結婚して11年、初めて夫婦で全話一緒にリアルタイムでドラマを見た。これはすごいことだ。これまでは「きのう何食べた?」(2019年)が二人とも見た唯一のドラマだったが、これは放送時間のせいで録画でそれぞれで見た。

※ネタバレあり。登場人物名も説明なしで出てきます。

 で、「VIVANT」終わってみた私の感想。「設定は面白いし、途中まで面白かったのに、途中からおかしくなった。もったいない」。
 最初はハードボイルドテイストで面白かったが、乃木(堺雅人)がアリ(山中崇)の家族を救ったり、ベキ(役所広司)が孤児院やってるところあたりからおかしくなってきた。ベキはテロ組織「テント」のリーダー、乃木も過酷な運命によって裏社会で生きることを選ばされ、およそ健全とは程遠いメンタルを備えているダークヒーローのはず(Fの存在がその証明)。山本(迫田孝也)やテントの幹部が制裁されたあたりまでは順当にハードボイルド路線で来たのに、まず乃木がアリの家族を殺していなかったところから「?」となった。でもまあ、無抵抗の女子供は別扱いっていうポリシーなのかな、とこれはそこまで気にならなかった。次にテントでコメをちょろまかしていた音尾さんの処罰は財産没収と国外退去。幹部は凄惨な制裁を受けていたのにこりゃどうしたことだ、と増す違和感。どういう世界観の作品なの? そもそもテロ活動を請負いながら孤児院運営でキャラクターが正当化されるってどんな世界? と疑問は増えるばかり。「一般の被害者は最低限に抑えている」って「そっかー! じゃあテントは義賊なんだね!」ってならねえって。途中急に「今回は凄惨なシーンがあります」みたいな注意が冒頭に出てめっちゃビビらされた。こんな注意が唐突に出るなんて、そもそもの物語背景が日曜劇場に合わないので、話が進むにつれ方向転換を強いられているのかと勘ぐり始める始末。
 そうはいっても最終回までみないと諸々わからないし、と夫婦そろって完走。ちなみに夫が経過において私のような疑問を呈することはない。「たかがテレビドラマ」と何も考えずに見る、が基本スタンスだ。その意味では「これなら見ていられる」とVIVANTは夫から一定の評価を受けたことになる。夫は普段和製ドラマはほぼ見ない。
 最終回によると幹部の凄惨な制裁は意味があって、本来テントはこうではないんです、音尾さんの処分が通常営業なんです、ということだった。でもひどい最終回だったな、私にとっては。失笑とぽかーんの連続。冒頭ベキが「お前たち(乃木と黒須・松坂桃李)は仲間を裏切らない」とかって評価して「一緒に頑張ろう」みたいになるところからめぱちくり。どんなリアリティ? とっちらかったのを何とか終わらせようとしょっぱなから強引な力業の一撃。ベキに「正論」を演説させてテント(ベキ)が肯定されるって、なかなかきわどいことするよな。それらしい大義名分を掲げてやってることを正当化するって、今も昔も過激派とかがやってることじゃないの? 
 ラストでは妻の復讐に橋爪功のところに部下二人連れて出かけていくも、乃木に制止・射殺されるの覚悟、というよりアテにして弾すら詰めてないって、この展開を納得して見ていられること自体が私には驚きだ。乃木が制止に来るとしても、ちゃんとしたタイミングで来てくれる保障なんてないしね。来るまでじっと待つのかな。おまけに乃木は銃撃の達人なので、致命傷を外して撃つことができる。これも設定としてどうなんだ。素直に受け入れられる人がすごい。フィクションだからいいじゃん、なら笑えるレベルの設定だ。遺体がある家は全焼したけど、ベキたちは生きてるかもね~って、もうぽかーん、て感じ。なんなん、これ? 生きてるのほぼマルダシだし。だとすると「親子の感動のラスト」はなんだったん? なかなかのトンデモクライマックス。このカオス、どうやって作品世界に入り込めばいいの? ニノに急に「お兄さん」とかいわれても、ハア、って感じだわ。
 伏線全部回収しますとかいって「F」「ジャミーン」の正体は明かされずじまい。そもそもそんな緻密なドラマじゃない。やりっぱなしの傾向が多分にある。それを全部承知の上で「伏線全部回収します」とかって、まあ、厚顔無恥だけど宣伝部隊って映画の配給会社然り、えてしてこうだよな。ちなみに映画の配給会社がよく使う手が「痛快、爽快アクション!」とかって実際見てみるとアクションはともかく内容がわりと重めっていう。確信犯よね、こういうの。作ってる人と宣伝してる人が別だから。
 結局のところ「予想外の展開」ありきで詰め込みすぎになってしまい、押せ押せでとっちらかったのを最終回相当なご都合主義と大慌ての力業(とってつけた愛と正義)で強引に話をまとめたように見える。リアリティなんてほぼそっちのけ。いくらフィクションだからって、あそこまでやられると荒唐無稽。そもそもの設定が面白いだけにもったいない。ああいうのを熱演できる堺雅人、役所広司ってほんとにプロだよな。役所広司なんてリアルに緻密に書かれた脚本をこれまでいくつも読んでるだろうから、「あ、この作品はそういう感じ」ってジャッジして演じるんだろうな。
 完璧な整合性とリアリティなんてそもそも求めてないし、最終回まで見た全体の面白さとツッコミ所を相殺してプラスになればいいし、と思って見ていたが、想像以上に突飛なエンディング。こういうの伏線回収っていうの? 最終回なんて大急ぎで話を終わらせなくちゃで口頭説明がびっしり。本来であれば間接的な台詞と演技で伝えるべき役の心情もほぼ全部直接口頭説明。これは白けるわ。ベキの過去(林遣都編)についてはすっきりまとまったドラマになっており、「説明台詞」ではなく林遣都の芝居で諸々が伝えられていた。ベキの過去編と最終回(ベキの最期)を比べたら、いかに最終回が”大慌て”かがわかる。
 魅力ある役者の熱演がてんこ盛りで、その点では見ごたえがあった。私としては繰り返しになるが、当初のハードボイルド路線を貫いて、ベキと乃木はダークサイドヒーロー、野崎(阿部寛)が陽のヒーローで、ドラム(富栄ドラム)が癒し系、という明確な図式を貫いてくれたら最初の設定が生きて確固とした物語世界と作品スタイルが確立されたはず、上等なエンタテイメントになったはず、と惜しくてならない。ただ薫先生はどう見ても乃木に恋しているように一貫してみえなかったので、これはテント側の人間だ、何か探りを入れているのだ、とニラんでいたらそういうことはなかった。二階堂ふみの芝居ってどうなん? そういう演出だったの? 
 福澤監督作品を見るのは私は初めてだ。福澤監督はドラマの前に「国外の視聴者を初めて意識して作った」と言っていたけど、正直この作品を海外のこのテのドラマ(アクション、スパイ系サスペンス)を見慣れている欧米人に見せたら終盤に向かうにつれて「?」になると思うんだけど。不思議な国ニッポンだよ。乃木は手で物の重さをほぼ正確に測れるという特技が物語のキモになっているとされていたが、致命傷外しの射撃の腕前のほうがよほど特記事項だ。ストーリーに対しても見てるほうのインパクトにしても、計測特技より影響力強いよ。その特技が物語を力業でまとめていくからね。
 結局のところ、福澤監督としては作っているうちにやりたいことがどんどん出てきて、諸々積み込んだはいいが、どんどん押していってしまった、というのが本当のところではないだろうか。福澤監督という作家はおそらく、作品っていう小世界を緻密に作り上げていくよりは、あのアイデアも、このアイデアもで湯水のように湧くアイデアマン。「こんな風にしたら盛り上がる、あんな風にしたら面白い」でぽいぽい放り込んでいったのはいいけれど、最終回にどっとしわ寄せが。大慌てで進行させるも、それでも回収しきれずオーバーフロー(Fとかジャミーンとか)。「ユージュアル・サスペクツ」とか「バック・トゥ・ザ・フューチャー」はラストに向かってピッチ配分含めて冒頭から脚本がきちんと練られているが、VIVANTはユルユル。とりあえずぶっこんでみた、みたいな小ネタがいっぱいある。シーズン2があったとして拾うか拾わないかはその時の諸事情次第ってところだろう。
 そんないい加減さは「F」をみるとわかる。当初は頭痛がして現れるような二重人格的扱いだったと思う。二重人格って過酷な幼児体験などのせいで起こる深刻な人格破綻だ。当初はそのような設定だったと思うが、終盤になると単なる一人対話みたいなライトなものに。いつFでいつ乃木なのかも回が進むにつれ不明瞭になっていった。
 「VIVANTは面白い」っていうのは個人の自由だけど、「VIVANTは緻密でよく練られた作品」っていうのは見当違い。スカスカで退屈な駄作ではなく、詰め込みすぎで荒唐無稽になった失敗作のケースだと思う。退屈はしなかったが、物語の世界に入り込んだり、登場人物に感情移入するのは難しかった。私にすれば、これで感動できるってすごいよ。面白がるところまでは理解できるが。

