お肉券の中止と衆愚政治 | 上下左右

上下左右

台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

昨日も記事にしましたが、お肉券が中止の方向で動いているようです。「お肉券」「お魚券」構想頓挫 自民の経済提言に入らず
結局「支援は在庫を減らすためのイベントなどの補助にとどめる」と見当外れの支援策になりそうな流れです。

なんと嘆かわしいことでしょうか。

『生産者の支援策』としてお肉券のデメリットを説明できる人はどれだけいるでしょうか?もちろん「和牛支援など不要だ!TPPや日米FTAがあるから牛肉は輸入で十分だ!」という主張であれば是非はともかく筋は通っていますが、TPP等に反対していた自称保守の方々からも擁護の声が聞こえなかったのは実に不思議なことです。
彼らはTPPや日米FTAのときにはあれほど国内産業の保護を喧伝していたのに、需要が明確に激減して真に保護が必要な今回のケースにおいて「和牛=高級品=富裕層のカテゴリー」という連想ゲームに従い、国内産業を見殺しにしたわけです。
自分達が弱者の味方の振りをした左翼かぶれの似非保守であると白状したも同然と言えるでしょう。

昨日の記事で、今回のコロナショックには三種類の対策が必要になると書きました。
①収入が激減した困窮者に対する生活支援
②売上が激減した業者(生産者)に対する支援
③冷えきった日本経済の活性化

③は経済活動を自粛している現在においては実施できるわけもなく、コロナウイルスの感染が収束した後の実施になります。では「在庫を減らすためのイベント」が活動自粛期間中に可能でしょうか?できるわけがありません。
つまりこの支援策はコロナウイルスの感染収束後に実施するものであり、今売上が激減して困っている業者を何一つ助けるものではないのです。在庫にしても「全国のと畜場の倉庫に和牛の在庫が積み上がっており、これ以上入らない」と言われているのに、いつまで積み上げさせるつもりでしょうか?

売上が激減して在庫が積み上がっている現在において、感染拡大につながらないように売上を回復させるには一般家庭に買ってもらう以外の方法はありません。輸出に頼ろうにも和牛の輸出量は生産量の1割にも満たない水準です。
そして一般家庭に買ってもらうなら用途を限定した商品券、すなわちお肉券を発行する以外の手段はないでしょう。

これほど単純な論理なのに、これ以上に単純な「和牛=高級品=富裕層のカテゴリー」という連想ゲームによって実施できないことになりました。昨日に続けて書きますが、「カップラーメンの値段が分からない=庶民感覚がない」という連想と本質的には変わりません。

我々は高い授業料を支払ったはずです。いい加減にこんな連想ゲームに囚われる思考から脱しなければ、いつか再び悪夢を見ることになることは避けられないでしょう。