首輪 | いつか旅立つ日が来たとしても

いつか旅立つ日が来たとしても

ひとりと一匹と、その日々のこと。

これは、まだ震災前の話。

当時でも、オレが暮らしたどの地域よりも地震が多く、

周りでも、いつ大型地震が来るのか、時折話題にも

上がっていたので、オレとしても備えずにはいられなかった。

 

とくに、おまえのこと。

 

避難中の食料や、避難場所。

そもそも、避難場所に猫を連れ込めるのか

その場合、どうすれば、迷惑にならないのか

ケージに入れっぱなしだと、おまえの負担にならないか

 

だから、非常食の備えとは別に、首輪とリードを買った。

両方とも深い青色で、首輪は伸縮式の鈴がついたヤツだ。

 

さっそく首輪をおまえにつけてみた。

慣れてしまえば、これにリードをつけて

オレとむすべば、万が一のときも

はぐれてしまうことはないだろう。

 

非常食、病院の診察カード、当座のトイレシートは

いつでも、まとめて持ち出せるようにしておいた。

 

おまえは、最初は嫌がって、首輪をひっかいていた。

そのたびに、首輪がまわり、鈴がりんりんと鳴った。