南米4カ国(メルコスール)とのEPAを政府が検討 | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

昨日記事にしたRCEPよりも更に目にする機会の少ない南米南部共同市場(メルコスール)とのEPAを日本政府が検討しているとの報道がありました。
https://www.agrinews.co.jp/p49171.html

メルコスールとは、ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイの4ヵ国が参加する関税同盟です。これらの国と個別に関税を設定することはできず、域内(4ヵ国同士)と域外(他の国)にそれぞれ共通の関税を設定するというEUと同じ構造になっています。
つまり日本がGDP世界9位のブラジルと関税交渉を行うためにはこのメルコスール全体と交渉を行う必要があるということですね。
ちなみにこの4ヵ国のGDP比はブラジルが3/4を占め、アルゼンチンが21%、他2国が合計で4%とかなり差が激しくなっています。仮にメルコスールとEPAを締結するのであれば、日本にとってはブラジルとの貿易が最大の目的となるでしょう。

なおJETROによると、ブラジルに進出している日系企業のFTAやEPAのニーズは、ブラジルから輸出する企業においては小さく、輸入する企業においては大きいそうです。つまりブラジルが輸出する品目は鉱物資源や食料など低関税のものが多く、輸入する品目には高関税がかかっていることが多いということですね。
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2018/0604/b0a3811da47d5259.html

鉱物資源はともかく、食料の関税は日本にとっては(少なくとも政治的には)非常に大きな意味を持ちます。特に鶏肉は今でも日本の輸入の70%以上をブラジル産が占めており、更なる輸入拡大に繋がる可能性があります。
・・・というのが自由貿易協定反対派の方々のよくある理屈ですが、実際の鶏肉の関税はいくらなのか調べてみます。
鶏肉の輸入のほとんどは冷凍肉であり、その輸入価格は約230円/kgです。100gあたりだと23円になります。関税はこの12%なので23×0.12=2.76円。これが関税撤廃時に安くなる金額です。100gあたり2.76円です。
データは農畜産業振興機構から引用
https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_000073.html

なおブラジルは世界最大の牛肉輸出国ですが、日本は防疫上の理由からブラジルからは一部地域を除いて輸入禁止にしています。EPA交渉時には当然ブラジルはその禁止措置の撤廃を求めてくるでしょうが、日本への牛肉輸出を狙うアメリカが圧力をかけてくるのは火を見るより明らかです。
ひょっとしたら日本とメルコスールのEPA報道は、日米貿易交渉において「アメリカが無茶を言うようならブラジルから牛肉を輸入するぞ」と、日本が交渉カードとして見せ札を切ったのかもしれませんね。