角換わり後手番早繰り銀 | Thousand Days

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さうざん-でいず【千日手】
1. 同一局面の繰り返し4回。先後入れ換えてやり直し。
2. 今時珍しく将棋に凝っている大学生の将棋系ブログ。
主に居飛車党過激派向けの序盤作戦を網羅している他、
雑学医学数学物理自転車チェス等とりとめのない話題も…

※大昔の前回
『78金』『69金』『68金型』…早繰り銀
『後手後手対裏繰り銀』…32王型対棒銀
『後手後手六手目94歩』…94歩早突き型
『青野式強制早繰り銀』…25歩早突き型
【角換わりの夢】…相腰掛け銀52金系統



今まで纏められずにいた、早繰り銀の基本定跡について書いてみる。
(前半で対先手腰掛け銀、後半では地味に謎の多い相早繰り銀を扱う)

先手が①36歩を早くに突き、②後手95歩型腰掛け銀を警戒してくれば、
後手早繰り銀が有力になる…というのが現時点での私の仮説である。
身も蓋もないが、はじめに後手早繰り銀の限界から本題に入っていく。



26歩 84歩 25歩 32金 76歩 85歩
77角 34歩 68銀 77角成 同銀 22銀
48銀 62銀 78金 33銀 46歩 74歩
47銀 94歩 96歩 73銀 66歩…(甲)


64銀 56銀 75歩 65歩 76歩 64歩
77歩成 63歩成 78と 62歩…(甲1)
64銀 56銀 44銀 45歩 55銀 65歩
56銀 64歩 57銀不成 63歩成…(甲2)
64銀 56銀 54歩 68王 62金 58金
73桂 36歩 81飛 37桂…(甲3)
75歩 同歩 64銀 74歩 72金 56銀
52玉 65歩 75銀 55角…(甲4)
41玉 56銀 84銀 36歩 75歩 48金
52金 37桂 31玉 45桂…(甲5)
42玉 56銀 52金 36歩 64歩 48金
62銀 37桂 73桂 68王…(甲6)



後手早繰り銀を確実に防ぐには、36歩まで省いて右銀を出るのが良い。
65歩に55銀と出る足場が欲しいが、44銀は成立せず、54歩も突き難い。
後手番で32金は省けず、42金~32玉の一手損が間に合うとも思えない。

青野先生っぽく小鬢が開いたまま84銀と後手棒銀にシフトしてみても、
端棒銀は55角、76歩~73銀も77桂以下先手陣を手厚くするだけだし…
先手からの48金型単騎桂が早くてかつ厳しい。端攻めも無視される。

結局二手損で62銀と引くしかないようでは作戦として破綻している。
…後手番で常に早繰り銀がしたければ、33金型などの工夫を要する。
(にっしー先生のブログが詳しい)

※本譜66歩を 16歩 64銀 15歩に代えても水匠定跡曰く先手満足らしい。
(後手も54歩型で突っ張ったり矢倉に囲ったりできるし戦えなくはない)
対早繰り銀に限ってみれば36歩の罪はどんだけ深いんだという話である。


・後手棒銀対左玉 昔の模範演武
開始日時:1997/05/07 棋戦:名人戦
先手:谷川浩司 後手:羽生善治


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現実には先手が36歩をすぐ突くことが多く、早繰り銀は案外実現可能。
(それでも、66歩~56銀を間に合わせないよう事前工作は要求される)
あと、長岡本『神速!』の主軸をなす69金型単騎桂…実は回避できる。


26歩 84歩 25歩 32金 76歩 85歩
77角 34歩 68銀 77角成 同銀 22銀
48銀 62銀 36歩 74歩…(乙)


24歩 同歩 同飛 86歩 同歩 75歩
同歩 33角 34飛 77角成…(乙1)
37桂 73銀 24歩 同歩 同飛 86歩
同歩 88歩 15角 41玉…(乙2)
37桂 73銀 78金 33銀 45桂 64角
46角 22銀 66歩 42玉…(乙3)
46歩 94歩 37桂 73銀 78金 64銀
24歩 同歩 同飛 35歩 47銀 36歩
同銀 35歩 47銀 25歩…(乙4)

78金 33銀 46歩 94歩…(丙)
37銀 33銀 78金 94歩 46銀 73銀…(戊)


