都会で猫を飼うのなら、完全室内飼いとなるし、
完全室内飼いとなるのなら、多頭飼育を前提としないかぎり
去勢は必要なことだと理解はしていた。
もちろん、命や腫というものを、軽んじてるような、抵抗感は
あったけれども
でも、外に出れないまま、毎年、もんもんとして、暮らすことは
同じオスとして、ひどく不幸なことで、
それなら、いっそ、そんなことも知らないまま暮らしたほうが、
快適なのではないかと、感情的な理由もあり、
おまえを迎え入れると決めたときから、去勢手術は前提となっていた。
ごめんな。
当時は、理解した知識だけで、去勢は、猫とニンゲンが暮らすうえで、必要な儀式のようなものぐらいの認識しかなかったから。
最初に健康診断を受けたときから、去勢手術の時期については、
担当の獣医師さんと話し合っていて、何回か通ううちに、とうとう、
その日がやってきた。
前日からの絶食が必要だったので、その夜は、食べたがるおまえをなだめながら、過ごした。
おまえは、なぜ、訴えれば、いつもすぐに出てくるゴハンが今日に限って出てこないのか、ひどく不満げで、何度もオレに訴えた。
そのたび、おもちゃで遊んだり、なでて、なだめたりして、ごまかすしかなかった。
そんな夜を過ごし、そして、当日、朝の早い時間に、おまえを病院に預けた。