宮城県が水道事業にコンセッション方式を導入 | 上下左右

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宮城県議会が12月17日、同県の水道事業の運営権を民間企業に売却する「コンセッション方式」を導入する条例改正案を賛成多数で可決しました。
水道法改正前では民営化と公営のいずれかしか選択肢がありませんでしたが、改正によってコンセッション方式が認められ、その導入を決めたものです。

(みやぎ型管理運営方式 『Q&A』より)

先の水道法改正を水道民営化、外資への水道事業の売却としか捉えていない方は、このニュースを見て脊髄反射で強く反発するでしょう。
少し水道法について知識のある方は「水道事業者はほとんど市町村なのに、何故県が条例を可決してるんだ?」と疑問に思うでしょう。
水道法について調べたことのある方は「先の法改正で都道府県に広域化推進の義務が課せられたから、それに絡めてのロードマップの条例かな?」と思うかもしれません。
しかし今回宮城『県』が条例を制定したのは、宮城県が全国的にも珍しい「県が水道事業を行っているところ」だからです。宮城県は上水道では仙台市など県内25市町村に水道用水を卸売りし、下水道では26市町村を対象に市町村から流れてきた下水を処理、工業用水は68社に供給するなど、水道事業の広域化にいち早く取り組んできました。
その宮城県が今回、水道料金の値上げ抑制など更なる効率化を進めるためにはコンセッション方式を導入する必要があると判断したのです。
既にある程度の広域化が進められている宮城県においては、現行の仕組みを維持したままだとほとんどコスト削減の余地はありませんが、コンセッション方式の導入により10%以上の事業費の削減が見込まれています

コンセッション方式の導入により水道料金や水質維持など一部で懸念されていますが、水道料金も水質管理の業務も現行のスキームと大きく変わることはありません。
○水道料金の決定スキーム
市町村との調整→県議会にて条例改正→水道料金改定
この流れに変更は全くありません。市町村との調整前に民間事業者との協議が入りますが、料金改定の根拠要素としては契約水量や物価の変動等に限定されています。
○水質維持
県が運営する浄水場や処理場の運転管理は,既に30年近くほぼ同じ民間事業者に委託しており,現在もこれらの民間事業者が安心・安全な水を安定的に供給し,又は汚水を処理しています。
水質管理においては事実上30年近く前に民間委託を行っており、現行からの悪化要因はありません。さらにはコンセッション方式の導入に従い、下記の方策を打ち出しています。
運営権者に対し、現行の県の基準と同等以上の水道水質(要求水準)を求め、さらにより厳しい管理目標値を自ら定めてもらう。
②県で水道法に基づく水質検査をこれまでどおり実施し,運営権者が県の基準及び管理目標を遵守し,適正な体制で運転していることを監視するとともに,抜き打ちでも検査を行う。
③専門家による(仮称)経営審査委員会が,県と運営権者の双方が役割を適正に果たしていることを監視し,良好な水質が保たれているかを第三者の観点で確認する。
④性能発注への移行により,要求水準未達時のペナルティーを設定する。

ここまで雁字搦めだと入札する事業者がいるのかと逆に疑問に思わなくもないですが、住民の理解を得るためにはこのぐらいの環境整備が必要だと判断したのでしょう。
改正水道法では各都道府県に広域化の義務を課しました。広域水道事業者として既に水道事業を実施している宮城県はともかく他の都道府県は対応に四苦八苦しているでしょうから、今回のケースはモデルケースとなるかどうか、全国の注目を浴びることになるでしょう。