メタルギア ライジング リベンジェンス(MGR)
METAL GEAR RISING: REVENGEANCE(2013)

※ネタバレあり。

【「愛国者達」崩壊の先】


「メタルギアソリッド2」で描かれたのは「コンテクストの生成」を通して描かれる支配構造の恐怖でした。「大勢が言っていることだから正しいはずだ」そのような人の思い込みを利用し誘導するメソッド。「愛国者達」という見えざる権力によるトップダウン式の支配。それが「コンテクストの生成」です

しかし、その支配も「メタルギアソリッド4」におけるソリッド・スネーク、雷電、オタコン、サニー達による管理AIの破壊により終わりを告げます。

本作、「メタルギアライジング」のあらすじで描かれるのは、その先の物語です。

【SNS上の相互監視、パノプティコン】


SNSの普及により、個々人一人一人が発言権、影響力を行使できるようになりました。権力構造が支配力を行使するまでもなく、一人一人の個人がお互いの発言や振る舞いを相互に監視し合い、モラルを逸脱したものは炎上させられ、社会的な発言権を奪われる。

SNS上に「パノプティコン方式」の相互監視構造が顕現するのが、現代の時代性と言えます。

権力によるトップダウン式の言論統制は問題ですが、一方で民衆同士の相互監視による炎上がもたらす言論統制も問題です。

言論統制のサーバーが「愛国者達」という権力側から、個々人のSNSへ「分散コンピューティング」として引き継がれたとも言えます。

「『愛国者達』が消えても『規範』は残った。ひとたびそのミームに感染したもの達は、自らそれを拡散してくれた。」

「情報統制のサーバーなど、破壊しても無駄だ。今や市民の一人一人が、『愛国者の息子達』なのだ。」

アームストロング上院議員は雷電にそのように演説し、SNS上の個々人が社会的影響力を行使する現状を利用しようと画策します。

「愛国者達」のような強大な権力構造が影響力を握っているうちは、その影響力を利用することは難しい。「愛国者達」が認める、法的な手続きが必要となるからです。

一方で、現代の様に一人一人の民衆が影響力を握る状況では、その影響力を利用することはアームストロング上院議員にとって容易となります。法的な手続きを取るまでもなく、民衆の感情に訴えかけることで「民意」を動かし、世界に向けて強大な「影響力」を行使することができるからです。

【「感情的な極論」への脆弱性】


「必要なのは『民意』だけだ。」

そう言って、アームストロング上院議員はフェイク情報を駆使して国民感情を煽り、大規模な派兵を画策します。その先にあるアームストロングの目的は世界規模の闘争状態。かつてビッグボスが理想とした「天国の外側」(アウターヘブン)とも通ずる思想です。

上述した、ネット全盛の現代社会の問題点、「感情的な極論への脆弱性」を浮き彫りにすることが本作のシナリオの本質です。

そして、その方法論の存在こそ、アームストロングが「愛国者達」が消えてもネット上に彼らの規範、ミームは残ったと語る理由です。

そのような難題に相対するからこそ、雷電は「活人剣」という信念を、たとえ偽善と罵られようとも掲げ続けるのです。

【ビッグボス、そしてスカルフェイス】


ビッグボスの目論見「天国の外側」は個々人が銃口を突き付け合い闘争により循環する、支配なき世界です。一方の現代社会はSNSにより民衆がネット上で「影響力」「拡散力」という銃口を突き付け合い、恫喝しあう世界と言えます。

そのような世界にあって、アームストロングは国民感情を扇動することで、支配なき原始的な闘争状態の拡大を目論みます。

シリーズを俯瞰するとアームストロングの演説が示す思惑に「メタルギアソリッドV」のスカルフェイスとの共通性を見出せます。

スカルフェイスは「声帯虫」により世界の「共通言語」を排除することで、世界の解放を目論みます。支配とは「言語」により行われるものであり、「言語」を奪うことで支配の影響を限定的な形に抑制ができるからです。

アームストロングは「拳による闘争」で社会秩序を再構成することで「言語」の影響力を抑制し、世界の解放を目論みます。だからこそアームストロングはフェイク情報により「感情」を扇動します。「言語」とは、「感情」と対極の「理性」に宿るものだからです。

だからこそ、本作に重要なのは「理性」と言えます。主人公の雷電は内なる衝動的な「感情」(リッパーモード)と活人剣が象徴する「理性」(生存者数の最大化)の狭間で葛藤しますが、そのような「理性」を信じようとする彼のあり様こそ、本作のテーマの体現と言えます。