※ラストに関するネタバレあり。


 2019年ウディ・アレン監督作品。A Rainy Day in New Yorkね。カタカナで書くとイマイチわからん。レイニーデイって人名かと思うわな。「月の輝く夜に」(Moonstruck)みたいな邦題つけられなかったのか。なんかいい日本語タイトルないかなあ。

 

 つきあって半年に満たない大学生カップル。特に彼が彼女に夢中だ。二人はマンハッタンに泊まりでデートに来る。きっかけは大学で新聞を作る彼女(エル・ファニング)が有名監督にインタビューできるようになったこと。彼(ティモシー・シャラメ)はもともとマンハッタン育ち。ギャンブルで稼いだ軍資金をもとに、スノッブなデート計画を綿密に立てホテルもレストランも予約。「特別な週末」に興奮してマンハッタンに乗り込む。しかしインタビューで彼女は有名監督に予定外の歓迎を受け、スタッフ向けの試写に同席することに。デート計画はさっそく破綻し始める。折しも強い雨が降ってきて、彼はひとり傘を差しマンハッタンをさまようハメに陥る。

 

 変わらずのウディ節。洒落た語り口。80代でこんなラブコメの脚本を書くウディもすごいが、撮影監督がヴィットリオ・ストラーロ。「暗殺の森」「ラストタンゴ・イン・パリ」「地獄の黙示録」「ラストエンペラー」ですよ。こっちも80歳手前? 世の東西を問わず、凡庸な監督やカメラならもっと寄りの画でガチャガチャするが、敢えて暗めの引きの画が多い。あたしはこっちのほうが全然いい。舞台に合わせてジャズをメインにした音楽とあいまって諸々洒脱。ただファッションがなんかダサい。服でひと昔前の話なのかな? と思ったらスマホ持ってて現代だった。スノッブパーティーのドレスは素敵だったけど。
 「恋も人生もせいぜいこんなもんだよね。でも結局ひとは恋もしちゃうし生きていくんだけど」って、毎度おなじみウディ・アレン印のシニカルなハンコをでっかく押したような結末。このブログではこのところ「月の輝く夜に」とか「危険な関係」とか良くも悪くも劇的に人生を左右する運命の恋、いわば恋愛がらみの「事件」を扱った作品を取り上げてきたけど、そういうのとは対極の恋っての? 日常感、安売り感のあるやつ。それも恋のうちだ。これで作品仕上げるほうが難しい。結局ティモシーの「自分探し」の話だった気もする。ティモシーとセレーナ・ゴメスのラストは取ってつけた感がスゴかった。ウディにとってあそこはなくてもよかったんだろうという気がしてならない。ウディは二人が別れるところで終えた脚本を書いたけどプロデューサーが、
「いい脚本だよ。すごく面白い。でもロマンチックコメディでこのラストはいただけないよ。観客はいい気分で劇場を出ないと。いい口コミも期待できない。ティモシーとエルが無理なら、セレーナとティモシーをハッピーエンドにしよう」
 とかってありそうでない? チッ、相変わらずだな、ってウディが舌打ちしながら妥協するような。ウディ・アレンといえば「アニー・ホール」。あれも別れて終わりだけど、作品としてはきれいに仕上がっている。ああいうのを目指していた気がするんだけど。少なくともティモシーがエルに冷めてセレーナに心変わりする過程をを描いた作品ではない。ありきたりなカップルの関係が破綻する道筋を描くのがテーマのコメディだ。

 主演のエル・ファニングが魅力を発揮。活き活きした芝居で話が進むほどにかわいらしさが増す。

 なおこの映画は本国アメリカでは上映されていないそうで、その辺のいきさつについて関心のある方はネットで調べてみてください。

※映画の中で「ノーマ・デズモンドになりきる」という台詞がありますが、この映画の主人公のことです。