具体的には「78金を見るまでは22銀型で踏ん張る」…の一点に尽きる。
飛車先を換えてきた瞬間に86歩~88歩か、86歩~75歩~33角を当て、
64銀が間に合えば45桂も22銀引きで(35歩の有無を問わず)受かる。

ただ、本稿では46歩に94歩と突く世界観を採用したせいでややこしい。
46歩と37桂の後に78金を持ってこられた場合は例外的対応が必要で、
せっかく64銀と好所に据えたことだし(乙4)のように強く戦ってみたい。


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26歩 84歩 25歩 32金 76歩 85歩
77角 34歩 68銀 77角成 同銀 22銀
48銀 62銀 36歩 74歩…(乙)
78金 33銀 46歩 94歩…(丙)


47銀 95歩 37桂 64歩 48金 52金…(丙1)
96歩 73銀 47銀 64銀 56銀 75歩
同歩 同銀 24歩 同歩 25歩 76歩
88銀 64銀 24歩 同銀 48金 23歩…(丙2)
37桂 73銀 45桂 44銀 24歩 同歩
同飛 23歩 34飛 25角 15角 41玉
44飛 同歩 53桂不成 52玉 61桂成 同玉…(丙3)
37桂 73銀 45桂 44銀 24歩 同歩
同飛 23歩 29飛 64角 37角 35歩
38金 36歩 26角 33桂 同桂成 同銀…(丙4)

37桂 73銀 47銀 64銀…(丁)


73銀の前に94歩を突くのは、このタイミングが一番柔軟に指せるから。
62銀型で位を取れば腰掛け銀や右玉で位を活かす構想をとりやすく、
逆にすぐ96歩と受けてくれば突き違いもなく継ぎ歩にも抵抗できる。

94歩に(47銀や66歩ならともかく)37桂だと95歩は突きづらいので…
さすがに73銀と形を決めて、この場合だけ45桂に44銀と繰り出す。
以下は64角が46歩取りと45銀~37角成の両狙いで、相当受けにくい。

(丙4)から47銀なら86歩がある。86同銀は 34桂 48角 46桂 28金 84銀、
86同歩は 85歩 同歩 同飛 86歩 25飛 27歩 45桂で、いずれも技あり。
従って先手はこの端歩をスルーしつつ、普通に組むよりなさそうだ。


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26歩 84歩 25歩 32金 76歩 85歩
77角 34歩 68銀 77角成 同銀 22銀
48銀 62銀 36歩 74歩 78金 33銀
46歩 94歩…(丙)
37桂 73銀 47銀 64銀…(丁)


96歩 75歩 同歩 同銀 24歩 同歩
25歩 86歩 同歩 同銀 同銀 同飛
87歩 82飛 24歩 22歩 38金 35歩…(丁1)
66歩 75歩 68飛 76歩 同銀 86歩
同歩 同飛 87金 82飛 86歩 75歩
65歩 55銀 75銀 93角 76歩 74歩…(丁2)
48金 95歩 56銀 62金 66歩 73桂
45桂 44銀 24歩 同歩 同飛 23歩
34飛 42玉 51角 41玉 15角成 52金…(丁3)
48金 95歩 56銀 62金 66歩 73桂
29飛 81飛 68王 14歩 16歩 42玉
79王 52玉 88王 72金 69飛 44銀…(丁4)

65歩 55銀右 47銀 35歩 56歩 93角…(丁4a)
45歩 55銀左 65歩 同桂 同銀 同銀
同飛 59角 38金 77角成 同金 64銀…(丁4b)



94歩は、65歩の突き違いが消える瞬間を待って73銀を出ようという手。
銀の進出と無関係な手が二手入れば(36歩+37桂or96歩)条件を満たす。
それと、後手番なので端の位を取りだらだら待つための準備でもある。

(65歩対策の62金~73桂を間に合わせるため)47銀に64銀も仕方なく、
この瞬間96歩なら後手は仕掛ける。ただどう組んでも継ぎ歩が強敵。
44歩なし、54角なしの(丁1)を本線としているが…優劣はわからない。

48金型地下鉄飛車は一度組み上がると手強く、飛車先突破も難しい。
矢倉系統に囲っても一局ながら結局、玉頭から攻められる羽目になる。
(甲3)と一見区別がつかないが、今度は中住居で防御に徹するのも有力。

