2023年。松永大司監督・脚本作品。編集者で執筆家の高山真氏の自伝小説を映画化。
 ゲイでオネエの浩輔(鈴木亮平)は子供のころイジメられていたことから故郷の田舎を憎むほどになっていたが、14歳で亡くした母親の命日には毎年帰省していた。18歳で東京に出て、ファッション誌の編集者として成功。都内の高級マンションに住み、二丁目でゲイ仲間と楽しく毎日を過ごしていた。そんな中パーソナルトレーナーとして同じくゲイで年若い龍太(宮沢氷魚)を紹介される。龍太も14歳の時母親(阿川佐和子)が病気になり、高校も中退して家計を支えるために働いていた。いわゆるヤングケアラーだ。二人は恋愛関係に陥るが、龍太は生活のために”売り”を長いこと続けていた。浩輔に本気になった龍太はそんな自分がつらくなり、別れを切り出す。それに対し浩輔は月20万で自分の専属になってほしい、それでも足りない分は別のバイトで補ってもらえないかと提案。龍太は受け入れ、バイトも複数こなして過酷な就労時間をこなすことになる。それでも二人は幸せな時を過ごし、浩輔もサポートを続けていくが、龍太は突然死する。おそらく過労死だ。浩輔は亡くなった龍太に代わって、金銭面も含めて母親の面倒を見る決意をする。浩輔は自分の提案が龍太を死に追いやったという考えから逃げられない。
 私は女装家(ドラァグクイーン)の番組等を見るのが昔から好きで、最近は特に金融系女装の肉乃小路ニクヨさんの金融ネタ動画はよく見ている。この映画についてもミッツさんがMX「5時に夢中」で「高山さんとも個人的に親交がありましたけど、鈴木亮平っていうのが納得いかない」と言っていた。おそらく「ああいう容姿のひとではない」という意図かと思われる。この映画にも出ているドラァグクイーンのドリアンさんも下記動画で語っていたが、鈴木亮平氏は高山真氏(浩輔)を演じるに際し、いわゆる「ベタ」なオネエを演じること、ゲイに対する偏見を助長させるような芝居をすることに抵抗があったそうだ。実際「やりすぎ」という観客の声もあったが、「本物の高山さんがそういう人だったから仕方がない。あのひとは完璧な昭和のババア、典型的なオカマ。鈴木さんはどちらかといえば抑え気味に演じていた」と言っていた。
 実際みてみると、鈴木亮平の”オネエ”はかなり薄味だった。「きのう何食べた」のケンジ(内野聖陽)のほうがはるかにわかりやすくオネエだ。「エゴイスト」に出てくる二丁目仲間はドリアンさんを始め「本物」だが、本物のほうがわかりやすく”オネエ”だった。鈴木氏は「昭和のババア」「完璧なオネエ」というほどではなかった。代わりにというか、ベッドシーンは予想以上に濃厚で長かった。龍太が客を取るシーンも複数あって描写も生々しい。
 公開時からあらすじを読んでいて「辛気臭そうだなあ」とみる気がなかったが、鈴木亮平氏のこの作品での演技が海外で評価されたりで、鈴木氏の「昭和のババア」ぶりみたさに見ることにした。結果その点では拍子抜けしたが。作風は手持ちカメラを多用してドキュメンタリー風。あらすじから予想される辛気臭さ、湿っぽさはかなり薄かった。二時間と決して短くはないが、長さも感じなかった。終わり方もしゃれているというか、意外なところでスパっと切れる。タイトル「エゴイスト」も「そういう意味だったのか」と、ちょっとした驚きはあった。面白いか面白くないかの二択なら「面白い」と思うが、内容が内容なので見る人は選ぶと思う。
 U-NEXTでお試し期間中に見た。見放題ではなくレンタル、ただしポイント利用で追加料金なし。U-NEXTで残念なのが、日本語の作品に字幕のオプションがないことだ。普段テレビで日本のドラマ、映画を見るときでも、私は字幕をつけてみるのが好きだ。特にこの映画はさらっと聞いていると何を言っているかわからない箇所が多々あってフラストレーションがたまった。ちなみにTVerは字幕がつく。ただU-NEXTは早送りや巻き戻しをするとき画面がコマ送りのようになって、止めたいところで止めるのがやりやすい。
 蛇足になるが、ドリアンさんが映画の中でヒョウ柄のコートを着ている。ドラマ「きのう何食べた」でケンジもジルベールもヒョウ柄を着ていた。ゲイ界ではヒョウ柄って定番なんだな。高山氏はフィギュアスケートについても造詣が深く、羽生結弦氏について書いた本が評価を得てフィギュアファンの間で読まれているようだ<「羽生結弦は助走をしない」(集英社新書)>。高山氏は正式に素性を公開していないようだが、1970年生まれとの話もある。だとしたら私と同い年。「昭和のババア」仲間だ。高山氏も2020年に病死されている。偶然といっていいのか、高山氏も鈴木亮平氏も東京外国語大学卒だ。学科はフランス語と英語で違うみたい。鈴木亮平氏のほうが一回り近く年下になる。

★今月の出来事★
11/17 羽生結弦氏(28)が離婚。8/4の入籍から105日目での発表。


※話は同じですが、映画が恋愛映画の要素が強いのに対し、原作は母と息子間にある愛情のほうがテーマです。

 

 

※この作品に出演していて、自身も相当な映画通であるドリアンさんがこの映画について語っています。この中で話題になっていた最近の映画の説明過多とBGM演出の使用過多については深く同意します。私は特に音楽演出(誘導)過多にげんなりしています。


※女装界の有名人(?)が一堂に会し学歴について語るこの動画は面白いです。ドリアンさんも出ています。

 

※上の動画の続きでメイリーさんがドリアンさんにケンカを売った「直接対決」の下記動画も見ごたえありました。女装界の価値観、歴史?等いろいろわかります。