民主主義の危機~香港と国家安全法 | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

先日、中国が全人代にて香港に対する国家安全法の採択を表明しました。
条文や罰則など詳細はまだ未定のようですが、①国家分裂(香港独立運動)、②中央政府転覆、③テロ行為、④外国の干渉、が防止する対象として挙げられており、「中央の国家安全関連の政府機関は必要に応じて香港に出先機関を設立し、職責を履行する」ともされているため、中国の国家安全省など治安・防諜機関が香港に直接乗り込んでデモの取り締まるといったことが可能になりそうです。
さらには「香港特別行政区の行政機関、立法機関、司法機関は関連法律の規定に基づき国の安全を危うくする活動を効果的に防止し、抑止し、処罰しなければならない」とあり、分立する三権をすべて中国共産党が握るという、一国二制度を根底から覆す内容になる見込みが高いでしょう。
もはや一国二制度の否定を隠そうともしない中国に対し、当然ながら各国からすでに非難の声があがっています。イギリス、アメリカ、オーストラリア、カナダの4カ国は中国が香港の国家安全法を採択したその日の内に中国を批判する共同声明を出し、イギリスは中国が反体制活動を禁じる「香港国家安全法」の導入を停止しない場合、英国海外市民旅券(※)を保有する香港人に対し、英市民権を獲得する道を開く可能性があると述べています。
(※)香港がイギリスの植民地だった時代に香港人に対して発行された旅券

流石にこの件についてはイギリスも敏感になっており、英連邦を巻き込んで共同声明を出しました。更には移民問題を一つの重大問題と捉えてEUを離脱したにも関わらず、香港人に対して発行した旅券の所持者に市民権を与える選択まで示唆しました。

香港は人口約750万人の民主主義都市で、人口としてはスイスより2割少なくシンガポールやフィンランドより3割多い規模であり、大きくはないものの独立国家と比較しても遜色ない水準と言えます。
今そんな民主主義勢力の一つが蹂躙されようとしています。中国はさらには台湾との「平和的な再統一」が望ましいとまで言い出しました。中国と台湾を統合する上では「一国二制度」と「平和的な再統一」が最適だと述べたようですが、まさに今その一国二制度を脅かしておきながらよく言えたものです。

コロナショックを機会に世界的な脱中国の動きが強まっています。さらに孤立を深めるような動きをするようであれば、国際社会のサプライチェーンから一層排除されることになるでしょう。