11月の雇用状況/改善が明確に | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

本日発表の労働力調査(総務省)によると、2020年11月の完全失業率は2.9%と前年比0.7%の悪化ではあるものの、前月比では▲0.2%と4ヶ月ぶりに3.0%を下回り、就業者数も前年比▲55万人と10月の▲93万人から大きく改善しました。なお有効求人倍率も1.06倍と低い水準が続いてはいるものの2ヶ月連続で上昇しています。
就業者数は7月を底に4ヶ月連続で増加しており、2ヶ月後の2021年1月には前年比増になる可能性も十分にあります。



◯就業者の業態内訳
就業者全体では▲55万人ですが、その内訳は下記のとおりです。(いずれも前年比)
・自営業主・家族従業員:▲16万人
・正規雇用:+21万人
・非正規雇用:▲62万人

前月比では下記のとおりです。
・就業者数:+13万人
・自営業主・家族従業員:▲11万人
・正規雇用:+12万人
・非正規雇用:+13万人
雇用の調整弁としての側面が強い非正規雇用者はコロナショックにより7月には前年比▲131万人まで減少していましたが、その減少幅も半分以下まで小さくなりました。一方で正規雇用の数がこちらもピークだった7月の3578万人から3547万人と戻り切っていないのが気がかりではあります。

◯業種の内訳
前年比で大きな動きがあったのは下記の業種です。
医療・福祉:+26万人(前月比+5万人)
情報通信業:+19万人(前月比+15万人)
宿泊・飲食業:▲29万人(
前月比▲19万人
製造業:▲19万人(前月比+6万人)
(総務省 令和2年11月『労働力調査』より)

宿泊・飲食業の前年比は10月の▲43万人と比較すると改善されたように見えますが、前月比では▲19万人と大きく減少しました11月は10月に引き続きGoToキャンペーンの影響で宿泊・飲食業は改善傾向が続くものと思っていましたので、これは意外な結果です。
製造業については先月予測したとおり11月は再び前年比減になってしまいましたが、就業者数自体は3ヶ月連続で増加しています。これは輸出が比較的堅調であることと、過去記事[設備投資回復の兆し/10月機械受注統計が前年比プラスに]で書いたように設備投資が回復しつつあることが要因と思われます。

◯失業者の内訳
<前年同月比>
・完全失業者:+44万人(+29%)
・自発的離職者:+4万人(+6%)
・非自発的離職者:+25万人(+68%)
・収入を得る必要が生じたための求職者:+7万人(+41%)
<前月比(季節調整済)>
・完全失業者数:198万人。前月比▲16万人減少
・自発的な離職:▲14万人減少。
・非自発的な離職:▲8万人減少。
・新たに求職:+5万人増加
前年比ではまだまだ失業関係の数字は悪いままですが、前月比ではかなり改善が見られました。

◯休業者の推移
2020年1月:194万人
2020年2月:196万人
2020年3月:249万人
2020年4月:597万人
2020年5月:423万人
2020年6月:236万人
2020年7月:220万人
2020年8月:216万人
2020年9月:197万人
2020年10月:170万人
2020年11月:176万人

<正規雇用>
2020年1月:82万人
2020年2月:86万人
2020年3月:89万人
2020年4月:193万人
2020年5月:126万人
2020年6月:83万人
2020年7月:85万人
2020年8月:87万人
2020年9月:88万人
2020年10月:77万人
2020年11月:81万人

<非正規雇用>
2020年1月:67万人
2020年2月:70万人
2020年3月:118万人
2020年4月:300万人
2020年5月:209万人
2020年6月:99万人
2020年7月:86万人
2020年8月:80万人
2020年9月:69万人
2020年10月:60万人
2020年11月:59万人

休業者数は前月比+6万人と若干増加していますが、ほぼコロナショック前の水準に戻っており、新型コロナウイルスの感染が無くとも0人になるものではありませんので特に注意すべき点はありません。


11月は全体的には各種数値に改善が見られ、業界別に分析すると低調が懸念されていた製造業が徐々に盛り返し、逆にGoToキャンペーンで活況と思われた宿泊・飲食業が低迷する月となりました。製造業には弱くとも明るい兆しが見え始めていますが、逆に宿泊・飲食業はしばらくはGoToキャンペーンの一時停止が響くことになるでしょう。特に年末年始の書き入れ時に時短営業を求められる飲食店は営業継続自体が危ぶまれ、倒廃業が続出することになりそうです。
GoToキャンペーンの一時停止がどれだけ感染拡大防止に役立つかは未知数ですが、宿泊・飲食業界の困窮を考えると早急な再開を願わずにはいられません。