ICHE14ガイドラインは完全な臨床データパッケージ(complete clinical data package,CCDP)におけるTQT試験の意義を説明している(1)。新薬開発で不整脈リスクを評価する必要性があることは明らかだが,過去には2013年7月にFDAのDr. Norman Stockbridgeが「2015年7月までにICHE14を廃止する。」と発表があったり(2),2018年頃に日本製薬工業協会からQT延長試験の廃止提言があった(3)(4)。なお,ICHからICH E14の廃止の発表はされていない。
結果としてICHE14が廃止されるようなことはなく,2020年時点で,ICHはICH E14と対応する非臨床ガイドラインICHS7Bを改訂中である(5)(6)。
廃止案がでた背景にあるICHE14が抱える問題点について整理する。非臨床における心室再分極遅延(QT間隔延長)の可能性を評価するICH S7Bも併せて紹介する。
【概念図】
・ICH E14およびS7Bガイドラインは,主に早期活性型遅延性整流カリウム電流(IKr)抑制に基づくQT延長作用をサロゲートマーカーとして,薬剤の催不整脈リスク,特にTdPのリスクを評価することを意図している。
・QT延長は必ずしもTdPの原因にはならない。抗不整脈薬のアミオダロンは,IKr,ICa,INaの阻害作用を有するが,TdPの発生リスクは高くない。
・IKr(hERG)阻害は必ずしもQT延長を生じない。抗不整脈薬のベラパミルは,IKr,ICaを阻害するが,QT延長を生じない。
・Tdpの発生機序はIKrのみではない(例:IKsの阻害,INa増強)
・ICH S7B,E14はいずれも心室再分極過程,特に心電図QT間隔に及ぼす影響のみを対象としており,Na+チャネルやCa2+チャネル阻害作用の評価には注目していない。
・hERGチャネル抑制作用が必ずしもQT間隔延長作用に結びつかない例がある。この場合,hERGチャネルアッセイのみで開発候補化合物の取捨選択を行うと,優れた薬効を示す化合物の開発を断念する可能性がある。
・hERG チャネル抑制作用がないにもかかわらず,QT間隔延長作用が認められる例が見つかってきた。予期しないQT間隔延長作用を有するため,患者が危険にさらされてしまう。
引用
(1)ICHE14(日英)
(2)ICH S7B の将来展望—in vivo, in vitro and in silicoの観点から
(4)薬事日報:【製薬協】QT延長試験の廃止提言‐有望新薬の脱落に歯止め
(5)ICH Amsterdam 即時報告会2019(ICHE14)
(7)催不整脈リスク評価に関する ICH E14ガイドラインの将来展望


