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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

本日日銀の資金循環統計が発表され、昨年12月末時点で家計の現金・預貯金が積み上がっていることが改めて確認されました。

 
直近の動きは下記の通りです。
<前期比>           (単位:兆円)
     3月末  6月末  9月末  12月末
2015年 ▲7.0  +11.7  ▲5.6   +17.6
2016年 ▲8.5   +9.0  ▲3.6   +20.7
2017年 ▲4.9  +12.3  ▲1.7   +19.1
2018年 ▲9.3  +11.7  ▲3.0   +16.0
2019年 ▲5.8  +11.1  ▲5.0   +22.0
2020年 ▲7.5  +30.6   +3.5   +22.1
 
<前年比>           (単位:兆円)
     3月末  6月末  9月末  12月末
2015年 +18.9  +20.9  +18.7   +16.6
2016年 +15.2  +12.4  +14.5   +17.6
2017年 +21.2  +24.5  +26.4   +24.8
2018年 +20.3  +19.8  +18.5   +15.4
2019年 +19.0  +18.4  +16.3   +22.3
2020年 +20.6  +40.0  +48.6   +48.7
 
例年の動きでは6月と12月に賞与が支給される関係で6月末と12月末は前期比プラスに、3月末と9月末は前期比マイナスになることが多いのですが、今年は9月末も前期比プラスとなっています。また例年は9月末⇒12月末の預貯金増は3月末⇒6月末よりも多いのですが、2020年は逆に3月末⇒6月末の増加が9月末⇒12月末よりも大きくなっており、今年は例年の約3倍の+30兆円増にもなりました。その理由は3つ挙げられます。
①一律給付金
②6月賞与と12月賞与
③4・5月の消費減
 
①説明するまでもないでしょう。
②6月の賞与(特別に支払われた給与)が前年比▲2.6%だったのに対し、12月の賞与(特別に支払われた給与)は前年比▲5.1%とよりコロナショックの影響をより強く受けたため、12月の増加幅が抑えられました。(とは言っても前年とほぼ同額ですが)
③総務省の家計調査によると、2020年4月の勤労世帯の実収入は+0.9%で消費支出は▲11.1%、5月の実収入は+9.8%で消費支出は▲16.2%にもなりました。つまり定額給付金が無くとも4・5月の収支ギャップはかなり大きなものがあったと言えます。
3月末⇒6月末の前期増が例年通り約10兆円だったとすると、①の約12兆円が全額預貯金に回ったとしても、③は差し引き約8兆円になりますので、一律給付金が無くとも家計の預貯金は約8兆円増加していたことになります。(一律給付金が半分消費に回っていたら14兆円)
こうして収入が増加した一方で消費が減少から回復しなかったため、2020年6月末以降の現金・預貯金の前年比増加額は凄まじいことになりました。2020年を除く過去最大の増加額は1998年12月末の+31.7兆円でしたが、2020年6月末以降は+40兆円を超え続けています。
 
困窮している家計へ支援を行うことには何の異存もありませんが、感染拡大防止のため用途が限定されていることもあり、一律給付金という小遣いを支給したところで消費に回らずに現金・預貯金が増えるだけだというのは前々から明らかでした。今も一部で一律給付金を主張する人たちがいますが、政策を行うには根拠が必要です。給付金支給の直後は消費されずに徐々に消費に回るという意見もありますが、少なくともこれまで1回目の給付金がまったく消費につながらずに家計の現金・預貯金が過去最大の増加を示していることを見れば、一律給付金の再給付など100%有り得ないことが分かるかと思います。