 作品のタイプは全然違うけど、昔「冬ソナ」が人気になった。どんだけいいドラマなのかと思って見てみたら、ヨン様が二度も交通事故にあって記憶が行ったり来たりと、なかなかツッコミどころの多いびっくりドラマだった。上の世代のおばさまと冬ソナの話になったとき、
「突飛なドラマですねえ。チェ・ジウの役の女はなかなかの性悪ですよ」
 というと、怪訝な顔をされて、
「ドラマだからそこまで深く考えて見てないわ」
 と言われた。何も考えず普通に見てて「突飛な内容だなあ」って思わない? っていうのが私の率直な感想なんだけど。あれで恋愛モノの世界に浸るのも難しい。SFかと思った、私。チェ・ジウの役の女は魔性の女で性悪系だよ。しかも自覚がないので余計に質悪い。友達だったら説教もんだ。

 ただ反響などを尺度にするなら「VIVANT」「冬ソナ」「私をスキーに連れてって」もみんな成功作だ。


 次の連ドラは10月6日から始まる「きのう何食べた?season2」。シーズン1は夫もそれなりにハマって見ていたが(VIVANTがないと同じくらいの熱量)、正月特番がいまいちだったせいなのか、映画(AmazonPrimeで見られた)もみていない。私は「season1」は好きなシーンだけ集めた「セルフエディション」を作ったくらい大好きなドラマだが、同じく正月特番と映画はいまいちハマれなかった。というわけで今回もそこまで期待してないが、どうだろう。どっちにしても深夜ドラマなので一緒に見ることはない。

 

※↓私が「普通に」ハマったドラマ。特に第7話が私的傑作。

 

 

 

 

 

※以下の二つはそこまで面白くなかったです。