コロナショック/就業者▲80万人 | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

とうとう政府の公式な統計でコロナショックの影響が現れ始めました。
本日発表の労働力調査によると2020年4月は失業率こそ前年比0.2%(前月比0.1%)しか悪化していないものの、就業者数は前年比▲80万人と88ヶ月ぶりに減少に転じました。労働者人口が限られている以上いつかは減少に転じるものですが、その減少幅に戦慄します。
今月の詳細を書いていきますが、先月の過去記事[コロナショックによる貧困化の始まり]と合わせてご覧いただければ変化がより分かりやすくなるかと思います。

◯就業者の業態内訳
就業者全体では▲80万人ですが、その内訳は下記のとおりです。(いずれも前年比
自営業主・家族従業員:▲32万人
・正規雇用:+63万人
非正規雇用:▲97万人
・その他(役員等):▲14万人

先月は自営業主・家族従業員の減少が目立ちました(▲40万人)が、いよいよ非正規雇用に影響が現れ始めました。もちろん正規雇用が+63万人も増えていることから、4月にスタートした同一労働同一賃金の影響で非正規雇用から正規雇用へのシフトがピークを迎えているという要素もあるでしょう。しかし正規雇用の増加の1.5倍も非正規雇用が減少しており、つい先日も過去記事[企業の人手不足感が急速に解消/過剰感が急増]で書いたとおり、これだけ非正規雇用が減少してもまだ2割以上の会社が非正規雇用を人手過剰と感じています(アンケートは4/16~4/30の結果)ので、非正規雇用の減少は始まったばかりでしかなく、次月以降も確実に進んでしまうでしょう。

◯業種の内訳
大きな減少があったのは下記の業種です。
宿泊・飲食業:▲46万人(前月比▲28万人)
卸・小売業:▲33万人(前月比▲35万人)
製造業:▲17万人(前月比▲5万人)
宿泊・飲食業の減少が凄まじいことになっています。卸・小売業や製造業は分母が1000万人を超えているため減少の割合自体はそれほど大きくない(それでも卸・小売業は▲3%)のですが、宿泊・飲食業は前年比▲11%も減少しており正規・非正規合わせて9人に1人が職を失ったことになります。
また、製造業が先月の前年比▲24万人から持ち直しているように見えますが、前月比だと▲5万人とやはり減少傾向にあります。

◯失業者の内訳
<前年同月比>
・自発的離職者:▲4万人(▲5%)
非自発的離職者:+8万人(+20%)
収入を得る必要が生じたための求職者:+10万人(+59%)
<前月比>
・自発的離職者:±0万人(±0%)
非自発的離職者:+8万人(+20%)
・収入を得る必要が生じたための求職者:+4万人(+10%)

先月と同じことを書くようですが、自発的離職者が減少する一方で非自発的離職者や収入を得る必要が生じたための求職者が増えたということは、有職者は積極的な転職を控え、一方で世帯収入が減少したため新たに就業を求める人が増えたということです。特に収入を得る必要が生じたための求職者が前年比1.6倍と急増しており、家計収入が減少した世帯の増加が伺えます。

そして今月の就業者▲80万人という数字は確かに非常にショックの大きなものですが、それを超える衝撃の数字が合わせて発表されました。

◯休業者の推移
2020年1月:194万人
2020年2月:196万人
2020年3月:249万人
2020年4月:597万人
<正規雇用>
2020年1月:82万人
2020年2月:86万人
2020年3月:89万人
2020年4月:193万人
<非正規雇用>
2020年1月:67万人
2020年2月:70万人
2020年3月:118万人
2020年4月:300万人

失業予備軍とも言える非正規雇用の休業者は実に300万人にも上りました。非正規雇用を人手過剰だと感じている業種の第3位が製造業であることを考えると、自粛が明けても休業状態が続く被雇用者は極めて多く、これからも解雇や雇い止めになる就業者はますます増えていくことでしょう。
今日発表されたデータは4月のものであり、足元の雇用悪化が更に進んでいることは疑念の余地がありません。

もはや一刻の猶予もありません。政府も二次補正予算を閣議決定したようですが、迅速な対応を強く求めます。