特別給付金10万円の是非/内閣の実行力が問われる事態 | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

ブログの再開時から今回のコロナショックに対する経済面の対策を分類すると三種類の対策が必要になると説いてきました。
①収入が激減した困窮者に対する生活支援
②売上が激減した業者(生産者)に対する支援
③冷えきった日本経済の活性化

コロナショック対策で紆余曲折の末、一人当たり10万円の特別給付金が支給されましたが、これは①と③の二つに対する政策に当たります。果たしてどれほどの効果があったのでしょうか?
令和2年5月の家計調査によると、勤労者世帯の実収入(二人以上の世帯)は前年同月比+9.8%(名目・実質)、二人以上の世帯の消費支出は16.2%の減少(名目・実質)となっています。
一人当たり10万円の特別給付金を最大の要因として実収入が前年比約1割も増加したわけですが、消費支出は大幅に減少しています。5月はほぼ丸々緊急事態宣言下にありましたので消費が抑制されるのは当然のことではありますが、逆に言えば緊急事態宣言下においては給付金の支給を急いだところで『③冷えきった日本経済の活性化』には到底繋がらないということが明確になりました。
さらに家計調査を精査してみると、意外なことに5月の世帯主収入は前年同月比+0.9%、世帯主の配偶者収入は同+14.3%とコロナショックの影響が全く見られない結果となっています。5月の毎月勤労統計調査では緊急事態宣言を受けて残業代が減るという程度には賃金は減少していますので、「二人以上の勤労世帯」に該当しない独身労働者の収入減少が著しかったのではないかと思われます。
「二人以上の勤労世帯」の収入が減少していないのであれば、非労働者である子供や高齢者まで給付の対象にするのは『①収入が激減した困窮者に対する生活支援』には繋がらないということになります。コロナショックがあっても非勤労世帯(年金や生活保護受給者など)の収入に変化はありませんし。
結局一人当たり10万円を一律給付するという政策は、コロナショック対策に必要な①③のいずれにも該当しないことになります。もちろん10万円で助かった生活困窮者はいたのでしょうが、生活に困窮していない人はそれ以上の給付金を受け取っており、政策的には極めてアンバランスであったと言わざるを得ない結果になっています。

過去記事[10万円の使い方]『国民の声』に押し切られ適切な政策がねじ曲げられた書きました。今の感染再拡大が特別給付金のせいだとは言わないものの、給付金が目的と内容が一致しない政策になったのは明白です。長期政権の疲れなのか、現内閣は今年に入ってから特別給付金への変更や検察庁法の改正、種苗法の改正など世論に阿りすぎて適切な政策が実行できなくなっており、実行力が問われる事態になっています。
次の総選挙が囁かれ始めていますが、それまでには以前の実行力を取り戻してほしいと願っています。もっとも野党は相変わらずのようなので、選挙があっても自民党は安泰でしょうが。