令和2年4月の実質賃金は▲0.7%(速報値) | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

本日、4月の毎月勤労統計調査の結果が公表されました。本記事も先月の過去記事と合わせてご覧いただければと思います。
<概要>
常用雇用者:前年同月比+1.5%
現金給与総額(名目賃金):同▲0.6%
消費者物価指数:同+0.1%
実質賃金:同▲0.7%
との結果です。

<雇用者数>
総務省の労働力調査では労働者は前年比▲80万人だったのですが、常用雇用者は+76万人の増加となりました。増加したとはいえ本稿の『常用雇用者』の方が労働力調査の『雇用者』よりもまだ800万人少ないことを鑑みれば、矛盾ではなく非常用雇用者=不定期労働者がそれだけ減少したことが伺える内容と言えるでしょう。
また、一般労働者が引き続き増加している一方でパートタイム労働者は▲0.4%と僅かながら減少しており、不定期労働者に加えて短時間労働者の人余りと人員整理が始まっていることが伺えます。

<一般労働者の給与>
所定内給与が変わらず(±0.0%)所定外給与が減少(▲12.2%)が減少した結果、全体では▲0.6%となりました。
基本給が変わらず残業代が減少した結果、全体給与も下がったということですね。

<パートタイム労働者の給与>
一般労働者と違い、固定給ではなく時間給で働いている方が多いと思われるパートタイム労働者ですが、総労働時間が▲9.9%減少した結果、支給総額も▲3.9%と大きく減少しました。
なお労働時間の減少と比較すると支給総額の減少はまだ緩やかであり、パートタイム労働者の時間あたり給与は前年比+6.0%と急伸していますが、例月と比較して極めて大きな伸び幅であることから、これは単なる時給の上昇というよりも一定の休業者が賃金を支給されたことで分母となる労働時間が減少して起こった現象と推測されます。労働力調査で非正規労働者の約15%にあたる300万人が休業していることが発表され、無給となった休業者がどれだけ発生したのか不安でしたが、雇用調整助成金のおかげかある程度は食い止められたとみて良いでしょう。

<職種の分析>
飲食サービス業等:▲11.4%
生活感連サービス等:▲7.4%
複合サービス事業:▲4.2%

やはり飲食サービス業等(飲食サービス業+宿泊業)の給与低下が著しく、他の産業と比較して元々圧倒的に低かった給与が更に低下するという惨状になっています。
飲食サービス業等はパートタイム労働者比率が77%と他に類を見ない高さであり、労働時間も▲21.5%と最も減少しているので、それを考慮すれば給与の減額もまだ抑えられていると言えるかもしれません。
逆に複合サービス事業については労働時間の減少(▲1.1%)よりも給与の減額の方が大きく、コロナショック以外にも問題を抱えている可能性があります。


4月の毎月勤労統計調査では経済活動の自粛により一人あたりの賃金は下がっていますが、雇用者の増減を加味すればまだコロナショックの影響はまだ限定的と言える結果となっています
しかし5月はほぼ1ヶ月間緊急事態宣言が発令されていましたので、4月を上回る悪化となるのはほぼ間違いないでしょう。油断は禁物です。