反グローバリズム=反米主義?/中国との協定には反対しない自称反グローバリスト | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

一昨日、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉の第31回交渉会合が開催されたと思われます。一日以上待っても何の発表も報道も見つからなかったため、「思われます」と表記しています。
RCEPについては私も過去記事[インドがRCEPから離脱か]で触れたきりほとんど記事にしてきませんでした。というのも、RCEPは一昨日行われたであろう会合の内容を含めてほとんど情報が開示されていないのです。
外務省のHPはわずかこれだけ、他には経済産業省のニュース一覧に会合の予定が記載されるだけで、具体的にどのような内容が話し合われたのかなど一切公表されません。RCEPについて公開されている資料は下記のような本当に概要を記載したものしかなく、各交渉分野でどのような内容が決められているのかを知ることはできません。
そしてこの概要資料の中で見逃せない一文がありますね。
共同首脳声明の要旨(2019年11月)
『RCEP参加15か国が,全20章に関する条文ベースの交渉及び15か国の基本的に全ての市場アクセス上の課題への取組みを終了しことに留意し,2020年における署名のために15か国による法的精査を開始するよう指示した。』
ほとんど何の発表も報道もされないまま、昨年11月に交渉は終了していました。今署名に進んでいないのはインドが離脱を表明したことだけが理由であり、もう内容は固まっているのです。
なおTPPのときは交渉前から↓の図が用意され、初めは2/3ほど白紙だったものが交渉が進むにつれて徐々に整備されていきました。
また、外務省のHPのリンク先を見れば交渉参加前の平成23年から様々な情報が公開されていたことが分かります。何故かTPPは秘密交渉と言われていましたが、TPPほど情報を開示しながら交渉を進めていた協定は無いのではないかと思います。RCEPも最低限この程度の情報が開示されない限りは賛成はできません。

さて、RCEPの交渉参加国は下記のとおりです。
・ASEAN10ヵ国
・日本
・中国
・韓国
・オーストラリア
・ニュージーランド
・インド

交渉分野は下記のとおり、多岐にわたります。
(1)冒頭・一般的定義
(2)物品貿易
(3)原産地規則(品目別規則附属書を含む)
(4)税関手続・貿易円滑化
(5)衛生植物検疫措置
(6)任意規格・強制規格・適合性評価手続
(7)貿易救済
(8)サービス貿易(金融サービス,電気通信サービス,自由職業サービス附属書を含む)
(9)自然人の移動
(10)投資
(11)知的財産
(12)電子商取引
(13)競争
(14)中小企業
(15)経済技術協力
(16)政府調達
(17)一般規定・例外
(18)制度的事項
(19)紛争解決
(20)最終規定

衛生植物検疫措置が含まれていますね。食品の安全基準が緩和され、中国からの危険な食品の輸入が増えるかもしれません。
自然人の移動が含まれていますね。発展途上国からの移民が入ってくるようになるかもしれません。
投資が含まれていますね。日本の国有資産が民営化され、外資に買い漁られることになるかもしれません。
政府調達が入っていますね。日本の公共事業が安い労働力を連れてくる外資に席巻されるかもしれません。

どれもこれもTPPの反対派が喧伝していた懸念事項であり、TPPと違って情報が開示されていない以上、否定する根拠はありません。TPPに反対していた自称反グローバリストたちは何故RCEPに反対しないのでしょうか?言うまでもなく、アメリカが参加していないからです。
結局彼らは単なる反米主義者であり、アメリカが絡まない案件については何の興味も無いのです。
個人的にはアメリカよりも中国の方が警戒が必要だと思っていますが、彼らはデマを流してでも反米感情を煽り、逆に中国との関係強化においては何の動きも見せません。彼らにとっては『中国の核はきれいな核』なのでしょうね。もはや日本における反米利中の体現者と言っても過言ではないでしょう。

TPP亡国論の著者やその一派など、自称反グローバリストたちの妄言には気をつけましょう。