日英FTA交渉が実質大筋合意 | 上下左右

上下左右

台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

今月5日から茂木外務大臣が訪英して日英FTAの交渉を行っていましたが、2日間の閣僚協議を終え、記者会見した茂木氏は新協定について「(交渉)項目の大半で実質合意し、主要な論点について認識の一致に至った」と述べたそうで、ついに実質的な大筋合意に至った報じられています。
イギリスがEUから離脱するにあたり、イギリスとの日欧EPAの効力も今年の年末で切れてしまうため、日英ともに来年1月の新協定発効を目指して急ピッチで交渉を進めており、過去記事[日英FTA、6週間以内の合意必要─松浦首席交渉官]で書いたように7月末までに合意というのは前代未聞のスケジュールだと思っていましたが、ほんの一週間遅れで本当に合意に至りました。
もちろん日本も早いに越したことはないのですが、この異例のスケジュール感はイギリス側の都合という側面が強いと思われます。過去記事[イギリスが日本やアメリカと通商交渉を開始]にも書きましたが、イギリスにとって最大の市場はEUですが、EUにとって最大の市場はイギリスではありませんから、英欧FTAの重要性はどうしてもイギリスの方が重くなり、EUの方が交渉で強気に出やすくなります。そこでイギリスとしてはEU以外の市場を開拓し、EU市場の比重を下げることで対等な交渉に臨もうとしているのです。
そのためにはTPP加入を現実的なレベルまで引き上げなくてはなりませんが、TPP加入の鍵になるのは言うまでもなく日本であり、イギリスの対EU交渉の鍵は日本であると言っても過言ではない状況になっていました。今回の日英FTAは間違いなくTPPへの足掛かりであり、イギリスは茂木外相が訪英している今月5日のTPP会合(テレビ会合)へのオブザーバー出席を要望するなど、TPPへの参加は秒読み状態にあります。
そのために英国政府は茂木外相の訪英に先立ち、NECや富士通がファーウェイに代わる調達先となる可能性に言及して手土産を用意し、訪英中には英製薬大手アストラゼネカ社から日本国内向けに1億2千万回分の供給を受けることで基本合意させるなど、日英FTAの交渉外においても大盤振る舞いを行いました。
日英FTAの合意内容はまだ公表されていませんが、こうしたイギリスの姿勢から日本有利な内容で合意したのではないかと予想しています。
日本政府もこのスケジュール感での合意のためには相当な政治的リソースを割いており、通常国会が延長されていてはこの早期妥結はまず不可能でした。国会を開かないことを非難する声もありますが、政府は遊んでいるわけではなく日本の国益のために政治を進めているのです。野党に振り回されるために国会を開くことと、日英FTAを進めて新型コロナウイルスのワクチンを確保をすることのどちらが優先度が高いかなど言うまでもありません。

日英FTAは大筋合意したとは言え、まだ詰めの部分が残っていますし、確定後にはTPP交渉が本格的に始まるでしょう。まだまだイギリスとの交渉は続きますが、動きを注視していきたいと思います。