1968年制作。全八作作られる「緋牡丹博徒」シリーズの第一作。

 

 明治中頃。熊本は人吉でヤクザの親分のひとり娘でありながら、堅気に嫁いでも恥ずかしくないお嬢様として育てられた竜子(藤純子。今は寺島しのぶ母の富司純子)。しかし玉の輿に乗る寸前、父親が辻斬りに遭い死去。縁談も破談になり、組は実質離散。竜子は非業に斃れた父のそばに落ちていた財布を手掛かりに、全国の賭場を回りながら父親の仇を探していた。ある賭場ではイカサマを見抜き、それがきっかけで富士松というヤクザと知り合う。富士松と別れると、竜子が暴露したイカサマで指を詰めることになったヤクザに襲われるが高倉健に助けられる。もちろんヤクザの健さん。財布の主を知っているようだが教えてくれない。富士松の親分熊虎(若山富三郎)のところに竜子の父親の元子分・河豚新(ふぐしん)が世話になっていると聞き、会いに行く。熊虎の縁で大阪の女侠客(清川虹子)を知り、虹子を頼って河豚新、富士松ともども大阪に行くと、千成組の加倉井が富士松の恋人である芸者を金にものを言わせて身受けしていた。加倉井は健さんの弟分であり、お竜が探し求めていた父親の仇だった。

 

 結論からいうと話そのものはさほど面白くない。水戸黄門並みの筋書き。今はあまり放送されない昔のヒットものだと、「網走番外地」「トラック野郎」のほうが面白かった。ただ最初から一種の水戸黄門だと思って見れば、藤純子や高倉健の佇まいだけで楽しめるというのはある。特に藤純子の着物の所作含めた美しさは際立っている。顔ももちろん美人だが、ある程度引きでみた姿全体の凛々しい美しさに目を奪われる。作中若山富三郎が「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」を言うが、この慣用句を具現化したのが彼女だとしみじみ納得した。この表現って、やっぱり顔、スタイル、所作を総合した和装美人に対して使うものなのがよくわかる。

 富司純子といえば。1970年生まれの私からすると子供のころは「3時のあなた」の司会だ。当時は寺島純子。「不幸のズンドコ」発言が有名だ。そんな上品な(って、つながらないか)梨園の奥様で元女優いうのが私にとって彼女の長年のイメージで、芝居をしているところを見た記憶がなかった。私が30代頃になるとリメイク版の「犬神家の一族」とか「フラガール」で緊張感ある佇まいの芝居をしていて、いい女優さんなのを遅まきながら知った。その富司純子(藤純子)の代表作といえばこの緋牡丹のお竜。「キル・ビル」にその趣味が反映されているようにタランティーノがファンだというのは以前から聞いていたが、50歳になるこの年に初めて見た。主演女優の魅力には十分だが、主題歌は止めたほうがよかった。あとサイコロで片肌脱いで「どちらさんもよござんすね、入ります!」っていうのを藤純子がやるのかと楽しみに待っていたら、この作品でそのシーンはなかった。
 ヤクザ映画に疎いあたしがこの映画をみて面白かったのは、「男はつらいよ」寅さんが自分のことを「渡世人」といって仁義を切ったりしてたのはこういう世界の礼儀だったのかと。「生まれは葛飾柴又、帝釈天で産湯をつかり、姓は車、名は寅次郎。人呼んで、フーテンの寅と発します」ってやつ。だとすると寅さん、マジでヤクザ。

「ご当家の親分さん、お姐さん。陰ながらお許しこうむります。向かいます上様とは、今日向(きょうこう)初の御意得ます。従いまして拙(せつ)ことは熊本は五木の生まれ、姓名の儀は矢野竜子。通り名を緋牡丹のお竜と発します。ご視見の通り、しがなきものにござんす。行く末お見知りおかれまして、よろしくお引き立てのほど、お願い申し上げます」

 そんなこんなで、最近は耳慣れない単語も多く、字幕付きでみるのもかなりお薦めだ。あたしはそもそそも字幕付きで見るのが好きなんだけど。ちなみに最初の賭場のシーンで出てくるのは「手本引き」というギャンブルみたい。花札とはちょっと違うようだ。「兄弟盃」の正式?なシーンも初めて見た。ここでは「四分六の兄弟」で、若山富三郎が六で兄貴分。四分が「弟分」である藤純子。二人だけではなく子分や仲人的親分衆も同席して、三々九度的結婚式並みだ。
 他にも私が初めて聞いた言葉。

代貸・・・賭場で貸元(親分)の代わりを務める人物。いわゆる若頭。この格付けの一番下が三下。

草鞋を脱ぐ・・・ここでは各地を転々とする博打うちが、ある土地で一時期腰を落ち着けること。

金筋・・・筋金入りの極道
とつけむにゃあ・・・熊本の方言で「とんでもない」。

 ラストは竜子の二代目襲名で終わるが、垂れ幕みたいのに「龍子」って書いてある。ネットでみるとみんな「お竜」なんだけど。話は変わるが、私は米津玄師の「フラミンゴ」が大好きなんだけど、歌詞にある「あの子を見受けておくんなまし」は内容からして「身受けて」の間違いだと思うんだけど。ちなみにこの映画での身受け金は「400円という大金」だ。

※ちなみにこの映画の脚本は「トラック野郎」の監督の鈴木則文氏。

 

※私の好きなヤクザ映画「極道の妻たち」第一作目。

 

※外国もので何度もみるヤクザ映画といえば↓

 

※言わずと知れたタランティーノの傑作。これもヤクザ映画の一種。自粛中も繰り返し見てました。