単騎桂にはほぼ44銀、34飛廻りには33桂(15角があれば41玉)のつもり。
38角~65歩に54歩~55銀で応じるため29飛までに地下鉄完成を急ぐ。
右玉に組まれると95歩は空振るが、手詰まり模様になるので大差ない。


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p.s.('19/09/09)
先手早繰り銀
なら78金を省けて、『青野式強制早繰り銀』の形になる。
(Automaticに攻撃を進められるので、実戦的にはものすごくおすすめ)
少なくとも玉を囲い五筋を突けば(甲1)みたいな突き違い即死は防げる。

45歩に 34歩 同銀 37銀 33角と据える形は頻出で「標準形」と表記する。
正調先手早繰り銀だと熊先生の検討手順みたいに忙しく反撃もきつく、
今のところ先手がはっきり良くなる順は見当たらない。(ない気もする)

それと、先手番の場合は四間飛車や右玉に対する打開策も必要になる。
手得角換わりでは85桂の軌道を避けて88銀型のまま組むのが重要で、
77銀を上がると72金型右玉、いわゆる「羽生流」が地味ながら脅威。


26歩 84歩 25歩 32金 76歩 85歩
77角 34歩 68銀 77角成 同銀 22銀
48銀 62銀 36歩 64歩 37銀 33銀
46銀 63銀 68玉 44歩 78玉 42飛
35歩 45歩 34歩 同銀 37銀…(四)

35銀 56歩 46歩 同銀 同銀 同歩
47角 58金右 56角成 24歩 同歩 22歩…(四1)
33角 38飛 44角 58金右 74歩 26銀
33金 35歩 43銀 37銀 54銀左 36銀…(四2)
33金 24歩 同歩 31角 52飛 22歩
54角 21歩成 同角 36銀 35歩 45銀…(四3)
33桂 24歩 同歩 同飛 23銀 28飛
24歩 58金右 74歩 36銀 34歩 37桂…(四4)


・42飛型は上からの早い攻めがないので、突き違いを喰っても大丈夫。
四筋交換も恐れず飛車を目標にすれば、78玉型の安定感がより際立つ。
一般論として、36銀37桂型が安定して組めれば攻め筋には困らない。


26歩 84歩 25歩 32金 76歩 85歩
77角 34歩 68銀 77角成 同銀 22銀
48銀 62銀 36歩 64歩 37銀 33銀
46銀 63銀 68玉 74歩 78金 94歩
96歩 73桂 79玉 62金 66歩 52王
58金 81飛 68金右…(八)

54銀 35歩 同歩 同銀 65歩 75歩
64角 46銀 75角 65歩 66歩 18角…(八1)
44銀 16歩 33銀 56角 54歩 15歩…(八2)
44銀 16歩 54歩 37桂 33銀 45桂…(八3)
54歩 16歩 14歩 56角 44銀 34角
65歩 同歩 同桂 66銀 64歩 77桂…(八4)


・右玉や中住居には79玉型の平矢倉で待ち、56角や37桂の機を狙う。
三筋交換は49角や38歩などを与えてむしろ損。54銀~44歩なら56歩。
玉頭をわざと攻めさせて桂交換に持ち込めば、玉形差が活きやすい。


・正調先手早繰り銀 標準形 平矢倉
開始日時:2018/11/26 棋戦:王将戦
先手:渡辺明 後手:豊島将之


・手得先手早繰り銀 標準形 Bonanza囲い
開始日時:2019/01/19 棋戦:竜王戦
先手:長谷部浩平 後手:小山怜央


・手得先手早繰り銀 対52金型右玉
開始日時:2018/06/13 棋戦:順位戦
先手:千田翔太 後手:丸山忠久


・手得先手早繰り銀 対52金型右玉
開始日時:2018/12/25 棋戦:順位戦
先手:広瀬章人 後手:糸谷哲郎


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後半は相早繰り銀。みんな生理的に大嫌いだからか体系化し難い。



26歩 84歩 25歩 32金 76歩 85歩
77角 34歩 68銀 77角成 同銀 22銀
48銀 62銀 36歩 74歩…(乙)
37銀 33銀 78金 94歩 46銀 73銀…(戊)


(己)…16歩速攻型 / (己')…58王速攻型
(庚)…79王反攻型 / (庚')…79王対95歩
(辛)…58王中住居 / (辛')…52金保留型
(壬)…66歩筋違角 / (壬')…66歩端違い
(癸)…78金省略型



