2021年度の賃金動向に関する企業の意識調査/7年ぶりの低水準 | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

今日はTPPから離れた話題とします。

昨年5月に過去記事[2020年度「賃上げアンケート」調査 過去5年で最低に]で2020年度の賃上げアンケート(東京商工リサーチ社)が厳しい結果になったとお伝えしましたが、2021年度についてもやはり苦しい状況が続く見込みのようです。

帝国データバンクが実施した賃金動向に関する企業の意識調査によると、2021年度の賃金改善が「ある」と見込む企業は42.0%となり、2014年度見込み(46.4%)以来7年ぶりの低水準に落ち込みました。なお昨年1月時点の2020年度見込みはコロナショックの前だったこともあり53.3%でしたので、10%以上落ち込んだことになります。改善実績では2019年度は68.3%(2019年1月時点の見込みは55.5%)、2020年度は56.1%(1月時点の見込みは53.3%)とやはり10%以上下落しているので、この傾向が続くとみている企業が多いということなのでしょう。


また2021年度の賃金改善が「ある」企業にその理由を尋ねたところ、「労働力の定着・確保」(78.7%) が過去最高だった前回調査(80.6%、2020 年1月)より減少したものの、依然として高水準にあり、根強い人手不足が伺えます。次いで、「自社の業績拡大」(34.1%)や「同業他社の賃金動向」(16.5%) などが続きます。他方、賃金改善が「ない」企業の理由では、「自社の業績低迷」が76.7%とダントツで、前回調査より+18.6ポイントの大幅増加となりました。

賃金改善が「ある」企業のうち34.1%が「自社の業績拡大」と回答していますが、新型コロナウイルスの影響で拡大したものが11.0%、それ以外による拡大が26.5%となりました。逆に賃金改善が「ない」企業のうち76.7%が「自社の業績低迷」と回答していますが、新型コロナウイルスの影響が69.4%(それ以外は26.3%)とやはり圧倒的に新型コロナウイルスの影響が大きいことが分かります。


 

なお雇用形態によって賃金改善の差は大きく、フルタイム正社員は36.9%が賃金増加が見込まれるのに対し、パートタイム労働者は18.6%、派遣労働者に至っては7.9%しか賃金増加が見込まれておらず、賃金減少見込みの9.8%を下回るという惨状です。



2020年は非正規雇用者が減少し、雇用調整助成金などの公的支援によって助かる人が大勢いましたが、2021年も厳しい状況が見込まれます。雇用調整助成金などの各種補助も延長に延長を重ね、そろそろ出口についての議論も始まっていますが、こうした情勢を踏まえると非正規雇用者を中心に困窮した労働者への補助はもうしばらく継続してほしいと願います。いまだに一律給付金を望む声がありますが、困窮していない人々への「小遣い」に割く予算があるのなら、まずは困窮している人々への支援を継続するべきでしょう。公平感がないのが問題なのであれば、累進課税制度の撤廃も同時に主張してくださいと言いたくなります。現に『人口が減少していても経済成長している国』としてよく挙げられるリトアニアは累進課税制度を導入せずに所得税は一律21%となっていますし、累進課税制度を採用していない国もあるのです。

 

新型コロナウイルスの感染が縮小傾向にあり、またワクチンの接種も始まることで今年はコロナを克服する年になると願っていますが、生活への影響はまだまだ未知数と言わざるを得ない状況となっています。賃金は一般的に景気の遅行指数に分類されますので、コロナの影響がなくなって即上昇とはいかないでしょう。

特に困窮者への支援の継続を第一に政策を進めてほしいと願います。