令和2年5月の実質賃金は▲2.1%(速報値) | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

本日、5月の毎月勤労統計調査の結果が公表されました。本記事も先月の過去記事と合わせてご覧いただければと思います。
5月は予想通り、賃金が大きく下落しました。と言っても内容的には、緊急事態宣言を受けて仕事が減る⇒残業が減る⇒残業代が減るというだけのもので、緊急事態宣言あっての現象と言えます。

<概要>
常用雇用者:前年同月比+0.6%
現金給与総額(名目賃金):同▲2.1%
消費者物価指数:同±0.0%
実質賃金:同▲2.1%
との結果です。

<雇用者数>
先月同様、総務省の労働力調査では労働者は前年比▲76万人と大きく減少していたのに、厚生労働省の毎月勤労統計調査では常用雇用者は増加しており、非常用雇用者=不定期労働者がそれだけ減少したことが伺える内容になっています。
特にパートタイム労働者が▲3.0%と大きく減少したことから、不定期労働者に加えて短時間労働者の人員整理が本格的に始まっていることが伺えます。

<一般労働者の給与>
所定内給与がほぼ変わらず(+0.2%)所定外給与が大きく減少した(▲25.8%)結果、全体給与も▲2.1%となりました。
先月の所定外給与の減少が▲12.8%だったことを考えると、5月の経済活動の凄まじい停止ぶりが見えてきます。

<パートタイム労働者の給与>
一般労働者と違い、固定給ではなく時間給で働いている方が多いと思われるパートタイム労働者ですが、総労働時間が▲13.4%も減少した結果、支給総額も▲4.1%と大きく減少しました。
なお労働時間の減少と比較すると支給総額の減少はまだ緩やかであり、パートタイム労働者の時間あたり給与はなんと前年比+10.2%と急伸しています。

言うまでもありませんが、これは単なる時給の上昇というよりも、先月に引き続き一定の休業者が賃金を支給されたことで分母となる労働時間が減少して起こった現象と推測されます。労働力調査によると先月から非正規労働者の休業者は91万人も減少しましたが、非常用雇用者も大きく減少していることから、無休で休業させられていた非正規雇用者の退職が相次いだ結果なのでしょう。

<職種の分析>
飲食サービス業等:▲9.5%
運輸・郵便業  :▲8.0%
複合サービス事業:▲7.1%

引き続き飲食サービス業等(飲食サービス業+宿泊業)の給与低下が著しくなっていますが、意外なことに運輸・郵便業の給与低下が大きくなりました。宅配ニーズの増加に伴い労働時間も増えているのかと思いきや他の産業と同様に労働時間も減少しており、長距離トラックや新幹線などのニーズ減少が小売宅配のニーズ増加を上回っていることが伺えます。
また、製造業の労働時間▲10.0%も非常に気になるところです。各種サービス業は自粛を要請されていたので労働時間が減少するのは仕方ないことですが、製造業は特に自粛を要請されていたわけではありません。世界的には新型コロナウイルスの感染は収束の気配さえ見せておらず、製造業が息を吹き返すのは当面先のことになるでしょうから、7月からは大量雇い止めが起こる可能性が高そうです。

5月はほぼ1ヶ月間緊急事態宣言が発令されていましたので、残業代が減少するのはある意味当然のことと言えます。私もかなり減りました。
6月はかなり町中に人出も戻り、通勤電車もコロナ前の状況にかなり近づいてきましたので、雇用情勢についても一定の改善が見られるでしょう。しかしここ一週間ほど感染者が再び拡大しており、第2波次第ではまた経済活動の停滞が余儀なくされることになります。
これ以上感染が拡大しないことを祈るばかりです。皆さんも重々お気をつけください。