企業の人手不足感が急速に解消/過剰感が急増 | 上下左右

上下左右

台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

コロナショックによって企業の人手不足感が急速に解消され、また逆に人手過剰感が急激に高まっています。
帝国データバンクの2020年4月調査によると、正社員が不足している企業は31.0%(前年同月比▲19.3ポイント)となり、4月としては4年ぶりに4割を下回りました。また非正規社員が不足している企業は16.6%(前年同月比▲15.2ポイント減)で4月としては7年ぶりの1割台となりました。正社員が不足している企業は前年比4割減、非正規社員が不足している企業は前年比5割減という凄まじい減少ぶりです。
これだけであれば単なる人手不足の解消と片付けられなくもないのですが、何より恐ろしいのは人手過剰と答えた企業の急増です。
正社員が過剰と答えた企業は21.9%(前年同月比+13.5ポイント)、非正規社員が過剰と答えた企業は21.6%(前年同月比+14.8ポイント)となりました。正社員が過剰と感じている企業は前年比2.6倍、非正規社員が過剰と感じている企業は実に前年比3.2倍にもなっているのです。
コロナショックによって解雇や雇い止めになった非正規社員が1万人を超えたというニュースがありましたが、総務省の労働力調査によると2020年3月の非正規社員は2150万人ですから、1万人という数字はわずか0.05%という誤差レベルでしかないためあまり気にしていませんでした。
しかし今回の調査によって急激に人手過剰が進んでいることが判明しました。仮に非正規社員を過剰と考えている企業が20%の非正規社員をリストラした場合、2150万人×21.6%×20%=92.9万人もの雇用が失われることになり、失業率は現在の1.5倍以上になります。

帝国データバンクのデータが見つからなかったので厚生労働省の労働経済動向調査で代用しますが、リーマンショックの際は正規雇用の過剰感が強く(2009年5月 不足12、過剰27)、非正規社員の過剰感は小さい(2009年2月 不足16、過剰17)ものでした。しかし今回はリストラしやすい非正規社員の過剰感が強くなっており、瞬間的な失業者数の増加はリーマンショックを上回る可能性が高いと言えるでしょう。
なお、「人手過剰」な業種は下記のとおりです。
これまで人手不足の代表格だった、宿泊・飲食・その他サービス業が一気に人手過剰となっています。これらの業種はコロナ禍により自粛を要請されていたので当然と言えば当然の結果でしょう。逆にコロナ禍が収まればまた人手が必要になってくる業種とも言えます。
しかし、非正規社員が過剰と答えた業種の第3位に「輸送用機械・器具製造」がランクインしているのは深刻な状況です。過去記事[コロナショックによる貧困化の始まり]でも触れましたが、2020年3月の労働力調査で最も労働者が減少したのは製造業でした。製造業は労働者が多いため、減少率が低くとも全体への影響は大きくなり、その製造業の代表と言える「輸送用機械・器具製造」が人手過剰と感じているということは、相当数のリストラの断行が予想されるということです。しかも宿泊や飲食と違い営業自粛を要求されていた業種でもないため、コロナ禍が収まってもそうそう仕事量は回復せず、長期間に亘っての人員縮小が行われていくでしょう。
日本の雇用統計の発表はかなり遅いため、まだコロナショックによる雇用の悪化のデータはありませんが、雇用情勢が一気に悪化しかねない兆候は現れ始めています。