2020年出生数(速報値)は過去最少を更新/コロナ収束後はGoTo結婚式を | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

2020年の日本の出生数(速報値)が前年比▲2万5917人(▲2.9%)の87万2683人で過去最少を更新する見込みとなりました。

過去記事[年間出生数が統計史上最少となる見通し]で2019年の出生数が過去最少を記録する見通しと書きましたが、2020年はさらに減少することになります。

さらに2021年は新型コロナウイルスの影響もあって、自治体に提出された妊娠届の件数は1~10月で計72万7219件と前年同期比▲5.1%の減少となっており、年間出生数は80万人を下回る可能性があります。実際にコロナ禍における妊娠・出産は大変で、定期健診のときさえ感染防止のため妊婦一人(子連れも禁止)で病院へ行かなければならなかったり、妊婦が感染したら確実に帝王切開処置になるため人一倍感染に気を使う必要があるなど、平常時に比べると親の負担は確実に大きくなっています。私も今妻が第2子を妊娠しているので大変さを実感しています。

 

少子化の原因は東京一極集中と実質賃金の低下だと一行で矛盾することを主張する評論家もいますが、前述の過去記事で紹介したように結婚の障害トップが『結婚資金』という状況は、40%前後という比率も含めて30年以上前から変わっていません。



むしろ第15回出生動向基本調査によると、未婚者が感じる結婚の利点に「経済的余裕を持てる」と回答した割合は、男女ともに増加、特に女性は急増しており、結婚に経済的メリットを感じる未婚者は増えているのです。



ちなみに独身者が「まだ独身にとどまっている理由」としては、18~24歳では「まだ若すぎる」「仕事(学業)に打ち込みたい」と回答した割合が多いのですが、25~34歳では男女ともに「適当な相手に巡り合わない」が30年以上前からダントツとなっており、婚活を始めるなら20代前半から始めないと上手くいかないのが現実のようです。私は婚活を意識せずに妻と20代後半で巡り合えましたが、幸運だったんでしょうね。



さらに深刻なデータもあり、18~34歳の未婚者のうち「異性と交際(友人としての交際を含む)がない」と回答した割合は下記のとおりです。

     男性    女性

2005  52.2%  44.7%

2010  61.4%  49.5%

2015  69.8%  59.1%

わずか10年で男性は+17.6%、女性は+14.4%も増加しています。男性の草食化云々が声高に言われるようになって久しい(最近はむしろ聞かない?)ですが、女性の深刻化も無視できません。異性と交際がなければ結婚などできるはずもなく、今後婚姻率がさらに低下するのは避けられないものと思われます。今後バブル経済が到来して若者が裕福になっても改善されるものではありません。

 

さて、2019年は令和婚の影響で婚姻数、婚姻率ともに若干改善したものの、2020年の婚姻数はコロナ禍の影響もあり、前年比▲7万8069組(▲12.7%)大幅に減少してしまいました。なお台湾も前年比▲1万2270組(▲9.3%)とやはり同じ傾向のようです。

経済産業省の特定サービス産業動態統計調査というマイナーな統計によると、結婚式場業の2020年業績は極めて深刻で、2019年と比べて取扱件数は▲55.6%、売上高は▲59.0%、従業員数は▲23.3%と大打撃を受けていることが分かります。同調査では宿泊業の統計がないため総務省のサービス産業動向調査のデータで確認しますが、2020年(1~11月)の宿泊業の売上高は前年比▲41.0%でしたので、2020年の結婚式場業は宿泊業よりも大きく売上高を減らしていることが分かります。宿泊業は裾野が広く他の産業への影響が大きいためGoToキャンペーンなどで支援対象になるのは十分理解していますし、私も積極的に支持しています。しかし結婚式は婚姻と同義ではないものの密接不可分なものであり、結婚式場業も「婚姻」という国の根幹を支える事業の一つであるのは間違いないので、少子化対策の意味も込めて結婚式場業も支援の対象にしてほしいと思います。

もちろん旅行と違って一生で2回以上結婚式を行う人はそうそういないでしょうし、GoTo結婚式を行ったところで効果は限定的でしょうが、2020~2021年にかけて結婚式を計画していた方々への慰撫と、コロナ禍による減少の反動となる結婚式数・婚姻数増を期待して、何らかの支援を期待したいところです。

 

結婚情報誌ゼクシィの2017年のCMキャッチコピー「結婚しなくても幸せになれる この時代に、私は、あなたと結婚したいのです」が大勢の共感を呼び、話題になりました。私も素晴らしいキャッチコピーだと思います。しかしこのキャッチコピーが共感を呼ぶということは、結婚は今や幸せになるための選択肢の一つでしかないと社会的に認識されてしまっているということでもあります。コロナ禍を機にさらに結婚式が廃れてしまうと、結婚する若者が一層減少してしまうのではないかと非常に危機感を覚えます。