リコリスリコイル(2022)
※ネタバレなし
【出向の先の道】
井ノ上たきなは、日本の秩序と平和を影から維持する、知られざる組織「リコリス」のエージェント。
ある日、武器の密売業者の制圧任務の際に仲間の一人を人質に取られたたきなは、仲間の命を救うため、責任者の指示を受けるよりも早く、独断で救出のための行動に出る。
結果として人質を救うことはできたものの、指揮系統を無視したことと、場合によって人質を犠牲にしかねない危険な賭けを独断で行った責を問われ、たきなは前線での任務から外され、「喫茶リコリコ」への出向を命じられる。
そこは、昼は喫茶店として営業し市井に溶け込むものの、時にリコリスとしての諜報員としての裏の顔を覗かせる場所。「喫茶リコリコ」への出向エージェントとしての先輩である錦木千束がたきなを向かい入れる。
千束は「ファースト・リコリス」と呼ばれる、リコリスの中の精鋭だった。早くに成果を上げ、再び前線でリコリスとして返り咲きたいたきなとは対照的に、千束は本部とは距離を置いた現在の立場を受け入れている。
成果を重視し、本部への帰還へこだわっていたたきなであったが、千束の自由で柔軟な振る舞いに感化され、やがて自分なりの生き方を見出していく。喫茶店の営業と秩序のための任務。日々の中でたきなは千束との絆を深めていく。
しかし、その裏では謎の男、真島による強大な陰謀がうごめいていた・・・
【多彩な魅力】
ハリウッド映画のバディもののような導入で始まる本作。1話1話独立したエピソードで、迫力のスパイアクションとたきなと千束の絆の物語が丁寧に積み重ねられます。
救出任務、護衛任務、追跡任務、時には赤字に悩む、喫茶の経営にも乗り出すなどエピソードは多彩。
和菓子とコーヒーという異色の組み合わせの喫茶リコリコを中心とする美術もカラフルで個性的。
一方のミリタリー要素は、銃の細かい書き込みや反動を考慮した身のこなしの描写など、実に硬派で本格的。
幅広い要素をこだわり抜いたドラマと絵作りは実に引き込まれるものです。
そして、独立した1話ごとのエピソードには丁寧に伏線が張り巡らされ、壮大な戦いの縦軸が見え隠れする。
日本の安全神話への批評という難しいテーマが、千束と真島の対比で描かれる終盤は巧妙でありスリリングなものです。
【こだわりの1作】
ガンアクション、友情のドラマ、壮大な社会派ドラマ、カラフルな絵作り、魅力的なキャラクター等々。
様々な要素を詰め込みつつ、破綻せずまとめ切ったバランス感覚と演出力は特筆に値します。
色々語りましたが、とにかく言いたいのは、万人向けの間口の広さと、ひとたび足を踏み入れたら容易に抜け出せない魅力の深さが両立された作品であるという事です。
たきなと千束の、支え合う「優しい関係性」。
真島と千束の、スリリングで「緊張感ある対立軸」。
どちらも魅力的です。
幅広い方にオススメできる、こだわりの行き届いた本作を是非ご覧ください。



