3ヶ月ぶりの記事更新~お肉券は悪手ではない | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

昨年末以来の更新です。
新年早々に体調を崩し、そのままなし崩し的にブログから離れていましたが、気になった事柄があったときにはまた記事をアップしていこうと思います。
今後は不定期更新になる予定ですが、振り返ってみると毎日1記事は少々無理がありました。

というわけで復帰後第一弾は今話題のお肉券です。
色々なところで批判されているこの政策案ですが、冷静に考えれば特に問題のある政策ではなく、感情論でのみ非難されているように感じます。

今回のコロナショックに対する経済面の対策を分類すると三種類の対策が必要になります。
①収入が激減した困窮者に対する生活支援
②売上が激減した業者(生産者)に対する支援
③冷えきった日本経済の活性化

今の日本(世界)は言わば経済活動を自粛している段階であり、経済活性化を目的とした③はコロナ騒動が収束してから実施する政策なので、このうち今必要なものは①と②に限られます。現時点では③は検討しても無意味とさえ言えるでしょう。
と言うのも、新型コロナウィルスの感染拡大は収束どころか未だピークがいつになるかさえ分からない状況であり、自粛期間が半年なのか、一年なのか、それ以上なのか、またどのくらいの経済的ダメージがあるのか、全容は誰にも分からないわけですから適切な対策など分かる筈もないのです。
さらに言えば、③につながる政策は現時点では感染拡大を防ぐためになるべく避けるべきでしょう。今政府は感染拡大を防ぐため経済活動の自粛を要請している段階であり、③はそれと真っ向から反発する政策なのですから。

コロナショックに対する支援策が色々と検討されていますが、各政策をそうした視点で見てみるとザックリ下記のように分類されます。

所得減世帯への現金支給・・・①
失業給付の延長/拡大・・・①
企業への融資拡大政策・・・②
お肉(他高級食材)券・・・②
国民への一律現金支給・・・①③
消費税の減税・・・①③
旅行/イベントクーポン券・・・②③

経済活動の拡大⇒感染拡大につながらないよう、政府としては現時点では③の政策を実行することは避けたいわけです。ですからネット上などで囂しく要求されている全国民への一律現金支給や消費税減税については消極的な姿勢を示しているわけですね。
逆に①②はなるべく早急に実施するべき政策になるわけですが、ここでお肉券に非難が集中しました。

ところでお肉券の一体何がそれほど非難されるべきなのでしょうか?
春のかきいれ時にコロナショックが重なった影響は非常に大きく、生産者だけでなく流通業者も多大な損害を被っています。
コロナショック対策の最終的な目的は『コロナショック以前と同じ状態に近づける』ことですから、需要が落ち込んだ業界については需要の喚起策を実施すべきなわけで、お肉券はまさにこの主旨に則った政策と言えます。
今や和牛は世界的にも高く評価され、輸出やインバウンド需要の取り込みのためにも日本の重要な商品であり、また「コロナショックで大きな被害を被った業界」であることに疑いはなく、当然支援の対象になるべき業界です。
生産者への直接補償という手段もありますが、売上が激減しているということは生産者だけではなく加工業者や流通業者も同様に大ダメージを負っているということですので、そちらの支援にもつながるお肉券は有効な手段と言えます。
利権絡みとの批判もありますが、不当な利益を供与するならともかく今回のケースは純然たる突発的被害に対する支援策でしょう。

お肉券に先駆けて旅行クーポン券が検討されていると報道されたときはこれほどの非難を浴びていなかったように感じます。結局『和牛』という高級食材の持つイメージが富裕層支援のイメージに繋がってしまったのでしょう。
本質的には麻生総理時代の『カップラーメンの値段が分からない=庶民感覚がない』という非難と変わりません。

民主党への政権交代から10年半、日本国民が成長していないのか忘れてしまったのか、非常に嘆かわしいことです。国民一人一人が各政策に対し、その目的や効果を冷静に判断する力を培わねばなりません。