろうか。

あまり近付きすぎて認知とかされると、それはそれで面倒だし、結局、どれだけのめり込んでも、最終的に病むのはヲタ側なわけであって、それなら初めから一定の距離を保っていたほうがきっといい。少なくともアプガメンに関しては、今後も自分自身、このスタンスは崩さないでいこうと思っている。

しず風 & 絆の物販時刻もちょうどこの時間に重なり、今回のTIFではしず風のステージは完全制覇したいと思っていたので、ここは自分を奮い立たせる意味も含めて、絆の美空とのチェキを撮りに行く。

ライブが始まる前からヲタとの接触とか、メンバーもご苦労なことだが、こちらもメンバーと会ったことによって、このあとのしず風のステージへ向けての気持ちが徐々に高まってきた。

そんなことをしているうちに夕刻近くになり、「大森靖子とアップアップガールズ(仮)」を観るために再びDOLL FACTORYへ向かったのだが、現場に到着した瞬間、思わぬ光景に唖然とした。

会場前には長蛇の列が出来ており、入場規制がかけられている。

詰んだ…。

ここは列の後ろに並んで、アプガを観れる可能性に賭けるよりも、他の会場に移動したほうが賢明だろうと判断する。

今ならZepp Tokyoで行われる東京女子流に間に合うし、すんなり会場に入れればSUPER☆GIRLSのステージも半分くらいは観れるだろう。

幸いにしてZepp Tokyoは入場規制がかけられておらず、意外にあっさりと入場出来た。ただしフロアの中は超満員で、スパガのライブで異常に盛り上がっている。

「プリプリSummerキッス」「常夏ハイタッチ」「MAX!乙女心」といった超アゲアゲソングの三連発は、これぞアイドルの王道であり、理屈抜きに素晴らしい。

アプガが観れなかったのは残念だったが、気持ちを切り替えてスパガを観にきたのは結果的に正解だったと思う。前述したようにTIFを楽しむには判断力が必要だというのは、こういうアクシデントに対する順応性という意味である。

去り際に八坂が「次はドロシーだよ」と言ったので、まさか出演順が変更になったのかと思って焦ったが、単に彼女がグループ名を間違えたのか、天然なのか、女子流とドロシーの区別がつかないのか、定かではないが、スパガの次は予定通り東京女子流が登場。

昨年のTIFでは、SKEヲタに占拠されHOT STAGEで女子流のライブを観ることが出来なかった自分にとっては一年越しのリベンジを成し遂げたことになる。

相変わらず安定した歌と踊りを披露する女子流だが、しかし例によって必要以上に盛り上がる展開を微妙に避けようとするヘソ曲がりっぷりも相変わらずで、この日も、地味な新曲を途中に挟んだりして会場のテンションに水を差していた。

それでも「おんなじキモチ」の一体感はハンパではなく、もはやこの曲はTIFにおいてアンセム的な役割を果たしているような気がする。

女子流終演後はNegiccoを観るためENJOY STADIUMへ。

異常なまでにソフィティスケートされたサウンドが心地よく、百花繚乱の21世紀のアイドルシーンの中でも彼女達の個性は際立っている。

今年で結成10周年ということはTIFに出場している全アイドルの中で、もっとも活動歴が長いアイドルグループが彼女達なのかもしれない。

そして、今回のステージでも披露されたが、先頃リリースされたばかりの新曲「アイドルばかり聴かないで」が実に素晴らしい。

「どんなにアイドルが好きでも構わない でもどんなに握手をしたってあのコとはデートとか出来ないのよ」というアイドル自身がアイドルの虚飾性を皮肉っている歌詞には笑ってしまうが、こういう内容の歌をアイドル自身が、おおらかに歌えるようになったのも、きっと時代なのだろう。

Negiccoが終わったあとは、すぐさま隣のDOLL FACTORYに移動してしず風 & 絆の出陣に備える。

しず風の待機中にパワースポットを観ていたのだが、スパガ、女子流、Negiccoといった現在のアイドルブームを担うグループを観たあとに、この手の地下アイドルを観ると、その落差に一瞬言葉を失い、何と表現したらいいのかわからなくなってくる。

これはパワースポットに限ったことではないが、やはり地下アイドルはどこまでいっても地下アイドルであり、メジャーなアイドルとは何かが決定的に違っている。

勿論、地下にはメジャーにはないようなアイドル文化や価値観で支えられていることも多々あるわけで、問題はそうした地下アイドルならではの魅力を自分達のことを知らないアイドルヲタにどのように訴えていくのかということだと思う。

TIFという舞台は、まさにそういう不特定多数のヲタの目に触れる千載一遇のチャンスであり、弱小アイドルであればあるほど、そこらへんの認識はしっかり持つべきだろう。

残念ながらパワースポットのパフォーマンスからは、そういった意志は自分には伝わってこなかった。

(つづく)