まず,ICHの用量反応試験(Dose-response studies)に対する考えを確認する。以下の様に,開発過程に必須と考えている。

2.用量―反応情報の収集,
1)用量―反応関係の評価は,医薬品の開発過程に不可欠なものとすべきである
 用量―反応関係の評価は,医薬品の開発過程に不可欠なものとすべきである。医薬品の開発過程には,その医薬品の安全性および有効性の確立に当然あるべき事項として用量―反応の評価のためにデザインされた試験を含めるべきである。用量―反応情報の収集が開発過程の一部として組み込まれているならば,用量―反応関係を無視した開発計画に比べ通常は時間の無駄もなく,余分な努力も最小限で済むことになろう。

また,ICHは用量反応について,個々の患者の用量-反応曲線母集団の平均的な(群としての)平均的な用量-反応曲線を区別している。

 個々の患者の開始用量に対する反応を観察した後に用量を調整する際,最も役立つことは,個々の患者の用量―反応曲線の形状に関する情報である。これは,通常は母集団の(群としての)平均的な用量―反応曲線と同じではない。従って,個々の患者の用量―反応曲線の推定を可能にするような試験デザインは,漸増法の指針として役立ちうる。しかしながら,このようなデザインおよびその分析についての経験は非常に限られている。

試験デザインにより,得られる用量反応曲線は変わる。以下にICHE4で挙げられているデザイン4種を示す。

  • 並行群間比較用量-反応試験parallel dose-response study):各患者は固定用量(fixed dose)に割り付けられる。個々の患者に投与されるのは1用量なので,個々の患者の用量-反応曲線は得られない。得られるのは母集団の用量-反応曲線
  • クロスオーバー用量-反応試験(cross-over study of different doses):母集団の用量-反応曲線の両方だけでなく個々の患者の用量-反応曲線も得られる。しかし,デザイン上,持ち越し効果(carry-over effect)は問題になりうる。漸増法と比べて,用量と時間の交絡はない。必ずしも全員が各用量投与されるつりあい型不完備ブロック計画(balanced incomplete block designs)を用いなくてもよい。
  • 強制的漸増試験:母集団の用量-反応曲線の両方だけでなく個々の患者の用量-反応曲線も得られる。
  • 任意漸増試験:母集団の用量-反応曲線の両方だけでなく個々の患者の用量-反応曲線も得られる。
 
最も,広く受け入れられているのは,並行群間比較用量-反応試験である。並行群間比較用量-反応試験で用いる用量を決めるために,その他デザインの用量反応試験を初期に実施することも推奨されている。前半で述べたように,理想的には個々の患者の用量-反応曲線が欲しいが,持ち越し効果等の問題と切り離すことが難しく,現実的には並行群間比較用量-反応試験をメインに用量-反応情報を得ることが行われているのだと思う。
 

引用

1)ICHE4(日・英)