本稿では居玉で94歩と突く最も素直な後手早繰り銀に絞って調べる。
37銀に33銀以外の手を指して限界早繰り銀を目指す発想もあるが、
飛車先交換を許しても手数を稼げないしその歩が受けに利く。(83歩)

37銀に75歩は 同歩 65角 78金 47角成 74角 同馬 同歩 73歩と進み、
難しいが先手を持ちたい。(途中、74角に57馬だと66銀で馬が死ぬ)

先手は78金をさぼって66歩や58金右に変えることもでき、後述する。


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26歩 84歩 25歩 32金 76歩 85歩
77角 34歩 68銀 77角成 同銀 22銀
48銀 62銀 36歩 74歩 37銀 33銀
78金 94歩 46銀 73銀…(戊)
16歩 64銀 35歩 同歩 同銀 86歩
同歩 85歩 24歩 同歩 同銀 55角
46角 同角 同歩 24銀 同飛 23歩
28飛 86歩…(己)


88歩 37歩…(己1)
84歩 47角 83銀 42飛 45角 62金…(己2)
83歩 同飛 84歩 同飛 66角 82飛
11角成 37銀…(己3)



相早繰り銀の根幹を成すのが、この相居玉の仕掛けと継ぎ歩の反撃。
(お互い玉を囲うと銀取り金取りが王手になるか寄せが速くなって死ぬ)
途中、55角を通して46角を打たせるやりとりが地味ながら重要である。

2019/06/18 阿部健-佐々勇(順位戦C1)の37銀捨てが公表されたため、
35歩に 同歩 同銀 55銀と優しく応じる旧定跡は不要になってしまった。
34歩には常に22銀と引いておいて、どこかで33歩の解消を狙えば良い。

16歩を69王に代えるのは、55角に46角と合わせられなくて純粋に損。
16歩を68王なら55角を利かさずに同様に進めて、88歩に今度は54角。
84歩も同飛と取り 66角 85飛 96銀 55角 同角 同飛 66銀 35飛で良い。



26歩 84歩 25歩 32金 76歩 85歩
77角 34歩 68銀 77角成 同銀 22銀
48銀 62銀 36歩 74歩 37銀 33銀
78金 94歩 46銀 73銀…(戊)
58王 95歩 35歩 同歩 同銀 86歩
同歩 85歩 24歩 同歩 34歩 22銀
24飛 86歩 88歩 23歩 26飛 52玉…(己')
66角 85飛 46銀 64銀 68銀 62金…(己'1)



※58王速攻型では95歩を優先し、継ぎ歩~96歩~87角を用意する。
2019/01/20 糸谷-藤井聡(朝日杯)より好条件で、66歩も66銀も潰れ。
66角で連打を用意してくれば駒組みに戻る。どこかで33歩も有力。


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26歩 84歩 25歩 32金 76歩 85歩
77角 34歩 68銀 77角成 同銀 22銀
48銀 62銀 36歩 74歩 37銀 33銀
78金 94歩 46銀 73銀…(戊)
68王 64銀 79王 75歩 同歩 同銀
76歩 86歩 同歩 同銀 同銀 同飛
75角 76飛 53角成 88歩…(庚)


77桂 89歩成 同王 69角…(庚1)
同王 87歩 同金 79角 98王 86歩
同馬 同飛 同金 65角 87金 47角成
86飛 73桂 82飛成 41玉…(庚2)
同王 87歩 同金 79角 98王 86歩
同金 97角成 同王 79飛成 88飛 95歩
63馬 62歩 64馬 77銀…(庚3)



元々私は早繰り銀の支配する世界なんてまっぴらごめんなのだが、
2018年のWCSCではそれがほぼ実現していた。その原因がこの(庚)。
75角に82飛なら83歩~74銀以下上部を制圧されてこれは自信なし。

本手は馬を消す44角だが、八筋の三連続叩きが本型特有の攻め。
(序盤で95歩まで突けていれば本譜同様に進めて確実に後手が良い)
薄々何かが足りないような気はするものの…どの変化も際どい。

