※ネタバレあり。

 

【命に大小はない:スティーブの主張】

本作のヴィラン、サノスは次のように自らの目的を主張する。

「宇宙全体の資源が目減りしている、それゆえ全体としての宇宙の循環のため「生命の半数」を滅亡させる。」

対するはアベンジャーズ。彼らはあらゆる命を尊重する立場を取り、サノスに対抗。

サノスの野望の実現のための鍵となるインフィニティ・ストーンの防衛戦線が展開される。激しい衝突の末インフィニティ・ストーンはヴィジョンと一体化したマインドストーン一つを残すのみ。

劣勢を察したヴィジョンは自らの命と共にマインドストーンの破壊を提案する。自ら一人の犠牲で、宇宙生命の半数に及ぶリスクを回避できるなら、それが合理的だと言うのだ。

ヴィジョンの提案に、キャプテン・アメリカ=スティーブ・ロジャースは真っ向から反論する。

「命に大小はない」

サノスの野望は阻止する、一方でヴィジョン個人の命も尊重するというスティーブの判断にアベンジャーズの面々も賛同する。

「犠牲を容認しない」というこの判断こそ、本作の根幹だ。

【犠牲を容認しない:歴史に学ぶ】

スティーブにはかけがえのない仲間であるヴィジョンの命を守りたいという意図があった。しかし判断の理由はそれだけではない。

ひとたび犠牲を許容した集団は、更なる犠牲を重ねることでしか存続できなくなるという歴史があることを知っているからだ。

ユダヤ人が見舞われた人類史に残る悲劇「ホロコースト」。

元々はユダヤ人の隔離政策という名目で始まったものが、やがて命を奪う行動へエスカレートしていく。対象もユダヤ人、障害を持つ者達、また異なる民族と更に拡大していった。

歴史の悲劇を目の当たりにしたスティーブだからこそ「犠牲を容認する思考」の危険性を誰よりも早く察知し、ヴィジョンの自己犠牲論に異を唱え、アベンジャーズの面々もスティーブの主張に賛同し、ヴィジョンを守ろうとする。

もし犠牲を容認して勝利を得たとしてもその先にあるのは恐怖と独裁の支配だ。そして犠牲の上に築かれた集団は次なる犠牲を名指しする。

たとえ建前と言われてしまうような理想論であっても、「犠牲を容認しない」という主張を貫くことに大いなる意義がある。それは戦いの終わった先、守られた世界の「結束」を守るという意義だ。

【「インサイト計画」の影】

本作の監督を務めるのはルッソ兄弟。彼らが最初に監督を務めた『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)と比較すると本作のテーマが明確になる。

『ウィンター・ソルジャー』でスティーブが相対したのは「インサイト計画」。ヒドラの意にそわない者、更には将来的にヒドラの思想との対立が予測される者への先制攻撃計画だ。

つまり、サノスの野望と「一部を犠牲にする計画」という点が同じなのだ。

 

(「インサイト計画」がヒドラにとって都合の悪い者を恣意的にターゲットとする一方、サノスの野望が無作為抽出される生命の半数が対象という違いはある。)

このように見ると『ウィンター・ソルジャー』と『インフィニティ・ウォー』でのスティーブの戦いが「犠牲を容認しない」という点で共通することが分かる。

本作はアベンジャーズである。一方でルッソ兄弟の視点で継続された、「犠牲を容認しない」というスティーブの戦いの延長戦でもあるのだ。

【復讐心の克服:団結への道】

注目したいのは、本作には繊細な描き分けがある点だ。

「犠牲を容認しない」ことと「犠牲を前にして、復讐心にのまれること」は違う。

本作の冒頭でロキとヘイムダル、大勢の市民の犠牲を目の当たりにしたソーは復讐心に囚われる。終盤でサノスを追い詰めるものの、サノスを長く苦しませようと敢えて頭から狙いをそらした。

その隙がきっかけで、サノスに「指パッチン」の余地を与えてしまう。

ピーター・クイルはガモーラの犠牲を確信したことから激情にかられる。彼が怒りのままに殴打したことで、自らの作戦で捕らえたサノスに脱出の隙を与えてしまう。

 

(この際にピーターを止めようとしたのがトニー・スタークである点も興味深い。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)においてトニーは復讐心に駆られていた。)

復讐心にかられることの危険性が繰り返し強調される。

復讐心という「感情」に囚われるではなく、一方でサノスの冷たい計画のような「理論」に囚われるでもない。

本作は「犠牲を容認しない」という「理想」のためにどこまで「団結」できるかという問いかけなのだ。

 

【MCUとして:新たな絆】

MCUにおける一大クロスオーバーイベントとしてヒーロー達の新たな交流が見れる点がポイントだ。

互いに一歩も譲らないトニーとストレンジのスリリングな駆け引き、親との確執という共通項を抱くソーとガモーラ等魅力的な関りは多いが、特に私はスティーブとティ・チャラ=ブラックパンサーの駆け引きに引き込まれた。

終盤、ワカンダへサノス軍の襲来が知らされると、国王としてティ・チャラは住民の避難と防壁の展開を指示、そしてそれら重大な決断に続く形で隣のスティーブへ「盾を差し上げろ」と部下に命じる。

スティーブに盾を与えることが住民の避難、防護壁の展開、それらに並ぶ重大な決断であると。スティーブが盾を手にすることが勝利を確定させるための重大な要素であると。ティ・チャラのスティーブへの信頼が伝わる。

そしてその意図を理解し、視線を向けることでティ・チャラに応じるスティーブ。巨大な作品だからこそ、このように短いやり取りで信頼を描く手腕が冴えわたる。