FINAL FANTASY XIII(2009)
ファイナルファンタジー13
※ネタバレあり
【逃亡、そして戦いへ】

独自の文明の元に栄華を極める浮遊都市「コクーン」。そこに住まい、平和を享受していた市民、ライトニング、スノウ、ホープ、サッズはある日「ルシ」とされる。ルシとれた彼らはモンスターが跋扈し、禁足地とされる地上、「パルス」へ追放されることとなる。
追放をのさなか、ライトニングは一瞬の隙をつき自らの拘束を解くと、兵士を相手に戦闘を開始。同様の理由で拘束されていた人々を開放すると共に戦うことを提案。自由のための戦いを始める。その戦いへ、サッズとスノウ、ホープも合流。やがてパルス出身のヴァニラとファングも仲間となり、世界の再構築を目論む「ファルシ」、バルトアンデルスの野望に立ち向かう・・・
【圧倒的な情報量】

とにかく、情報が多い!逃亡劇とはじまる本作は、海外ドラマを彷彿とさせる演出で進行。時系列を前後させながらの進行でキャラクターの背景を説明する方法は、新鮮ではあるものの、ゲームとしての没入感をそいでしまいつつ、過度に複雑となってしまう。更にはそこに日本のRPG特有の複雑な設定や多くの独自の専門用語が重なり初見での理解はますます困難なものに。
毎回、ハードの限界や斬新なシナリオへの挑戦の精神はこのシリーズの美点ですが、今回のシナリオについてはやや情報過多としてしまった点は否めません。逃亡劇としてインパクトのあるシナリオですが、説明の多くを「ファルシの超常的な力」として進めてしまう点もやや強引。
しかし、大味な大筋の一方で、そこに宿るキャラクターの心の機微、細かな心理描写には説得力があり、血の通ったものとなっています。
【逃亡劇と、結束】

ホープは戦いの中で母ノラを失ったやり場のない憤りを、そこに居合わせたスノウにぶつけ、スノウは年長者としてまっすぐに受け止める。スノウとホープの葛藤は、誰が悪いか断言できない複雑な物語です。
ヴァニラは、サッズの息子のドッジを戦いに巻き込みクリスタルとなるきっかけを与えてしまったことを悔やみ、サッズはそのような葛藤を抱くヴァニラに理解を示す。
妹セラを戦いへ巻き込んだものとして、当初スノウを敵視していたライトニングは、共に逃亡者として過ごすうちにリーダーシップを示すスノウを評価していく。
誰よりも早く黒幕の思惑を察知するがゆえに、仲間を救うため、仲間との対立を選ぶファングの葛藤。
様々なキャラクターのエピソードを通して、逃亡劇という特性を活かし、出身も立場も信念も異なるもの達が集結し、結束していく様を描く。RPGの醍醐味はしっかりと生かされています。
逃亡というシナリオの都合上、街を探索したりといったシーンが少なく。サイドクエストなどの寄り道要素が限られてしまうのは問題ですが、そのような不満も、後半、アルカキルティ大平原へ到達した際のカタルシスへの伏線となっている点は納得いくポイントです。
【立場に揺れるものの葛藤】

そして、サブキャラたちのドラマも魅力。
スノウ達の立場の主張に耳を傾け、理解を示しつつも、大勢の市民の不安を取り除くため、軍人としての立場からスノウとの対立を選ぶロッシュの葛藤。
しがらみの多い立場に置かれ、自らがファルシの駒と利用されていることを察知する聡明さを持ちつつも、運命に抗えないことに葛藤するレインズ。その中で、可能な範囲でどうにかライトニングに希望を託そうとする彼の葛藤と、それを受け止めるライトニング。
レインズは才能と実力のあるキャラクターですが、運命に翻弄され活躍はできません。通常、映画やゲームでは才能あるキャラクターは活躍できるものですので、彼のありようは特殊なもの。戦記物を思わせる運命を生きる彼は、可能な範囲でライトニングに希望を託そうとします。彼の葛藤は王道とは異なる味わいがあります。
敵方の、立場に揺れるものの葛藤もしっかり描かれるのは好印象です。
また、レインズたちの「立場があるゆえの葛藤」が、ライトニングたちの逃亡者ゆえの「立場を持てない葛藤」と対比されている点も興味深い。
【総括】
上述したように王道とは少し異なる展開で、複雑な心情の機微に焦点を当てるのが本作の持ち味と言えるでしょう。
キャラクターそれぞれに「ロール」という役割を割り振るという古典的なRPGの王道にリアルタイム要素を付加する本作の戦闘システムは戦略性と臨場感を演出。プルイヤースキルが戦闘にしっかり反映される、独自性がありつつも完成度の高いシステムとなっています。
シナリオ面においては、壮大な世界観の中に、細やかなキャラクター描写が輝く作品と言えるでしょう。