先手の立場からすると先攻させるので怖いが、有力な順ではある。



26歩 84歩 25歩 32金 76歩 85歩
77角 34歩 68銀 77角成 同銀 22銀
48銀 62銀 36歩 74歩 37銀 33銀
78金 94歩 46銀 73銀…(戊)
68王 64銀 79王 95歩 35歩 同歩
同銀 75歩 同歩 96歩 同歩 86歩
同歩 98歩 同香 65角 88王 47角成…(庚')
24歩 同歩 同銀 76歩 66銀 46馬
33銀成 28馬 32成銀 同飛 44歩 87歩
同王 44歩 43角 82飛 21角成 29馬…(庚'1)
34歩 22銀 58金 36馬 38飛 54馬…(庚'2)



※75歩を95歩に代えるとさすがに先攻される(これ以上待てない)が、
そこで端歩が活きて75歩~96歩~86歩~98歩~65角の反撃が生じる。
34歩には44銀でも22銀でも難しい戦い。馬が手厚く、後手もやれる。


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26歩 84歩 25歩 32金 76歩 85歩
77角 34歩 68銀 77角成 同銀 22銀
48銀 62銀 36歩 74歩 37銀 33銀
78金 94歩 46銀 73銀…(戊)
58王 95歩 38金 64銀 37桂 44歩
26飛 52金…(辛)


35歩 54角 34歩 同銀 36歩 45歩
35銀 同銀 同歩 44銀 36銀 43金右…(辛1)
35歩 54角 34歩 同銀 56角 33金
36歩 73桂…(辛2)
35歩 54角 56歩 35歩 55歩 43角
35銀 55銀 96歩 36歩 同飛 34歩
46銀 同銀 同飛 96歩…(辛3)
56歩 73桂 66歩 84飛 35歩 62玉…(辛4)



58王はこの戦型では数少ない「マイナスになりにくい手」なのだが、
あまりにもゆったりとし過ぎて95歩~筋違い角が間に合いかねない。
手の順列組み合わせも多く、唯一の正解には辿り着けそうもない。

2019/01/16 糸谷-阿久津(順位戦A級)の52金を、本線に据えておく。
35歩に54角、56歩には73桂が相手の動きを逆用して良い感じだが…
(辛3)の先手96歩が地獄から突き上げる好手で、形勢はわからない。



26歩 84歩 25歩 32金 76歩 85歩
77角 34歩 68銀 77角成 同銀 22銀
48銀 62銀 36歩 74歩 37銀 33銀
78金 94歩 46銀 73銀…(戊)
58王 64銀 38金 95歩 37桂 44歩
26飛 14歩 16角 43角…(辛')

35歩 54角 34歩 同銀 36歩 45歩
35銀 同銀 同歩 42飛…(辛'1)
35歩 54角 34歩 同銀 56角 33金
36歩 52金…(辛'2)
35歩 54角 56歩 35歩 55歩 43角
35銀 55銀 96歩 34歩 24歩 35歩
23歩成 25歩 同桂 23金 33桂成 同金…(辛'3)
56歩 75歩 同歩 同銀 29飛 64銀…(辛'4)



2019/03/05 糸谷-澤田(王座戦)では、52金の前に14歩と待った。
(先手の飛車を狭くしたり、57銀~13角の反撃を作った意味もある)
16歩なら角でパスして飛車の横利きを残し、96歩に即34歩と逐える。


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26歩 84歩 25歩 32金 76歩 85歩
77角 34歩 68銀 77角成 同銀 22銀
48銀 62銀 36歩 74歩 37銀 33銀
78金 94歩 46銀 73銀…(戊)
66歩 64銀…(壬)


56角 54歩 74角 52金 56角 55銀
同銀 同歩 67角 44歩 16歩 14歩
46銀 43金右 55銀 45銀…(壬1)
16歩 75歩 同歩 同銀 76歩 86歩
同歩 同銀 56角 84飛 86銀 同飛
77金 85飛 74銀 84飛 85歩 82飛
88飛 79銀 87飛 86歩 同飛 88歩…(壬2)
16歩 75歩 同歩 同銀 24歩 同歩
25歩 76歩 88銀 44銀…(壬3)
16歩 75歩 同歩 同銀 24歩 同歩
25歩 76歩 68銀 86歩 同歩 同飛
87歩 84飛…(壬4)

24歩 22歩 25飛 35歩 同銀 52玉…(壬4a)
24歩 22歩 67銀 44銀 96歩 54角…(壬4b)



