RCEPやイギリスのTPP参加には意地でも触れない反グローバリスト | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

三橋氏は近年反米・親中韓に舵を切ったと思っていたので、この記事は少々意外でした。とはいえ意地でも重要な事項に触れずにいるため、非常に的外れな論説になっているのは相変わらずと言えます。
どうにか日本が米英と異なる親中の道を歩もうとしていることにしたいようですが、今日の日本が如何にイギリスと連携を強めようとしているかについては本ブログをご覧になっている方々にはもはや言うまでもないことかと思います。(一見様は本ブログのテーマ:TPP・日米FTA・日英EPAの記事をご覧ください

<引用①>
『623国民投票、アメリカでトランプ大統領誕生、イギリスでボリス・ジョンソン首相誕生、昨年12月のイギリス総選挙、今年1月末のブレグジット、中国武漢発祥の新型コロナウイルス感染症パンデミック勃発、中共の香港における国家安全法の適用強行と、歴史が「ある方向」に流れていくのが見えませんか。
<引用終わり>

その次に来るのがイギリスのTPP加入であることは最早疑う余地もありません。
現在日本とイギリスはそのための交渉を進めており、現政権が通常国会を延長しなかった大きな理由の一つがこれだったと推測されます。
世界の歴史は、常にイギリスから動く』のであれば、今も最もイギリスと連携を強めようとしている日本がその歴史から外れる動きをしていないことは明白です。

また、河野防衛相が「英米スパイ同盟ファイブアイズへの参加と英空母の極東展開の歓迎」を表明したとも報じられており、経済面だけでなく安全保障面でも日本は米英との連携強化を図っています。本ブログでは度々イギリスのTPP加入により「TPP域内でイギリス連邦およびファイブアイズの影響が強まる」ことの警戒を呼び掛けていましたが、日本がファイブアイズに加わるとなれば、日本は『米英にTPPの経済的主導権を渡すと引き換えに安全保障を強化する』という選択をしたことになります。
実際に同記事では
「日本の防衛相はイギリスに日本を含む11カ国の環太平洋経済連携協定(TPP11)への参加を求めた」
「TPPはもともと貿易だけでなく、太平洋地域で雇用やその他の基準を設けるためのものだった」
「TPPにはイギリスとインド太平洋の他の国々を含める必要がある」
と、これでもかと言うほどTPPに言及されています。
なお経済と安全保障では当然後者が優先されるべきですので、そのことについては特に反対する気はありません。

<引用②>
 そして、対中政策を見直し、チャイナ・グローバリズム(中共に都合が良いグローバリズム)から離れることで、
・生産設備の国内回帰が進み、民間企業設備(GDP)が回復する
・中国発の「輸入デフレ」の影響を排除できる
・技術や資本が中国に流出し、競合相手を率先して育てる、といった愚行に終止符を打てる
・国家の安全保障を強化できる

<引用終わり>

これらを進めたいのであれば、何よりも主張しなければならないのがRCEPからの離脱でしょう。
TPPについてはデマを流してでも反対して、RCEPについては容認するというのは反米親中のレッテルを貼られても仕方の無い姿勢だと思います。過去記事[反グローバリズム=反米主義?/中国との協定には反対しない自称反グローバリスト]にも書いたとおり、RCEPは具体的内容が非公開のまま合意に至っており、TPP反対論者が非難していた『秘密協定』そのものです。RCEPについて何も言及しないというのは『脱中国はただのポーズ』であるという証左と言えます。

<引用③>
政府は22日、ビジネス目的の往来再開に向けて中国や韓国、台湾など12カ国・地域との交渉入りを決めた。
(中略)
 ・・・・この、あまりにも空気が読めない日本政府・・・・、安倍晋三内閣総理大臣・・・・。
諸外国とのビジネス目的往来については『新型コロナウイルスの収束している地域』から順に交渉するのが当然です。まさか『中国からの入国はコロナ終息後も一人たりとも許すな』とでも主張するのでしょうか?
鎖国でもしない限りコロナ終息後は諸外国との出入国が再開されますので、遅いか早いの時期はコロナの収束度合いによって判断されます。中国との断行を検討しているのならともかく、単にビジネス目的往来の再開検討など遅いか早いかの違いでしかなく、そこまで針小棒大に喧伝するほどのものではありません。
そもそも日本政府はコロナショックによって脆弱性が顕在化したサプライチェーン(SC)改革に2486億円を計上し、新たに補助金を設け、生産拠点の国内回帰やアジア諸国などへの多元化を促しており、脱中国に向けた日本独自の取り組みを進めています。

脱中国よりも日本政府への非難が優先されるあまり、イギリスにフォーカスしながら現在交渉が進んでいる日英FTAに言及できないという『THE切り取り記事』に終始しています。物事を多角的に見るため、偏らない情報収集に努めましょう。

<7/26 22:00一部追記>