吐き気と食欲と | いつか旅立つ日が来たとしても

いつか旅立つ日が来たとしても

ひとりと一匹と、その日々のこと。

おまえは、いっしょに住み始めた当初から、

よく吐いた。

そしてよく食べた。

 

最初は、心配で病院に相談したが、いつも

「食欲はありますか?」

と訊かれ

「吐いた後も、食べてます」

と答えると

「食欲があるなら大丈夫なので、なかったらつれてきてください」

と言われるだけだった。

 

一度、病院にも連れて行き、嫌がって逃げようとする

おまえから、なんとかして、血液検査をしたり

レントゲンを撮ったりしたが、

「便秘ですね」

というのが結論だった。

実際、トイレの前後に、おまえはよく吐いた。

 

そのうち、おまえが吐いた後、掃除をするのも

オレの日常になった。

掃除用のアルコールや除菌剤もずいぶん買った。

ただ、おまえの足に付着して、おまえがなめても

大丈夫なモノというと、買える種類は、ずいぶんと

限られていた。

 

いつも吐いたあと、おまえはいつも、残念そうな

すまなそうな顔をして、オレにメシをねだった。

吐いたぶんを取り返すようにおまえは食べた。

 

猫が胃に溜まった、毛玉を吐くということは知っていたし

逆に溜まらせると大変だとも知っていた。

おまえは抜け毛が多く、毛づくろいをする回数も

多いので、吐くことも多いのだろうと、オレも漫然と

そう思っていた。

 

 

 

こういった体勢では、吐いてくれるなよ

と思いながら。

 

最近になって、よく吐く猫用のフードが販売されていることを知った。

そういう猫がおまえ以外にも、たくさんいると改めて知ったが

もっと早く販売してほしかった。