ウルトラマンデッカー(2022)
※ネタバレなし
【ワンアイデアに驚愕!】
「設定の勝利」。本作を一言で表すなら、そのような表現が適切でしょう。まず、ウルトラマントリガーの続編という世界観。すでに頼れる戦士となったウルトラマントリガーのいる地球と世界観を共有するということは、ともすれば、本作の主人公ウルトラマンデッカーの存在感や活躍を脇に追いやってしまうリスクを持ちます。
更に本作には放送25周年を迎えるウルトラマンダイナのエッセンスを引き継ぐという命題もあります。そのような難題を解決し、本作にウルトラシリーズにおける唯一無二の個性を与える、「ワンアイデア」それは、スフィアのバリアにより「地球を孤立させることでした」。
【逆説のストーリーテリング!】
プロデューサー陣が、本作の制作陣に求めたのは「ウルトラマンダイナ」の宇宙進出時代の広大な世界観です。ただ、ダイナ当時の円谷プロの豪快な予算配分は、現状の堅実な経営をする現状な円谷プロにはないものです。
当時ほどの膨大な予算も望めず、当時ほど制作に時間もかけられない状況下で、ダイナレベルの宇宙にまつわる広大な世界観を構築しなければならない。本作の制作陣はスフィアの力で地球と宇宙を隔てる壁を構築し、人々が宇宙に進出できないようにされた世界観を発想します。
宇宙にまつわるドラマで、宇宙に行けないなど逆効果ではないか、そう思ってしまいそうです。しかし、だからこそ、そこに「葛藤のドラマ」が生まれます。ヒロインのキリノ・イチカは宇宙進出を夢見る人物。スフィアのバリアのために夢を絶たれた彼女は、防衛隊、新生GUTS-SELECTとして活動する中で、自分と宇宙の関係性を改めて問い直します。そして、宇宙へ旅立つ以外の方法で人々に貢献する道を模索します。宇宙への道をあえて断つことで、ドラマにおける宇宙の存在感を浮き彫りにする逆転の発想です。
その上、この世界観に存在するウルトラマントリガーがバリアの外に追いやられ、救援に駆け付けられない理由とすることで主人公アスミ・カナタ=ウルトラマンデッカーの存在感も守ることにも成功します。
そしてこの設定は、災害により夢を絶たれたという点で、現代の世相に直結します。絶たれた夢に葛藤するイチカの姿は、パンデミックの時代にあって夢との関わりを再考することを強いられた現代の若者の姿に重なります。名作の数多い近年のウルトラシリーズではありますが、最も強い現代性を有するのは本作でしょう。
【個性的なエピソード!】
本作で印象的だったのは第5話、旅行で地球を訪れていたピット星人が「スフィアバリア」のために数年にわたり、地球に閉じ込められてしまいます。そしてその間、満足に餌となる電気を食べれなかったペットのエレキングは、空腹から発電所を襲ってしまいます。本作のピット星人にもエレキングにも敵意はありません。ただ、状況により、敵対を余儀なくされてしまう。基本的に友好的か敵対的かのどちらかの多いウルトラシリーズの宇宙人において、斬新なキャラクター。これも「スフィアバリア」の設定がなせるエピソード。
他にも第9話に登場するグレゴール人が「スフィアバリア」の影響で故郷に帰れず、娘の生活を守るため、格闘家にもかかわらず、慣れない営業の仕事を強いられるなど個性的なエピソードが続きます。
【デッカい世界観!】
本作にはTDG時代のような大型ロケも、大規模なセットもありません、しかし、発想により当時に匹敵する世界観を構築する。ネタバレになるので詳細は伏せますが、後半で明かされる「とある設定」により、世界観はさらに拡大します。50年以上の長きに渡るウルトラシリーズにまだこれほどの引き出しがあったのか!そう驚かされます。映画やドラマに宿るクリエイティビティは、何も予算のみから生まれるものではないと再確認させられます。
また、本作と比較したいのが「王様戦隊キングオージャー」(2023)こちらは、物語の大半をグリーンバックで撮影し、高度なCGで広大な世界観を構築します。いわば直球のアプローチ。発想で世界観を広げた「デッカー」とは対照的です。
どちらがスゴいという話ではありません。どちらもテレビシリーズにおいて映画作品に匹敵する広大な世界観を構築した点が素晴らしい。様々な方法が試行錯誤されるという点で、近年のテレビ特撮市場は、「脂がのっている」と言えます。
ぜひ、本作を視聴し、デッカい世界観、そして繊細な設定の妙を感じてみてください。








