イギリスとEUとの通商協定が合意 | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
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ほんの10日ほど前に[英EU通商交渉、協議継続で合意=事実上1月1日新協定発効の断念]という記事を書いてしまいましたが、急転直下でイギリスとEUとの通商交渉が合意に至りました。
日経新聞によると、主な合意内容は下図のとおりです。

(日経新聞より引用)

現時点では不明な点も多く、フランスの欧州外交委員会のジャン・フランソワ・ラパン委員長のように「私は合意内容のすべてがわかってからしか、声明を出さないつもりです」と言いたいところではありますが、分かる範囲で内容を確認していきたいと思います。

◯関税
引き続き0のままとなり割り当ても盛り込まれませんでした。原産地規制の関係からEU外、イギリス外で製造された部品の割合によっては関税が発生することもあるものの、ほぼブレグジット前と同じと言えます。
◯ヒト・モノ・サービスの移動
これまでと異なり、自由な出入りができなくなります。ヒトの出入りについてはむしろイギリスが望んだようなものですが、モノとサービスの移動制限は内容によってはイギリス経済に負の影響を与えるでしょう。
◯漁業権
イギリスがEUに対して強気に出られる数少ないポイントでしたが、ひとまず5年半はブレグジット前と同じ内容とし、その後再協議を行うことになりました。
◯EU拠出金
イギリスはEU離脱後からは毎年負担している拠出金の負担は無くなりますが、今回の合意ではなく2018年および2019年の離脱協定にてイギリスはEUに対して『清算金』を支払うことになり、その金額は330億ポンド(約4.6兆円)と見られます。
欧州連合日本政府代表部大使の兒玉氏が2018年に作成したデータによると、イギリスはEUに対して128億ユーロの拠出金を支払い、逆に71億ユーロを受け取っていますので、差し引き57億ユーロ(約7400億円)の支払い超過です。ザックリした計算ですが、イギリスはEUに対して差し引き6年分の負担金に相当する清算金を支払うことになります。

『公正な競争環境を確保』するためのルールの内容が分からないと何とも判断がつきませんが、少なくとも関税の復活やイギリス海域でのEU漁船の閉め出しといった事態は避けられましたので、対応の実務はともかく制度上は1月1日から混乱が生じることは無くなりました。
日本としては、関税が復活することによって輸出産業が漁夫の利を得ることはできなくなりましたが、英―EU間の混乱に巻き込まれることが無くなったので、取りあえずは一安心といったところでしょうか。