年間出生数が統計史上最少となる見通し | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

今年の年間出生数の見通しが約86万4000人となり、明治32年に統計を取り始めて以降、最も少なくなる見通しです。こんな少子化対策待ったなしの状況で子育て支援政策は子育て世帯以外の実質賃金を減らす政策だと頓珍漢な批判をする評論家もいますが、もはや少子化対策は手遅れとなってしまった感さえあります。
令和元年を控えて婚姻を一年先延ばしにしたことで出生数が減ったという分析もあるようですが、流石に令和婚の影響はごく僅かなものでしょう。

未婚の親ももちろんいますが割合としては圧倒的に少ないため、子供の数≒①婚姻家庭数×②一婚姻家庭当たりの子供の数と言えます。
②は近年減少を始めましたが15年ほど前までは概ね一定でしたので、よく言われるように①の婚姻家庭数、婚姻率の低下が少子化の深刻な原因です。
では何故婚姻率が低下しているのか。収入と婚姻率との相関関係や結婚の障害トップが『結婚資金』であることから若者の貧困化が原因と言われがちですが、結婚の障害トップが『結婚資金』という状況は比率も含めて30年以上前から変わっていません。

(国立社会保障・人口問題研究所「独身調査の結果概要」より。下図は昭和62年調査結果)
今も昔も結婚資金に苦労する若者は大勢いるということですね。
結婚の障害=結婚できない理由は30年以上変わっていませんが、婚姻率は大きく低下しました。つまり一昔前は金がなくても何とか結婚していたのが、近年ではそこまで結婚に拘らなくなってきたということでしょう。
結婚情報誌ゼクシィの2017年のCMキャッチコピー結婚しなくても幸せになれる この時代に、私は、あなたと結婚したいのです」が大勢の共感を呼び、話題になりました。私も素晴らしいキャッチコピーだと思います。しかしこのキャッチコピーが共感を呼ぶということは、結婚は今や幸せになるための選択肢の一つでしかないと社会的に認識されてしまっているということでもあります。仮に30年前にこのキャッチコピーを流したところで共感はほとんど得られなかったのではないでしょうか。

『結婚すること』に対するハードルは昔と変わらず『結婚しないこと』のハードルが下がった以上、婚姻率が低下するのは当然の帰結です。少子化の原因は結婚に対する社会の風潮の変化と結論付けざるを得ず、その解決は極めて困難であると言えるでしょう。