『裏天正記』マニラ編・第4話(弥三郎編)「赤鬼の弥」 | ゆうがのブログ

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世の中辛いよね。なんで辛いのかその理由がわかれは少しは、楽になるかも。そんなブログです。
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波の音が喧しかった。
甲板を打つ潮と罵声。喧嘩と酒。
ここはマカオ沖、名も知らぬ小さな海賊団――だが、船の上では全てが剥き出しになる。

鬼頭 弥三郎は、黙って縄を巻いていた。
腰に刃はない。だが目は血を吸うように鋭い。

「おい、そこの新入り。水を持って来い、今すぐだ!」

濁声で怒鳴る船乗りの腕に、刺青が走っていた。
弥三郎は一歩前に出て、桶を差し出した。
だが、手を引く際に、わざと少しだけ水をこぼす。

「おいコラ、なにしてやがる!」

怒鳴り声と同時に拳が飛ぶ――
弥三郎は避けず、受けた。顎に直撃したが、微動だにしない。
血がにじむ口元に、にやりと笑みが走る。

「……気が済んだか?」

低い声が、静かに船全体に響いた。
その瞬間、周囲の男たちが言葉を失う。

「何だ、こいつ……?」

「……喧嘩を売ってるのか?」

弥三郎は口の端を拭いながら、桶をその男の足元に置いた。

「お前の水だ。飲め。飲まねば、二度と喉は潤わん」

その目に、剣はなかったが、殺気はあった。
嵐の前触れのような静けさが、甲板を包む。

「赤鬼……だ。あいつ、赤鬼みたいな目をしてやがる」

誰かがつぶやいたそのあだ名が、翌日には船全体に広がっていた。

三日後、船の頭領が“夜中に転落”して死んだ。

口に出す者は誰もいなかったが、皆が弥三郎の背を見ていた。
無言で綱を引き、酒も飲まず、ただ波と共にある男――
そして、彼の船は静かに変わっていった。

襲うのは宣教師船。積み荷に「神の書」があれば、必ず沈めた。
奴隷を積んだ船からは、人間を解き放ち、金を焼いた。

その海賊団はいつしか、“思想を狙う鬼の一団”と噂されるようになった。
そして、その中心には、“赤鬼の弥”がいた。

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📝考察:「沈黙の支配者」――鬼頭 弥三郎の海上任務

弥三郎は“草”でありながら、草とは逆の存在――剣と恐怖を武器とする者です。

だがその行動は、破壊のためではなく、”未来のための“思想選別”に根ざしています。
敵は異国そのものではなく、思想と信仰を武器に民を縛る者たち。
それを見極め、襲い、消す――それが彼に与えられた任務です。

“赤鬼”とは恐れられる名であると同時に、烈馬たち“静の草”とは対をなす“動の草”としての象徴でもあります。

この先、弥三郎がどのように情報を操り、烈馬たちの影として動くのか。
彼の船が、“日本防衛”のための“影の海路”になる日も、遠くないのかもしれません。