TPPにはオブザーバー出席の仕組みが整備されておらず、当然オブザーバー出席の前例もありません。つまりイギリスのオブザーバー参加が実現すれば、以前からTPPへの参加を検討していたタイやコロンビアに先んじてTPPへ参加する可能性が高くなるということです。
コロンビアと言えば2018年のサッカーW杯日本戦で、試合開始早々にハンドでレッドカード&PK⇒日本へ勝ち点3を献上するという忖度(?)までしていましたが、イギリスに順番を抜かされることになります。
仮にオブザーバー参加という特別対応を認めるならば、「オブザーバー参加してみたけど、やっぱり加入申請やめます」とできないような条件をつけることになるでしょう。本会合は8月5日にテレビ会議で行われる予定ですが、8月には茂木外相が訪英を予定しており、日英FTAだけでなくイギリスのTPP参加が主題になることは間違いありません。
なお、日英FTAも日欧EPAやTPP11と同様に投資紛争の解決手続き(ISDS制度)の導入を見送る方向で両政府が調整していると見られ(TPPはアメリカ離脱時に凍結)、早期合意に向けた調整が進んでいます。本項目はTPP交渉の際に毒素条項だなんだと一部から猛反発されていましたが、日本のISDS制度に基づく紛争解決は官民合わせて勝率100%であり、当然ながら日英FTAにおいては日本がイギリスに対して要求していた項目ですので、日本側が譲歩したことになります。
イギリスのTPP加入はその有無ではなく時期を議論する段階に入りました。次のアメリカ大統領選でオバマ政権の副大統領を務めたバイデン氏が勝利すればアメリカのTPP復帰も十分考えられます。さらに過去記事[RCEPやイギリスのTPP参加には意地でも触れない反グローバリスト]でも触れたように日本がファイブアイズに参加することになれば、TPPとファイブアイズによる対中包囲網がいわゆる西側国家の中心軸となっていくでしょう。
昨日の記事にも書いた日本のRCEP推進はメルコスールと同様に日米通商協定を牽制するための駆け引きなのかもしれませんが、米中対立が深刻化すれば日本がアメリカ側につくのは言うまでもありませんので、対中包囲網への不参加と見なされるデメリットの方が大きいのではないでしょうか。
これからの日本は、TPPの強化を軸に脱中国を進めるという外交戦略を取ることになるでしょう。そのためには加入がほぼ確実となったイギリスだけでなく、タイなどにもTPPへ加入するべく働きかけを行ってほしいと思います。