7月雇用状況 非正規雇用から正規雇用へのシフト顕著/非正規雇用の休業者前年比±0 | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

昨日発表の労働力調査(総務省)によると2020年7月の完全失業率は2.9%と前年比0.6%の悪化(前月比0.1%の悪化)、就業者数は前年比▲76万人と先月の▲77万人に引き続き、前年比では大幅悪化となりました。悪化の数字ばかりが並びますが、精査するとそれほど悪い内容ではなかったと感じます。

4~7月の前年比就業者数は▲76万~▲80万人と非常に安定しており、雇用調整助成金の恩恵もあるのでしょうがコロナショックによる就業者数への影響は約80万人でほぼ確定したと言えます。雇用調整助成金もとりあえず12月までは延長が決まりましたので、今後失業率が悪化することがあっても3%を僅かに超える程度に収まるでしょう。
一方で休業者数は220万人と前年比では+18%(+34万人)とコロナ前の水準にかなり近づきつつあり、特に私が失業予備軍と危惧していた非正規雇用の休業者は前年比±0万人と完全にコロナ前の水準に戻りました。

それでは今月の詳細を書いていきます。前月の
過去記事[コロナショック/6月雇用 非正規雇用は著しく減少するも、正規雇用はほぼピークに戻る]と合わせてご覧いただければ、より理解が深まるかと思います。

◯就業者の業態内訳
就業者全体では▲76万人ですが、その内訳は下記のとおりです。(いずれも前年比)
・自営業主・家族従業員:+14万人

・正規雇用:+52万人
・非正規雇用:▲132万人

・その他(役員等):▲12万人

前月比では下記のとおりです。
・自営業主・家族従業員:▲24万人
・正規雇用:+17万人
・非正規雇用:▲1万人

前年に比べるとまだ自営業主・家族従業員が多いものの、前月比では大きく減少しており、コロナ禍により一時的に実家の手伝いをしていた人が緊急事態宣言解除から就職活動を再開し、正規雇用となったものと思われます。
先月の非正規雇用の減少は▲104万人でしたが、今月はさらに増大しました。とは言え前月比では▲1万人と誤差の範囲であり、休業者の前月比▲13万人と合わせると非正規雇用の仕事も戻りつつあると言えます。
正規雇用は5月には前年比減少まで悪化していましたが、今月再び前年比+50万人を上回り、2001年8月以降の最大値を更新しました。コロナショックによる人手不足の解消と求人倍率の低下が喧伝されてはいるものの、数字を見れば正規雇用のニーズはさほど減衰しておらず、正規雇用の一時的な減少についてはコロナ禍で就職活動に支障が生じて一時的に雇用をストップしただけだったと見られます。
なお非正規雇用については、企業としては復職は認めるものの新規雇用までは行わず、正規雇用を増やす方向に動いているようです。

◯業種の内訳
大きな減少があったのは下記の業種です。
宿泊・飲食業:▲22万人(
前月比+15万人
建設業:▲20万人(前月比+2万人)
生活関連サービス・娯楽業:▲18万人(前月比+6万人)


前年比の減少幅トップ3は前月と変わりませんが、
いずれも前月比では就業者数が増加しました。7月の就業者数は6月の新型コロナウイルスが収まっていた状況を反映すると考えられるため、特に宿泊・飲食業の回復は大きいものとなりました。逆に8月は新型コロナ拡大期だった7月の状況が反映されて再悪化することも考えられますので、7月から始まったGoToキャンペーンの成果と合わせてどうなるかを確認していきたいですね。

7月は4~6月の期間労働者の雇い止めが頻発すると危惧していた製造業の状況ですが、前年比で▲8万人、前月比で▲3万人と大きな影響は現れていません。休業者数も前年比+6万人程度に収まっており、一人一人の労働時間・残業代への影響はともかく雇用への大打撃はとりあえず避けられました。

◯失業者の内訳
<前年同月比>
・完全失業者:+41万人(+26%)
・自発的離職者:+4万人(+6%)
・非自発的離職者:+21万人(+58%)
・収入を得る必要が生じたための求職者:+7万人(+41%)
<前月比>
・完全失業者:+2万人(+1.0%)
・自発的離職者:+2万人(+2.8%)
・非自発的離職者:+4万人(+7.0%)
・収入を得る必要が生じたための求職者:▲4万人(▲16.7%)

冒頭に失業率が前月比0.1%悪化したと書きましたが、完全失業者数は+2万人でありほぼ同数です。休業者の▲16万人減を考慮すれば、
むしろ雇用環境は若干ながら改善していると見るべきでしょう。

◯休業者の推移
2020年1月:194万人
2020年2月:196万人
2020年3月:249万人
2020年4月:597万人
2020年5月:423万人
2020年6月:236万人
2020年7月:220万人
<正規雇用>
2020年1月:82万人
2020年2月:86万人
2020年3月:89万人
2020年4月:193万人
2020年5月:126万人
2020年6月:83万人
2020年7月:85万人
<非正規雇用>
2020年1月:67万人
2020年2月:70万人
2020年3月:118万人
2020年4月:300万人
2020年5月:209万人
2020年6月:99万人
2020年7月:86万人

7月の雇用統計では危惧していた製造業の期間労働者の大量雇い止めも起こらず、失業率という指標だけは悪化したものの、内容的には6月からの更なる改善が見られました。8月以降についても新型コロナウイルスの再拡大はありましたが、緊急事態宣言など第1波のような大々的な規制は行わず、むしろGoToキャンペーンで経済を回す方向に舵を切ったため大きな悪化は起こらないでしょう。
何となくですが、コロナショックによる雇用への影響の全容が固まってきたように思います。