先手が66歩と突く形はelmo-AlphaZeroの百番指しに模範演武が多い。
(#51, #56, #59, #60, #63, #69, #75, #85, #89, #92)
66歩に44歩の単純鏡戦法だと、原理は謎だが幸せにはなりにくい。

56角~74角には金矢倉に組むのが今なおゴールドスタンダードだ。
(壬1)の55銀に67角だと 46銀 同歩 47角を打たれるのが問題なので…
最序盤を頑張って78金を58金右に変える(癸)がelmo式の工夫である。

(壬2)では95角、95歩型なら94飛を含みに飛車先逆襲を躱して戦う。
(壬4)の途中、86同銀だと24歩~83歩~74角~83歩~25飛で困る。
68銀にすぐ66銀も 25飛 35歩 同飛 26角 37角のラインが止め難い。



26歩 84歩 25歩 32金 76歩 85歩
77角 34歩 68銀 77角成 同銀 22銀
48銀 62銀 36歩 74歩 37銀 33銀
78金 94歩 46銀 73銀…(戊)

16歩 64銀 15歩 95歩 66歩 75歩
同歩 同銀…(壬')
76歩 86歩 同歩 同銀 56角 84飛
86銀 同飛 77金 85飛 74銀 27銀
98飛 84飛 85歩 94飛…(壬'2)

16歩 64銀 96歩 14歩 66歩 75歩
同歩 同銀…(壬")
76歩 86歩 同歩 同銀 56角 77銀成
83歩 42飛 77桂 44歩…(壬"2)
24歩 同歩 25歩 76歩 68銀 86歩
同歩 同飛 87歩 84飛 24歩 22歩
67銀 42玉 37桂 52金 15歩 同歩
14歩 35歩 13歩成 同桂 35銀 88歩
同金 79角 45桂 57角成 78金 66銀…(壬"4)



※端歩の組み合わせは、主に95角が消えることで(壬2)に影響する。
ただ後手からの44歩や、66歩に75歩以外を選ぶのも得とはいえず、
結局よく似たよくわからない戦いに雪崩れ込む可能性が高そうだ。


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26歩 84歩 25歩 32金 76歩 85歩
77角 34歩 68銀 77角成 同銀 22銀
48銀 62銀 36歩 74歩 37銀 33銀
66歩 94歩 46銀 73銀 58金右 64銀
56角 54歩 74角 52金 56角 55銀
67角 44歩…(癸)


35歩 同歩 34歩 22銀 68王 42玉
24歩 同歩 35銀 86歩 同歩 88歩
24銀 43金右 33歩成 同桂 37桂 34歩
23歩 31銀 35歩 45桂 同桂 同歩
34歩 89歩成 22歩成 同銀 33歩成 同銀
同銀成 同金寄 21飛成 88と 同銀 66銀
45角 65桂 34歩 43金寄…(癸1)

35桂 37角 48銀 64角成 43桂成 同玉
59王 37歩 67歩 86馬 68金打 55銀…(癸1a)
33銀 同金 同歩成 53玉 51龍 64玉
56桂 73玉 44桂 86飛 87歩 同飛成…(癸1b)



elmo-AlphaZero(#59, #60)で定跡化?された本譜は先手が忙しい。
35歩~34歩の楔は(44歩の直後の)このタイミングでしか入らないし、
42玉にもう一手緩むと36歩や43金右から厚みが完成して圧殺される。

(癸1)から35桂や33銀で素人目にはどう見ても寄っていそうなのだが、
よくよく考えてみると確かにあと一押し足りない気もしなくもない。
AlphaZeroが強すぎる。


…こうして見ていくと、相早繰り銀で96歩はほとんど得にならない。
(94歩と96歩の交換が入れば、手損角換わりへの誘導は有力かも)
手得の利を失いやすい戦型ながら、先手も工夫のし甲斐はあるか。



・(己3)
開始日時:2019/06/18 棋戦:順位戦
先手:阿部健治郎 後手:佐々木勇気


・(庚')
開始日時:1983/01/24 棋戦:連盟杯戦
先手:島朗 後手:青野照市


・(辛1)
開始日時:2019/01/16 棋戦:順位戦
先手:糸谷哲郎 後手:阿久津主税


・(辛')
開始日時:2019/03/05 棋戦:王座戦
先手:糸谷哲郎 後手:澤田真吾